【連載小説】パンと林檎とミルクティー
10 土曜日午後7時
世界の常識が変わったから、たいていのお店は午後8時に閉店となる。
夜、出歩くのが好きな真智子にとっては、少しだけ不自由さを感じる。
夜に部屋で読む本を買って帰ろう。
真智子は、駅前のビルに入っている書店へ入った。
どこにどんな本があるか、もうわかっている。
雑誌から文庫から、コミックから、スピ系から、ビジネス系から。
独自のルートで店の中をまわっていく。
古代史の本でも見つけたら、買おうかなと思っていた。
20年くらい前に、邪馬台国のテレビを観て興味を持った。その時は、テレビを観るだけで終わってしまったのを思い出して、何か読んでみようと思いついた。
古代史のコーナーには、熱心に読んでいる人がいて、真智子の目当ての本を手に取ることができない。
心に引っかかる本が、ない。
仕方ないな、と、真智子は本屋を出た。
目についたのは、チェーン店の古書店。
ふと、行ってみようと思って歩き始める。
店内には、数人の客が立ち読みしていた。
目的の単行本のコーナーへ。
なにかないかな、と、思いつつ、振り返る。
そこの本棚には、あった。
『邪馬台国は』
これだ。
邪馬台国。
卑弥呼。
字面だけで、ロマン。
そして、現代でもわからないことばかりの不思議。
真智子は、いちばん始めに目にした一冊を本棚から取り出して、買う。
家までの帰り道の途中、缶コーヒーも買った。
好きなことを学びなおすもあり。
それを活かして小説書けるな、と、真智子はひとりにやにやしながら帰宅した。
つづく
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