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夏日記④ うどんとディズニーランド

ディズニーランドに行ってきた。
数えてみれば、ほぼ13年ぶりである。
日頃からお世話になっているF氏が、フロリダ土産のミッキーの耳をくれたことがことの始まりである。
耳をもらっておいて、箪笥の中にしまっておくだけでは、あまりにも勿体ない。一度も装着されることなく、タンスにゴンゴンと添い寝である。
耳もこんな不当な扱いをされるとは想像だにしていなかっただろう。
不憫な耳を救うため、行こう、ディズニーランド。

と決意したはいいが、これだけ年数が経つと、ディズニーに行ってしたいことがまるで思い浮かばない。
想像できないことに対しては欲望も湧かないのだなと気づいた。
しかし、せっかく機会を与えられたからには楽しまねば損である。
人生とは挑戦だ! 遊びこそ意識高くあれ。
というわけで、親しい友人から行きつけのまつげパーマのお姉さんにまで満遍なく聞き取りを行い、自分なりの目標を作った。

1 美女と野獣に乗る(知らない間にできてた)
2 ベイマックスに乗る(楽しいと評判)
3 F氏が買ってくれたミッキーの耳をつける

以上である。
色々聞いたわりに3つしかないのかよと思われたかもしれないが、目標を高くしすぎても良くないかなと思い、絞った。

当日舞浜でF氏と待ち合わせたが、その日はすごい混雑らしく、F氏もあせっていた。
ディズニーへの並々ならぬ熱が、舞浜でたちのぼっている。
サングラスや耳を装着し、みなやる気満々だ。
私のように小学生の頃から覇気のなかった人間が入園して大丈夫なんだろうか。
しかし、尻尾をまいて逃げ帰るわけにもいかない。電子チケットはすでにスマホの中である。私もいざ出陣、と耳をつけた。

入園後、スマホで手配するやり方がわからなかったので、正々堂々とF氏にすべてを丸投げした。

15分くらい待つ軽めのアトラクションをいくつかこなして、ホーンテッドマンションに乗る。
これは好きだった記憶があるぞ。

ぐるぐるまわってお化けの出る館をめぐるうちに、ジャンヌ(私が先日書いた「彼女はジャンヌ・クーロン、伯爵家の降霊術師」の主人公)もこういうお屋敷が大好きだろうなと思った。幽霊が出る場所なら嬉々として聖水を持って突進していきそうだ。

そして、水晶にうつる魔女の顔を見て驚愕した。
(記憶より……若い……!)
これを見た学生の時、おばさんの顔がうつっていると思った。しかし水晶の顔は若いのである。全然お姉さまの範疇だった。
意外なところで自分の老いを感じた。
※もしかしたら時間差で老女になる仕掛けかもしれない。知っている方がいたら教えてほしい

そして、目標にかかげたベイマックスと美女と野獣に乗った。
ベイマックスはちょっと酔いかけたが、爽快な乗り心地であった。ちびっこに人気なのもうなずける。
美女と野獣は雰囲気がたっぷりでよかった。
待ち時間も楽しめるように工夫されていたし、要所要所がドラマチックに押さえられており、ストーリー性がしっかり伝わってくる作りであった。
人間になった野獣とベルがいちゃいちゃしているところを我々がぐるぐる回り続け、ヒューヒュー要員にされたが、喜んでヒューヒューした。
女児だったら大好きな乗り物になったと思う。何なら今ももう一回乗ってもいいなと思っている。

すごいなと思ったのはスティッチのシアターみたいなところだ。お客さんとだいぶ絡むのである。これはスティッチ側もお客さん側も、瞬発力が試される気がする。
私の回では、とある男性がめちゃくちゃ擦られており、もはや彼のおかげで楽しませてもらったくらいであった。

F氏がフロリダのディズニーランドで買い求めたという耳は、キャストの人から「その耳可愛いですね!どこで買ったんですか?」と幾度か声をかけられ、たいへん驚いた。
「このあたりじゃソレ売ってないなぁ」というのが、ひと目見て分かるのか……。

一生懸命仕事をしている人は違うなぁと思う。
私なんぞ、上司の体重の増減にも気がつかず、「俺ちょっと痩せたと思わない?」とたずねられても「さあ……毎日見てるからわからないですね」と冷淡な回答をしていたというのに。
行きずりのお客さんの耳にも気を配れるディズニースタッフ、さすがである。

