こころと脳の対話
河合隼雄 茂木健一郎 著 潮出版社
小学生の頃、夏休みの自由研究で、箱庭を作った事があったと思う。
ただ、その箱庭が心理療法に効果的だなんて当時は全く知らなかった、と言うか今回初めて知った。
箱庭に置くアイテム(人形など)を無作為に選ぶのだが、実はその無意識の中には本質が潜んでいるという。
たまたま見かけて気になるものに、自分の無意識が呼応する。
《あんなにいっぱいアイテムがある中で、1個を「これだ。」と選んで置く。》p.94
気持ち悪い、嫌いだ、と思いながらも気になって仕方ない、選ばずにはいられないアイテムが出てくる…
近代科学では軽視されがちな「無意識」や「関係性」に着目する事こそが、精神分析やカウンセリングの鍵となる、と言うのがこちらの本(対談)の大筋だと思う。
本当のところ、「大筋」と言わずに終始興味深い。だけど「大筋」を決めるなどして的をしぼらなきゃブログがまとまらなくなる笑
対談形式ならではの読み易さもあるのかな。そして、その「大筋」にしてもここに書ける以上に非常に奥が深い。
《意識のなかで表象されているもの、たとえばいま、これを見て赤という色が目に見えているんですが、その後ろにある無意識のほうが重要なんじゃないか》p.98-p.99
《脳活動のうち、ある部分を意識化して、可視化するというのが意識というテクノロジー(機能)なんですけれど、その可視化したときのアイテムには、じつは、その背後にものすごくいろいろな無意識のものがあって、アイテムは、それをつかむとっかかりなんだろうなという感じがするんです。》p.99
《僕のは、近代化学とは違う手法でやっている、と。近代化学とどこが違うかというと、「関係性」ということと、「生命現象」、そのふたつがあるというふうに思ったわけですね。
近代化学は、ご存じのように、関係性を絶って、客観的に研究をする。しかし、われわれのほうは関係性がなかったら、絶対、話にならない。》p.14
夢もまた、箱庭と同じで、そこに出てくる人やものは、普段は無意識だが自分にとって実は大変意味があると言う。
《生命体というものは、内部でいろいろな葛藤があるんですね。それが外部のなにかに向かったとき、それを変なふうに吸収したり解釈してしまったりするんですね。(中略)そしたら寝ているあいだ、その変なほうが動き出すんですよ。それを夢に見るんです。
(例えば就職を斡旋してくれた人に対して意識的には「親切な人」と思うが、変なほうとしては無意識に「胡散臭いな」と感じている、するとその人が夢の中では変な格好をして出てくる。)
わかりやすくいうと、僕らが生きているということ自体、ものすごく無理をしているわけでしょう。それを無理しているだけではもたないから、寝たときに調整するわけです、全体性のなかに。その全体性のなかに調整する動きを、脳のなかで視覚的に把握したものが夢ではないかと、僕はそう思っているんです。》p.24-25
《われわれはふつう考えるときには、分けて考えたほうがわかりやすいでしょう。「この問題はこう分けて考えましょう」というけれど、本当は分けられないんじゃないかと思うんですよ、人生でもなんでも。だから本当は分けられないもの、徹底的に分けられないものの意識が夢に出てくるんですね》p.139-140
《本当に心、精神の運動というのはダイナミックに起こる。でも科学というものが要求するのは再現性・普遍性であるわけです。しかし、人間の心の動きって再現性があるわけがないんですよ。》p.61
本筋からは少し逸れた話になるが、大変に共感した箇所があったので、それも挙げておこう。
《話の内容と、こっちの疲れ度合いの乖離がひどい場合は、相手の病状は深い、というんです。
たとえば、こられた人が「人を殺したい。自分も死にたい」とかそんな話をしたら、しんどくなるのは当たり前でしょう。そうではなくて、わりと普通の話をして帰っていったのに、気がついたらものすごく疲れている場合があるんです。その場合はもう、その人の病状は深い。》p.71
《それはやっぱり、こちら側が相手と関係を持つために、ものすごく苦労してる証拠ですね。話のコンテンツ(内容)は簡単なんですよ。それではないところで、ものすごい苦労してるわけ。》p.71
思い返せば…こういう人、いたな💦
精神医療がまだあまり発達していなかった子供時代には「ちょっと変わってるな。」「なんかあの子落ち着きないな。」って子が、今思えば「抑うつ症」「アスペルガー」「ADHD」「軽度発達障害」だったと気付く事があるが、それと同様か。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?