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魔女の宅急便の小説を読んで

📕秋の読書~恋愛小説エッセイ その①~

読書の秋。好きな本について、少しずつエッセイを書こうと思います😊 最初は「恋愛小説」について。

自分がふだん読む本の中には、ほとんど恋愛小説はない気がしますが、
よく考えると数少ないですが「これは傑作!」と思える恋愛小説がありました。

第1回目は『魔女の宅急便 その3』です。
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ジブリで映画化している有名な作品で、ファンの方も多いでしょう。
『魔女の宅急便』の原作小説は、全部で6冊あり、キキが結婚して娘が生まれるまでを描いています。
そのうち、映画になったのは最初の1巻だけです。

著者の角野栄子さんは国際アンデルセン賞(※)を受賞しています。
(※児童文学賞ではノーベル賞並みに世界的に権威のある賞)
小・中学校の国語の試験でも、よく角野さんの物語が出題されます。
彼女の書く文は美しく、リズムと気品があり、読んでいると心がゆったりと落ち着きます。

私が初めて『魔女の宅急便』の小説を読んだのは、2年前の秋でした。

1巻を読んだ時、
「映画は、1巻を大胆にアレンジしたのだな」
「それでいて、原作の雰囲気も生かされている」
と感心しました。

特に、ジブリ映画『魔女の宅急便』では、
最後に「飛行船から落ちかかっているトンボ少年を、キキがほうきに乗って空を飛んで助ける」という、アクション映画も顔負けの冒険シーンがあります。

これは、1巻に全く描かれていません。

「宮崎駿さんが作ったフィクションだろう」
と、理解しました。

※映画のトンボくんは、若干うるさいチャラ男ですが、小説ではシャイボーイです。

ところが、その私の予想を、ひっくり返らせる描写が、3巻に出てきました。

(★ここからはネタバレになるので、読みたくない人は読まないで下さい。)

第3巻の最後。
キキは夜、ほうきで空を飛んでいる時に、

「私、トンボさんが、好きなんだわ・・・!」

自分の恋心に気づきます。

そして地面に向かって、ほうきで急降下するのです。

後でキキは、「自分の恋の気持ちに気づいて、空を急降下」したのは自分だけでなく、同じく魔女であるお母さんも同じだったと知ります。

宮崎駿さんの映画では、キキが、自分の好きな男の子を救い、キャッチするために急降下しました。
それは、3巻のクライマックスへのオマージュだったことが、分かりました。

私は、宮崎駿さんの素晴らしい演出に驚き、感動しました。
彼は6冊の小説を全て読み込み、そのエッセンスを映画の中に活かしたのです。

自分の本当の気持ち、特に、恋心のようなに心の奥底に隠れた想いに気づくことは、難しいです。

私は毎朝、瞑想をしようとしますが、目を閉じても、雑念やどうでも良い考え事ばかりしてしまいます。

自分の本心に気づくこと。それはまるで、海の底にいるかのように、何も聞こえず、透明で静かな空間が訪れるようなものだと思います。
「ライ麦畑でつかまえてつかまえて」のホールデン少年が、子供たちをキャッチする行為も、少しだけ思い起こし、
仏教の説話などで時々聞く「柏手を音色を聞いた途端に、池の底面が見えるようなもの」といった、美しくも孤独で、とにかく静かな情景も浮かびます。

It’s so hard to look into deep, deep down inside of me. You must be brave to face yourself.
だからこそ、自分の心の奥底の奥底まで旅することは、本当に難しく、勇気が必要なことだと思います。

魔女の宅急便の小説には、
「トンボさんが好き!」と、自分の気持ちに気がついて
まっすぐに自分に向き合おうとする、キキの勇気と成長が、みずみずしく描かれていました。

私は、角野栄子さんの小説を尊敬します。
そして、角野さんの小説を自分の解釈で鮮やかにアレンジし、女性ではないにもかかわらず、女性が自分の恋心に気づくという繊細な場面を見事にとらえた、宮崎駿さんの映画の演出も、尊敬します。

『魔女の宅急便』は少女の自立と成長を描いた物語であり、恋愛の目覚めも描いている詩のような作品でもありました。📕

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