F氏は本当にディズニーが大好きで、いろいろと解説してくれた。お世話になりっぱなしである。F氏が喜んでくれることをなにかできたらいいのだが、あまりにも無力であった。
なにせ私には、体力がないのである。

ひととおり乗り物に乗り、F氏とアップルティーソーダを飲んだときには相当風が出てきて、凍えるほど寒くなっていた。
時刻は18時30分過ぎである。
なんかもうトイレも近いし、喉もイガイガしてきたし、さすがにここらが潮時だなと思う。
F氏はいつもディズニーを楽しんでいるので、きっと慣れているはずだし、まだまだへっちゃらのはずだ。エレクトリカルパレードも見たいだろう。申し訳ないなと思ったが、帰宅しようかと言う。
F氏はいつも17時には帰っているそうだ。先に言ってくれ。

お土産を購入しようと思ったが、お菓子でわくわくする年齢はとっくに過ぎており、かといってぬいぐるみも犬の餌食になるだけである。
どうしようかと思ったときに、すさまじいものを発見した。

「ペットボトルの蓋 開けるやつ~ミッキーの形~」である。
私はペットボトルの蓋を開けられないことが多く、友人知人に頼むこと複数回、時には当時80代後半だった祖父の力を借りてまでペットボトルを開けていた筋金入りのペットボトル弱者であった。
(ちなみに祖父はまだ元気であるが、さすがに90代後半になり、ペットボトルの蓋をあけてくれと頼むのはやめている)

特に、本体がふにゃふにゃのエコなペットボトルは開けづらい。幾度出先で口惜しい思いをしたことか。
そのたびに百均で似たような商品を購入したが、毎度なくしていた。
これは可愛いし、しかも4つセットである。かばんごとに入れられるではないか。
感動して購入した。なんでもあるんだなぁ、ディズニーランドって。
良い気になってタオルとミッキーの耳をぶら下げるキーホルダーも買えた。やはりはずみがつくと買い物もしやすい。

土産物も購入し、無事退園した。
その後猛烈にうどんが食べたくなり、イクスピアリのフードコートでうどんをすすった。
お昼はハンバーグを食べ、その後も甘い飲み物をがぶがぶ飲んでいたため、すっかり胃が弱っていたのである。天ぷらを消化する力はもう残っていないので、大根おろしの乗っただけのシンプルなうどんにした。
うどん、うまい。
心と胃に染み入る。
心地よい疲れと共に、私のディズニーの旅は終了した。
総括としては、楽しかった。また行っても良いかもしれない。耳をぶら下げるキーホルダーも買ったし。ただし、17時には帰ったほうがいいだろう。

なぜなら翌日、夕方まで寝込んだからである。
友人のさやか氏に「この年齢でディズニーに行く上で大事なことは、休憩だから」と注意されていたのだが、どうやら足りなかったようだ。それくらいはしゃいでしまったということで、ディズニーの力はおそるべしである。

翌日はだるさと頭痛がいっきに押し寄せ、再起不能であった。あまりにも回復できないので、ミュージカル刀剣乱舞の乱舞野外祭公演の配信を購入し、再生しながら体を休めていた。

刀剣男士は真夏の野外で過酷なステージをこなしているのに、私は涼しい日のディズニーでこのざまである。こんなことで主がつとまるのであろうか。
(この公演があった当時、倒れて周囲の方にご迷惑をおかけするのを避けるため、最初から現場に行くのを諦めた。今考えてもそうしてよかったと思う)
今後のことを考えて、もう少し体力作りをするべきなのかもしれない。
娯楽は健康があってこそ享受できるものなのだ。

とりあえず、明日からエスカレーターを使わずにできるだけ階段を使うよう心がける。いつもこんな感じで三日坊主で挫折するのだが、もう少しは頑張りたい。

なにせ来週、とある体験をするために某遊園地へ行く予定なのだ。
お前懲りずにまた遊園地に行くのかよ、と思った方もいるかもしれない。
行きます。
そのことは、また詳しく書くつもりである。

元気で夏日記を更新し続けるため、今年の夏は努力していかねばな、とディズニーで再確認させてもらえた。

次回もこうご期待、ということで、ひとまず耳を再び箪笥にしまい込んだのであった。