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野鳥写真集「小鳥のくる水場~ぞうき林の小さなオアシス~」第4回 #全文公開チャレンジ

武蔵野のぞうき林での小さな水場――人にとってはなんでもない水たまり。でもそこは、野鳥たちにとっての小さなオアシスでした……。
前回は、ぎにわう子育ての夏から秋の始まりを紹介しました。さらに深まる秋。第4回目は、水場の1日の様子をお届けします。お楽しみください。

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「小鳥のくる水場 ぞうき林の小さなオアシス」

1984年発行
著・平野伸明

過去の回はこちら⇒第1回第2回第3回

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11月下旬、水場の観察を再開しました。

ぼくの水場観察ノート

12月4日 快晴 風ややあり

午前7:30 ブラインド(※)に入る
 朝日が林の奥まで入ってきて、とても明るい。でも、12月にはいると、さすがにひえる。早く鳥たちが来てくれないかな。

※ブラインド……鳥に警戒されないよう身を隠す場所のこと。一人用の簡易テントや布と柱などで作る。

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午前8:10 ツグミ2羽
 ツグミが来た!きょうのいちばんのり。水あびをする。水しぶきが金色に光ってとてもきれいだ…。

午前8:21 カシラダカ30羽前後
 水場の上の木から、パラパラと落ちるようにやってきた。いっせいに水をのむ。
午前8:45 ツグミ
午前8:58 シロハラ(メス)
 ツィーとひと声鳴いてやってきた。水あび。
午前9:03 モズ(メス)
 モズがとんできた!まわりの鳥たちは、いっせいにけいかい音をあげ、さわぎたてる。

けいかい音 シジュウカラ―「ツーツーピィー」
      ツグミ――――「ツィークワッカッカッ」
      コゲラ――――「ギィーギィー」
      オナガ――――「ギュイーキッキッキッ」

午前9:07 キジバト
 水のみだけする。ずいぶんけいかい心が強い。

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▲午前9:30 ヒヨドリ2羽
 ペアらしい。さかんに水しぶきをとばして水あびをする。気温がずいぶんあがってきた。

午前9:46 カワラヒワ30羽前後
 初夏には見られなかった鳥だ。たぶん、林のなかでえさをさがすグループだろう。水あびと水のみ。
午前9:59 ヒヨドリ

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▲午前10:07 ビンズイ4羽
 尾ばねを上下させながらやってきた。すぐに水あび。

午前10:16 キジバト
午前10:29 ジョウビタキ(オス)
 さかんに「ヒッカッカッ」と鳴く。とびかたが軽快。水あび。
午前10:38 カワラヒワ5羽前後

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▲午前10:51 メジロ2羽
 ペアかな。なかよくよりそって、水あびをはじめた。ヒヨドリたちにおどろかされる。かわいそう。

午前11:04 シロハラ、ヒヨドリ
 水場ではちあわせ。たがいにひくい姿勢でいかくしあうが、シロハラがとびさる。
午前11:10 シジュウカラ・ヒガラ・メジロのむれ15羽前後、カシラダカ
 シジュウカラとヒガラ、メジロがまざったむれ、かわりばんこに水場で水あびをする。

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▲午前11時10分 シジュウカラ

午前11:30 ツグミ3羽、ヒヨドリ
 ツグミが水浴中に、ヒヨドリが来て、ケンカになる。ヒヨドリとツグミの空中戦。ヒヨドリ強し!

