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6月は「毎日チョウゲンボウ」6/12更新分

※「毎日チョウゲンボウ」は1990年に平凡社より刊行された「チョウゲンボウ(Kestrel)優しき猛禽」をWeb用に再編集したものです。

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▲足でしっかりと獲物を押さえつけ、するどくカーブしたくちばしでひきさく

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▲獲物が鳥の場合はまず羽毛や翼をくいちぎる

放棄した巣

求愛給餌や交尾の撮影に成功した私は、翌1983年の年明けとともに、いよいよその他の生活史の撮影にとりかかることにした。

今年もとりたてて崖のチョウゲンボウに変化はなく、1月なのに暖かい日が続き、いつものように雄と雌で鳴きかわしたり、巣穴の様子をうかがったりと、迫り来る繁殖の準備を着実に進めていた。

そんな彼らの様子を遠くからそっと見つめながらも、私は彼らよりも、巣穴の目の前の河原に時々訪れる測量技士らしい人影が気になって仕方なかった。

このまわりのたんなる調査のようなものだろうか。それとも――。

遠くからでもいやがうえに目立つ彼らの黄色いヘルメットは、私の不安をよりつのらせ、ある日、私はいつものようにジープで河原にやってきた人たちに思い切って尋ねてみた。「失礼ですが、何か工事をなさるのですか」

(明日へつづきます)

著者紹介:平野 伸明(ひらの・のぶあき)

映像作家。1959年東京生まれ。幼い頃から自然に親しみ、やがて動物カメラマンを志す。23才で動物雑誌「アニマ」で写真家としてデビュー。その後、アフリカやロシア、東南アジアなど世界各地を巡る。38才の頃、動画の撮影を始め、自然映像制作プロダクション「つばめプロ」を主宰。テレビの自然番組や官公庁の自然関係の展示映像などを手がける。

主な著書に「小鳥のくる水場」「優しき猛禽 チョウゲンボウ」(平凡社)、「野鳥記」「手おけのふくろう」「スズメのくらし」(福音館書店)、「身近な鳥の図鑑」(ポプラ社)他。映像ではNHK「ダーウィンが来た!」「ワイルドライフ」「さわやか自然百景」や、環境省森吉山野生鳥獣センター、群馬県ぐんま昆虫の森、秋田県大潟村博物館など各館展示映像、他多数。
→これまでつばめプロが携わった作品についてはこちらをどうぞ。

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