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「結婚」にもやもやしているあなたへ 〜”わたし”をめぐる物語の話〜

こんにちは、『源氏物語』おたく(*0)の海石榴(つばき)です。
産経新聞さんの記事(*1)を読んでいたら、こんな声が紹介されていました。

「結婚は登山と同じ。絶景が待つと思わなければ登らない、でも、既婚者を見ると絶景が想像できません。」

マーケティングライターの牛窪恵さんが紹介する未婚女性の声

今日のテーマは、ずばり「結婚のススメ」です。

”山”が見えたらいつの間にか登っているはず

「若いひとたちのために、結婚後に見える美しい景色を語らなくては」という使命感で筆を取りましたが、わたしはまだ未婚の方に憧れてもらえるような絶景を見たことがありません。ひょっとしたら、目の前の雑然とした光景———子どもたちがニコニコしながら見せてくれるお絵かきやプリント、山盛りの唐揚げ、真っ黒な洗濯物の山———があとから思い返してみるとキラキラとした絶景として甦るのかもしれません。・・・これではいつもの既婚者の自虐になってしまうでしょうか。

確かなことは賭けてみないとわからない

「結婚相手を選び、また、相手にも自分を選んでもらう」ことは、投資に似ています。言い換えれば、”仕事や趣味に忙しい(*2)から、結婚したいとは思わない”人は、投資に失敗した時のことを心配するがあまり、一生懸命貯金している人に似ています。貯金し続ける選択だって、投資よりももっと手酷い失敗に終わる可能性がある。金融機関にお勤めの方なら、わたしよりもっとわかりやすく説明してくれるでしょう。

濃密な人間関係がある職場は珍しい昨今、耳の痛いことを言ってくれる人はあなたにとってとても貴重です。株式持ち合いの同士として、"市場評価額が上がるように監査もし、経営にあれこれ口を出す関係性”は、結婚以外になかなか手に入るものではありません。

「あなた、ちょっとお腹が出てきたわよ」
「お前、その服はちょっと若造りしすぎじゃないか」。

世間というものは、さまざまな正義の集合体です。「いいじゃない、わたしはわたしの好きな服を着るの!」と言い返せる誰かがいることは、自分も”社会の中のひとり”である証。若いうちはこうしたやり取りに嫌悪感を感じるかもしれませんが、これも”わたし”の輪郭を確かめる上で必要なことなのでしょう

"わたし"の可塑性は"わたしたち"の希望

もちろん、 ”自分の人生と誰かの人生を交わらせる投資契約”は、当初の目論見通りにいくものではありません。けれども、自分が少しづつ変化していくことで、”あなた"のものが、いつしか”わたしたち"のものになっていた時の衝撃はぜひ味わってみる価値があります

それは、少し長い週末を過ごす気分で都内で迎えたある年のお正月のことでした。暮れに北陸のアンテナショップで買い求めた材料で、”いつも”のお雑煮を再現したはずなのに、お義母さんのそれと全く違うものだった時の雷に打たれたような感覚を、わたしは生涯忘れることができないでしょう。床の間ほどもある煌びやかな本家の仏壇間に集まった親戚と賑やかにごちそうをいただき、勝手の分からない台所で、おずおずと過ごしてきた"いつも"のお正月。ほのかな雪明かりに、鮮やかに浮かび上がる漆塗りのお椀と、素朴な中にも都の優雅さを忘れないあの味(*3)を、まるで幼い時から親しんできたかのように恋しく思い出したとき、万葉の時代から変わらない"ふるさと"を想う歌心に触れたような気がしたのでした。

願わくば、あの"ふるさと"に、骨身を埋めたい。

"齢を重ねる"ということ

"わたしたち"のものが増えてくると、"わたし"はどんどん変わっていきます。

「よくあんなひどい自転車に乗ってたな。タイヤに空気入れておいたよ」。

もともと道具や機械を使いこなすのがとても苦手なわたしが、こうしたさりげない心遣いに感謝できるのも、結婚の醍醐味でしょう。苦手なことを補ってくれる配偶者の存在は、自分の"苦手"を"克服すべき欠点"でなくしてくれる圧倒的な安心感を与えてくれるものです。もしかしたらこれを世間では"老化"と呼ぶのかもしれませんが、不安なく老いていける"余裕"は、自分の得意に集中できる"伸びしろ"でもあります。

"ひとりでも生きていける二人が二人で生きていく不断の決意"を重ねているうちに、いつしか二人が渾然一体となり、やがてひとりでは生きていけなくなっていく。

あなたも、登りたい山が見つかったら、
わたしたちはもう、この世の大当たりくじの入り口に立っているはずです。

(*0) 『源氏物語』オタクだったおかげで繋がった縁がたくさんあります。コンテンツの価値は、「人と人をつながる」こと。メディア再編がもたらすさまざまな可能性については、のちほど書きたいと考えています。タイトル画像は、NHK大河ドラマ「光る君へ」ビジュアル<月夜ver.>より。https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/blog/bl/ppzGkv7kAZ/bp/p1AAVL4Jv1/
(*1) 産経新聞「『恋愛しないで結婚してもいい』 牛窪恵さんが説く未婚化社会への処方箋は『共創婚』(油原聡子)」https://www.sankei.com/article/20240212-3VTTVWV7YFBIDABR4NFPXIYNSY/
(*2)「仕事で一人前になるまではプロポーズできない(今の手取りでは将来が不安)」という若い男性の背中をさりげなく押すことも、わたしのささやかな仕事の一つです。「モテません」と嘆く男性の方には、「お父さまとの思い出(もしくは羨ましいと思った世間のお父さんの姿)を周囲にさりげなく話しておくといいですよ」と申し上げています。どこにどんなご縁があるかわかりませんからね。
また、政策立案者の皆さまには「政府の子育て支援給付があるから、若者は家庭や子どもを持つ決断をするわけではない」ことを申し上げたい。特に、医療介護年金など社会保障の世代間格差という難題から目を逸らし続けることは、妊孕可能期間に限りある女性と長期間交際しておきながら婚姻責任を全うしない男性と同じくらい、(その女性から深い恨みを持たれるだけでなく)社会から糾弾されるべき社会悪です。
(*3) 「福井作り手のマルシェ おっけの(https://blog.okkeno.net/topic/763/)」さんが紹介している写真が一番近いです。人の心に"ふるさと"が宿るのは、そこに住む人とお客さん扱いされずに親しんだときであり、決して納税制度などではないこと、現地に足を運ばないとわからない味があることは、ぜひメディアの皆さまに広めていただきたいものです。

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