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6月は「毎日チョウゲンボウ」6/27更新分

※「毎日チョウゲンボウ」は1990年に平凡社より刊行された「チョウゲンボウ(Kestrel)優しき猛禽」をWeb用に再編集したものです。

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▲▼獲物の奪い合いをする若鳥たち。せっかく獲物をもらっても、もたもたしていると兄弟に奪いとられてしまう

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千曲川の風

チョウゲンボウを追い始めて、いつの間にか10年が過ぎようとしていた。
半年間のテント生活のあと、翌年もまたその翌年も引き続き、佐久のチョウゲンボウを見ていたが、もうがむしゃらにシャッターを押すようなことはなくなった。

彼らの生活を静かに見つめながら、一歩一歩確かめるように作品を編んでいった。私と彼らの長かったつき合いもそろそろ終わりに近づこうとしている。

私はまた河原にテントを張った。チョウゲンボウはいつものように、雄と雌が力を合わせて雛を育てていた。崖の2つの巣穴からは可愛い雛たちが、くりくりしたつぶらな瞳を瞠いて(みひらいて)親の帰りを待っていた。
このように彼らは長い年月をへて自らの生き方を確立し、黙々と、そして力強く毎日を生きてゆくのだろう。

7月の半ば、あれほどににぎやかだった2つの巣穴も、雛がみな巣立ち、今はもう入り口の白いフンの汚れだけが名残りを示すくらいになった。

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著者紹介:平野 伸明(ひらの・のぶあき)

映像作家。1959年東京生まれ。幼い頃から自然に親しみ、やがて動物カメラマンを志す。23才で動物雑誌「アニマ」で写真家としてデビュー。その後、アフリカやロシア、東南アジアなど世界各地を巡る。38才の頃、動画の撮影を始め、自然映像制作プロダクション「つばめプロ」を主宰。テレビの自然番組や官公庁の自然関係の展示映像などを手がける。

主な著書に「小鳥のくる水場」「優しき猛禽 チョウゲンボウ」(平凡社)、「野鳥記」「手おけのふくろう」「スズメのくらし」(福音館書店)、「身近な鳥の図鑑」(ポプラ社)他。映像ではNHK「ダーウィンが来た!」「ワイルドライフ」「さわやか自然百景」や、環境省森吉山野生鳥獣センター、群馬県ぐんま昆虫の森、秋田県大潟村博物館など各館展示映像、他多数。
→これまでつばめプロが携わった作品についてはこちらをどうぞ。

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