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置き去りにされた記録 第3章〜トラウマ治療〜

私はカウンセリングでFAPというトラウマ治療を受けていました。

FAPを受け、麻痺させていた感情、飛んでいた記憶の感覚が蘇ったり、うつになったり自分の本当の痛みと直面することになった。

「私は大丈夫。強いから」

と思っていたけど、全然大丈夫ではなかった。

最初の夫婦カウンセリングで先生に「私の緊張感が高い」と言われ、まずは私だけ週に1度カウンセリングとFAP治療を受けることになった。
「夫をなんとかしたい」「私が夫を助けなければ」そう思っていたのに1度目の治療で夫をなんとかしたいという思いがなくなった。
夫のことをかばっている場合じゃないって思った。
それから今まで夫をなんとかして欲しいということばかり言っていたのに、憎しみしか出てこなくなった。
そして、最初の夫婦カウンセリングから1ヶ月後夫と一緒にカウンセリングを受けた。
今まであんなに夫をなんとかしたいと思っていたのに、夫の話が全く耳に入ってこなくなった。もう夫が話すことはどうでもいいと思うようになった。
それでぼーっとしていたら夫がイライラし始めた。
以前だったら夫が機嫌悪くなることがすごく嫌で、夫の機嫌を取ることに必死だったのに、もうそれもどうでもよくなった。


家を飛び出して最初はマンスリーマンションにいた。
家を飛び出したものの、一人がさみしくてすぐに帰りたくなった。
夫のことも心配だったしお店のことも心配だった。
私がいなくてお店は開けられるのだろうか?
夫は一人で大丈夫だろうか?
もしかして追い詰められて自殺をしてしまうのではないか?
私は一人、マンスリーマンションの部屋で孤独と恐怖におびえていた。
私がすべてを壊してしまうのではないか?
私が家に戻ればすべてが解決するのではないか?
私一人のわがままがみんなに迷惑をかけているのではないか?
自分の行動が正しかったのか間違っていたのかわからなくて苦しんだ。
夫から電話がかかってくると一瞬はホッとしてうれしいけど、文句ばかりを言われて憎しみがあふれてくる。
私はこんなにも苦しんでいるのに、、、、なのにあいつは、、、、私の苦しみをちょっとでも理解しようとしない。。。。
苦しくて右肩がもがれるような痛みを感じていた。
夫が憎い、でもこの苦しみからも逃れたい。
また地獄の日々でもいいから戻ろうかと思った時

「戻るな」

低い声でどこからともなく私を引き止める声がした。

誰の声とも、どんな存在の声なのかわからないけど、ただこの声に従おうと思った。
従わないといけないと思った。

家を出てから2週間くらいはこんな苦しみにもがいていたけど、2週間を過ぎた頃から精神的にだいぶ落ち着いてきた。
マンスリーマンションを1ヶ月借りて、1ヶ月したら戻ろうかと思っていたけど戻ることはやめて、次はシェアハウスを見つけてしばらくそこで暮らすことにした。
3LDKのマンションで女性3人の暮らしはとても楽しかった。
でも3ヶ月後、オーナーの事情で家を出なくてはいけなくなった。
この時も家に戻るか考えたけど、まだ戻りたくないと思った。
自分で家を借りて一人暮らしをすることにずっと抵抗があったけど、ようやく決心することができた。
すぐにいい物件が見つかっていよいよ本格的に別居をすることになった。
一人暮らしのさみしさに耐えられるかと不安はあったけど、案外楽しく過ごせた。
考えてみたら、二人でいてもずっとさみしかった。
二人でいるのにさみしいことはとても辛いことだった。
それに ”逃げなくてもいい毎日” って当たり前のことだと改めて気づいた。


日常生活は落ち着いてきたけど、トラウマ治療によって出てくる古い痛み、感情は絶叫するほどの苦しみだった。
FAP治療で簡単に痛みが取れることもあれば、痛みが取れたその奥にある傷が浮上してきて全身で痛みを感じることもあった。
私は先生に「言葉と感情が一致していない」と言われ、最初は意味がわからなかったけどこういうことだとわかった。
FAP治療をしている時に体のあちこちにアザが浮かび上がってくることもあった。
どこかにぶつけたわけでもないのに、本当にあちこちにアザが出てきた。
きっと押し込められてきた痛みかもしれない。
私はこんなにも傷だらけだったんだと体も体を張って教えてくれている。


別居するまでの私は本当にバカみたいな生活をしてきた。
私は結婚して何かを手に入れるたび、それを失うのが怖いと思った。
お店は順調で、友達にも恵まれ、マンションも買って、夫のお酒の問題さえなければ私たちは最高に幸せな夫婦なのにって思っていた。
夫が変わってさえくれれば、、、、
ずっとそう思ってきた。
でもそうじゃないことを突きつけられ絶望した。
夫の問題じゃなくて、自分の問題だった。

あるセミナーでこう言われた。

「自分を大切に生きることと、自分勝手に生きることは違う。なんとかしたい人がいたらまず自分を大切にしてください」

はじめて自分の胸に響いた。

本当は夫をなんとかしたいんじゃなかった。
私が助けてほしいと思っていた。
人に見捨てられることが怖かった。
見捨てられたくないから、夫を必死で助けようと思っていた。
夫を見捨てちゃいけないって思っていたのではなく私が夫に見捨てられたくないと思っていたからだった。

見捨てられる恐怖にずっとおびえてきた。


FAP治療でその恐怖がようやく取れてきた。


つづく

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