見出し画像

6月は「毎日チョウゲンボウ」6/28更新分

※「毎日チョウゲンボウ」は1990年に平凡社より刊行された「チョウゲンボウ(Kestrel)優しき猛禽」をWeb用に再編集したものです。

前回はこちら

さわやかな夏の風が川面を走り、崖全体が不思議な静けさに包まれている。あの若鳥たちも来年になれば立派に成長して、またこの千曲川の崖に帰ってくるのかもしれない。その時は親鳥に負けじとなわばり争いを繰り広げることだろう。

がんばれよ……。すっかりおい茂った崖の木々の葉が千曲川の風にそよいで、葉裏の銀色を光らせている。

私はこの10年間、いったい何をしてきたのだろう。10年……。その歳月の長さと短さに思わず茫然としてしまう。

ただ、私の心の中にはいつも1羽の鳥がいた。そして、若さだけを頼りにして、彼らをひたすら追い続けていた。それだけだ。

ふと気がつくと、崖上のいつものとまり場の枝に1羽の雄のチョウゲンボウがとまっていた。しばらく私は彼を見つめていたが、やがて彼は飛び立ち、上昇気流に乗ってぐんぐん舞い上がった。

そして雲が湧き、それが流れて彼は消えた。この時、はじめて彼が空のかなたから私を見つめ返してくれた気がして、私はいつまでもそこに立ちつくしたのである。

画像1

▲秋、淡い夕陽を浴びて雌がいつまでも人里を見降ろしていた

画像2

▲ねぐらに帰る雄と雌(左上)。1年を通じて雄と雌のきずなは強い

↓続きはこちら↓


著者紹介:平野 伸明(ひらの・のぶあき)

映像作家。1959年東京生まれ。幼い頃から自然に親しみ、やがて動物カメラマンを志す。23才で動物雑誌「アニマ」で写真家としてデビュー。その後、アフリカやロシア、東南アジアなど世界各地を巡る。38才の頃、動画の撮影を始め、自然映像制作プロダクション「つばめプロ」を主宰。テレビの自然番組や官公庁の自然関係の展示映像などを手がける。

主な著書に「小鳥のくる水場」「優しき猛禽 チョウゲンボウ」(平凡社)、「野鳥記」「手おけのふくろう」「スズメのくらし」(福音館書店)、「身近な鳥の図鑑」(ポプラ社)他。映像ではNHK「ダーウィンが来た!」「ワイルドライフ」「さわやか自然百景」や、環境省森吉山野生鳥獣センター、群馬県ぐんま昆虫の森、秋田県大潟村博物館など各館展示映像、他多数。
→これまでつばめプロが携わった作品についてはこちらをどうぞ。

ここから先は

0字
月300円で過去の記事もすべて閲覧することができます。無料記事も多数!

自然・鳥・動物に特化した映像制作会社「つばめプロ」が、写真、動画、音声などを交えて、自然にまつわる記事を発信していきます。

頂いたサポートは、noteの運営費や、記事に協力して下さったクリエイターの支援に当てさせていただきます。「スキ」やコメントを頂くだけでも、十分励みになります!(つばめプロ)