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物価とは何か

渡辺努 著  講談社選書メチエ

経済学部の学生でもなければ
勤め先が金融業界でもない私にとっては
やはり難しく、はじめは読み進めるのに
苦労した…笑

が、徐々に慣れてくるとどんどん
引き込まれていった!

最近物価が高いな、と感じる事はあっても
それについて突き詰めて考えるなど
して来なかった私にとって、「物価理論」
について書かれた本書を読んでいる時間は
まさに「非日常」。

普段の生活とは全く違う世界に入り込んで
身を置くという点では

旅行に出かけたり映画を見るのと同様
新鮮であり癒しの効果があった。

さて、私がこちらを読むきっかけと
なったのは

7月に参加させて頂いた、某大学の、
社会人向けの「オープンセミナー」の講義が、
本書を参考として扱っていたから。

たった1時間弱とは言え、講義で説明を受け
予備知識が少しでも入っている事は大きい。

逆に、このタイミングでないと、こういった 
本を手に取る機会はないのではないかと
思った。

それに何より、講義は私のような素人にも
非常にわかりやすく、興味が持て、ぜひとも
本書を読んでみたいと思えるものだった。


講義での柱のひとつは
「低いインフレ予想が、低いインフレを
生み出す」
という内容。

予想が現象を引き起こすだなんて、と
非常に興味深く思った!

諸外国と比べ、日本の消費者は
「物価が上がらない」のを当たり前だと
思っている。

その結果、企業は値上げ出来ない。

低インフレ

消費者の低いインフレ予想は確固たるものに。


また、
焼き鳥チェーン『鳥貴族』の月次報告より

アベノミクス、異次元緩和による政府と
日銀が発した「デフレの時代は終わり、
これからはインフレだ。」というメッセージ
を受け止め、値上げをした結果、客単価は
上がったが、客数が大幅に減り、売上は
前年比マイナスに転じた。

日本企業が値上げをする事の難しさを強調
されていたが、本書ではもうひとつの
要因にも触れており、非常に興味深かった。

それは「相互作用」が起こらなかった事。
同業他社にとっても原価の上昇は共通して
いたはずなのだから、鳥貴族の価格更新を
きっかけとして、それに追随する動きが
あってもよかったのでは?
あればまた違った結果になったのでは
ないか…と。



講義では触れられていなかったが、以下
は私が本書の中で印象に残っている内容です。


人々の関心には上限がある

中央銀行が「これからインフレになるだろう」
と発信することで人々がインフレを予想した
行動を取り、実際に目標のインフレ率を達成
するという「予想に働きかける政策」が
日本でうまくいかない理由として…

人々の関心が中央銀行(日銀)にない事を
挙げている。

私自身、確かに今まで日銀総裁の発言などに
関心を持った事がなく、ドキっとしたが。

「関心には上限がある」とのグリーン・スパン
の提言を引用されていて少しホッとした。

ハイパーインフレを経験していない日本人に
とっては、中央銀行の発信よりも、身近な
家庭生活や仕事、中小企業の経営者だと日々
のやりくり等の方に関心を寄せているのだと。

逆に日銀にばかり関心がいき、身の回りへの
関心が疎かになった状態は望ましい社会
ではないのだと。

とは言え人々の関心を中央銀行にもっと
向かせるために、ポリシーメーカーや
経済学者の間では、日々研究や努力が
なされている。

「予想に働きかける政策」の新バージョンを
設計すべきではないかと締め括くって
おられた。

※最後に。
私にとっては難しい内容だった為、解釈
に間違いがあるかもしれませんが、ご了承
下さい。当ブログはあくまでも、私個人の
記録を目的としたものです。

本書を読むきっかけを下さった、
関西学院大学様、同経済学部秋吉史夫先生
に深く感謝申し上げます。

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