エッセイ*銀だことほっぺい
先週のことである。
わたしは地元の駅なかをブラブラと歩いていた。
コロナ明けのどことなく浮き足だった大勢の人並みのなかを、35度を超える酷暑の空気の中をぼうっと歩いていた。
ふと真横を通り過ぎた男性を思わず二度見した。
かんちゃんだ。
かんちゃんはわたしが初めて付き合った男の子。
華奢で女の子みたいな顔をした子だった。
最後に会ったのはもう10年近く前になる。
かんちゃんは相変わらず、綺麗な顔をしていて、だけど随分当時より垢抜けた様子だった。
かんちゃんのほろ苦い記憶が蘇ってくる。
映画デートの約束をした。
待ち合わせ場所にはいつもと同じユニクロの白いウィンドブレーカーを着た彼がいた。
そういえばわたしはいつもその白色が少し薄汚れているのが気になっていた。
映画館に向かったら予約ができておらず見られなかった。
仕方ないのでわたしたちは近くの銀だこに入った。
たこ焼きは大好きだ。たこ焼きのためだったら口の中を火傷しても構わない。
2人でパックになったたこ焼きを半分に分けて頬張る。
ふと彼のほうをみると頬にたこ焼きソースがついていた。
どうしてかわたしの恋心はそこで熱々だったたこ焼きとともに冷めてしまった。
わたしは次の日から3日寝込んで、かんちゃんとデートすることは二度となかった。
そんな訳だから、わたしは10年ぶりのかんちゃんを素通りして、ルミネへ駆け込んだ。
*あとがき
まさか!かんちゃんに出会うとは笑
因みにかんちゃんは坦々麺の彼です笑
人と出会いって本当に不思議だなと思いました。
今で言うカエル化現象だったのかなと思います。でもカエル化現象が起こるってことは、彼に惚れてはいなかったんだなと思います。
それでも一度は恋人だったから翌日くらいまではかんちゃんのこと考えていました。
元気で楽しく生きてくれていたら嬉しいなと思います。