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栗原類くんの自伝、良い本でした

『発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由』
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友人の薦めで読んだ、モデル・俳優の栗原類くんの自伝。素晴らしい本だったので、kindleで読んだのに、紙の本も買うことにしました。

本書を読むと、発達障害を持つ子がどのように世界を認識しているか、具体的に表現されていて勉強になります。長期記憶ができず、覚えたそばから忘れてしまう。人の表情や空気を読むのが苦手、情報量が多いと処理できず、精神的に苦痛で寝てしまう…など。

その類くんの障害を「克服して潰す」のでなく、障害と「共存」し、彼の長所を輝かせるため、長期的にじっくり戦略を練って類くんを愛し育み続けた、お母様もまた素晴らしい。彼が夜9時に必ず寝て朝早起きするように、逆算して一日の計画を立て実行するなど、具体的な実践が記されています。

また、ニューヨークと東京の両方で育った類くんの手記は、日米の教育観の違いも明らかにしています。本文中には、類くん以外に彼のお母さんと主治医の手記も収められており、そのお母さんの手記から少し引用します。

●「アメリカでは、発達障害の子供に対する学校側のフォローがしっかりし、取りこぼすことなく支援してくれます。その分、家庭に対する要求も多く、親も一緒に変わっていかないといけません。一つ一つの問題解決の場面で、誰が悪いとか誰の責任だとかいう話にならない分、学校と保護者で共闘していける環境になります。
問題が起こったら、とりあえず誰かが「申し訳ありません」と言わないと収まらない日本の状況と違うのはそこです。誰かが謝まり、誰が悪いか考える無駄な時間はないのです」

●「発達障害の子育てに関しては、学校の支援より、長期的に信頼関係を築ける主治医を持つのが最大の武器になると思います」

●「日本の学校は他人の行動に子供が干渉しがちです。(類が)毎日遅刻すると、「また遅刻かよ!」と干渉してくる子供が必ずいます。
これがアメリカの小学校だと誰も文句は言いません。誰か文句を言おうものなら、教師なり保護者なり大人が注意します。
「遅刻はあなたに関係のないでしょう。遅刻して不利益になるのは類くんであり、あなたは無関係です。他人の行動に口を挟むのは幼稚な行為です」と注意するので、小学校低学年の時点で他人に余計な干渉をする子供はいなくなります」

・・・これらの指摘は核心をついています。私はアメリカ式教育を全面的に支持し日本を非難するつもりもありませんし、両者に長所と短所があって違うのは当然だと思っていますが、
昨今の日本語のツイッターなどを見ていると、他者の行為にいちいち文句を付けなければ気が済まない稚拙な書き込みが多く、
自分に不利益がないのなら放っておけばいいのに…と呆れます。
「誰かが謝らなければ収まりがつかず、次の段階に行けない日本社会」という指摘も、ピッタリな表現だと思います。

私の塾にも、発達障害を抱えた生徒さんが学びに来てくれています。その子供たちからの「世界の見え方」を認識するために、類くんの手記はとても役に立ちました。

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