となりのアライグマ その1「日本にアライグマがいるってホント?」
古谷益朗さんによる新コーナー、「となりのアライグマ」が始まります!
古谷さんは、アライグマやハクビシンなど、人に影響を与える動物を対象に研究をされている獣害対策の専門家です。
野生動物の生態はいまだに謎だらけ!専門家による解説と、写真や時には動画も交えながら、アライグマの「ホント」にせまります。
古谷益朗(ふるや・ますお)
埼玉県出身。子供の頃から、雑木林と草原、田畑などに囲まれた自然豊かな環境で昆虫や野鳥など様々な生物と触れ合いながら過ごす。型にはまった勉強は大嫌いだったが、自然のことについては人一倍学ぶ。埼玉県こども動物自然公園や埼玉県農業技術研究センターで生きものに関わる仕事に携わり、現在は野生生物研究所「ネイチャーステーション」代表として活動。専門は動物行動学。研究センターでは野生動物の行動に基づく被害対策の研究を行う。人の生活に影響を与えるすべての野生動物が対象。
主な著書等は、「ハクビシン、アライグマ~おもしろ生態とかしこい防ぎ方」(農村文化協会)、「野生動物被害対策マニュアル(共著)」(農林水産省)、「DVD地域で止める獣害対策シリーズ(撮影協力)」(農村文化協会)、他。
主なTV出演は、クローズアップ現代+ 「アーバンイノシシ」、噂の東京マガジン「空き家に暮らすアライグマ」・「都会に暮らすハクビシン追跡調査」、相葉マナブ「小麦でパンを焼こう~小麦畑に柵を作る~」など
アライグマってなんだろう
「アライグマを知っていますか?」と聞かれれば、「知ってるー!」という方は多いと思います。「しっぽがシマシマのかわいい動物」というイメージを持たれている方も多いでしょう。
でも、アライグマが実際にどんな場所に住み、どんなものを食べて、どんなふうに子育てをしているのかと聞かれたら?
さらに、そのアライグマが日本で野生化している・・・となると、TVのニュースで耳にしたことがあるだけで、あまりピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
▲庭先で出会った 日本で野生化したアライグマ
そもそも、なんで日本にアライグマが?
アライグマ(アライグマ科)は、北アメリカが原産の中型動物です。
日本には動物園に展示するためや、愛玩動物として輸入されました。また、1977年に放送されたテレビアニメの人気も手伝って、多くの個体が輸入されました(ペットとしての飼育は現在は禁止されています)。
もともと日本にはいなかったアライグマですが、1960年代に野外での生息が確認され、さらに1977年には繁殖が確認されています。
一体なぜ、アライグマは日本の野外で繁殖するようになったのでしょう?
アライグマの性質
私は、学術研究として飼育許可を取得し、アライグマを実際に飼育してみることにしました。すると、アライグマの性格は非常に荒く、アニメのようなかわいい動物ではないことがわかったのです。
▲まだ幼く かわいいアライグマ しかし・・・
とくにメスは半年くらいで急変して凶暴になり、手に負えなくなります。かわいいのはたった半年です。成長すると飼い主の言うことも聞かなくなり、気に入らないといきなり噛むようになります。
きっと当時、アライグマを飼育した人は同じ目にあったのだと思います。こうして、手に負えなくなったアライグマは、無責任な飼い主によって、ほとんどの個体が日本の自然環境下に放たれてしまいました。日本におけるアライグマの野生化は、ここから始まったのです。
▲側溝を通り道にしている 大人のアライグマ
現在では、アライグマは日本の野生に悪影響を及ぼす動物として、外来生物法(※)により、特定外来生物に指定されています。
※外来生物法……正式名称は「特定外来生物による生態系等に係わる被害の防止に関する法律(環境省2005)
日本の野に放たれたアライグマは、実際にはどんな影響を及ぼしているのか、どうして繁殖ができるのか、どういう風に生活をしているのか・・・。本当の姿は意外と知られていないアライグマ。「となりのアライグマ」のコーナーでは、私が今まで研究し、わかったことをお伝えしていきます。(文・写真・古谷益朗)
ここから先は
ネイチャーフィールドnote
自然・鳥・動物に特化した映像制作会社「つばめプロ」が、写真、動画、音声などを交えて、自然にまつわる記事を発信していきます。
頂いたサポートは、noteの運営費や、記事に協力して下さったクリエイターの支援に当てさせていただきます。「スキ」やコメントを頂くだけでも、十分励みになります!(つばめプロ)