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▲午前11時30分 ツグミ、ヒヨドリ(左はし)

午前11:50 オナガ10羽
 オナガの小さなむれ。つぎからつぎへとやってくる。ほかの鳥は、ちかくの枝でおあずけ。

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▲午前11時50分 オナガ

午後12:11 ヒヨドリ、ツグミ2羽、シジュウカラ
午後12:37 キジバト2羽
午後12:55 カケス
「ジャージャー」と鳴きながら水場に来た。水あび。豪快に水しぶきをとばす。つばさの青がとてもきれい!
午後1:15 シメ
 ツィーと鳴く。のどのエプロンが特徴的。くちばしで水をすくって、上をむいてのどに流しこむ。うまいのみかた!
午後1:32 カシラダカ30羽前後
午後1:44 カワラヒワ10羽前後
午後1:49 スズメ2羽
 ペアらしい。なかよく水あびをする。カワラヒワにいかくされるが、ゆずらない。スズメもなかなか強い。
午後2:12 キジバト3羽
午後2:19 オナガ10羽
 
さきほどのむれだ。オナガのむれには、リーダーがいるらしい。まず1羽か2羽さきに来て、「ギュイー」と鳴くと、あとのものがやってくる。安全を確認するのだろう。
午後2:35 ヒヨドリ4羽
 はげしい争いもなく、静かに水あび。
午後2:41 キジバト
 ばたばたととんでくる。水あびしていた4羽のヒヨドリ、おどろいてとびたつ。キジバトゆっくりと水をのむ。

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▲午後2時41分 ヒヨドリ(手前)、キジバト(右おく)

午後2:55 シメ2羽
午後3:05 ヒヨドリ8羽
 水場をめぐって、はげしいおいかけあいがはじまる。夕がたになって、鳥がふえてきた。
午後3:20 ツグミ8羽、ヒヨドリ、キジバト
 日がしずみはじめた。鳥たちも、ねぐらにつくまえに、水あびにやってくるのだろう。水場は、夕がたのラッシュアワー。なかには、水場の落ち葉をどかして、水あびをする頭のいいツグミもいる。

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▲午後3時20分 ツグミ(手前)、ヒヨドリ(中)、キジバト(おく)

午後3:46 ツグミ2羽、シロハラ、カシラダカ5羽
午後4:01 ツグミ
 日はすっかり林のむこうにしずんだ。いま水あびしているツグミが最後。ひえこんできた。本日も、鳥たち、たくさん来てくれました。ごくろうさま!

水場でのあらそいについて

 鳥たちも気の強い鳥、おとなしい鳥など性格はさまざま。なかでもヒヨドリ、ツグミ、シロハラ、オナガ、シメなどは、けんかっ早い。からだの小さいメジロやヒガラは、大きい鳥におわれているが、うまくスキをついて、水をのむ。カケスはオナガより強いが、オナガのむれにはかなわない。

ちなみに、ぼくの作った「水場の番付表」は強い順に、ツミ――カケス――オナガ・キジバト――ヒヨドリ――シロハラ――ツグミ――シメ――ビンズイ・カワラヒワ・スズメ――シジュウカラ――メジロ・ヒガラ。

みんなのにわや水場では、どうですか?

(次回へつづきます)

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水場の一日。フィールドノート風にお届けしました。秋も深まり、やがて寒さ厳しい冬がおとずれます。

続きはこちら↓

著者紹介:平野 伸明(ひらの・のぶあき)

映像作家。1959年東京生まれ。幼い頃から自然に親しみ、やがて動物カメラマンを志す。23才で動物雑誌「アニマ」で写真家としてデビュー。その後、アフリカやロシア、東南アジアなど世界各地を巡る。38才の頃、動画の撮影を始め、自然映像制作プロダクション「つばめプロ」を主宰。テレビの自然番組や官公庁の自然関係の展示映像などを手がける。

主な著書に「小鳥のくる水場」「優しき猛禽 チョウゲンボウ」(平凡社)、「野鳥記」「手おけのふくろう」「スズメのくらし」(福音館書店)、「身近な鳥の図鑑」(ポプラ社)他。映像ではNHK「ダーウィンが来た!」「ワイルドライフ」「さわやか自然百景」や、環境省森吉山野生鳥獣センター、群馬県ぐんま昆虫の森、秋田県大潟村博物館など各館展示映像、他多数。
これまでつばめプロが携わった作品についてはこちらをどうぞ。


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