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北斎や写楽など、天才浮世絵師たちの肉筆画(1点ものの絵画)がずら~り✨蜘蛛の巣の上に人?『鬼滅の刃』っぽい場面も!

すみだ北斎美術館で始まった「筆魂(ふでだましい)」展。同館には珍しく、浮世絵師による肉筆画の名品が集まった。「浮世絵の先駆」ともいわれる岩佐又兵衛から幕末の葛飾北斎や歌川国芳まで。肉筆画ならではの筆触を楽しみながら鑑賞を進める中で、2人は実に風変わりな作品に出合った。

つあお まいこさん、この絵、蜘蛛の巣の上に女性が乗っかってますよ!

まいこ うわぁ、すごいインパクトですね!

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川又常正《見立羅生門図》(江戸時代、享保〜延享年間[1716〜48年]頃、絹本着色、個人蔵)前期展示風景

つあお 傘をさして歩いてる人は、優男みたいな感じです。

まいこ 確かに色白で細身。髪型も女性みたいですね。

つあお さしてる傘も美しい。何となく優雅です。

まいこ 蜘蛛の巣の上にいるのは確実に女性だと思いますが、傘の人はどちらなんでしょう?

つあお 腰に刀をさしてるから、やっぱり男性なのでしょうね。

まいこ 作品のタイトルに、「見立」という言葉が入ってる。昔の物語を当世風に翻案して描いたということですよね。元の物語の登場人物と性別やキャラをわざと変えていたりしている!

つあお なるほど。《見立羅生門図》だから、鬼が出てくるのかな?

まいこ ちょっとピンときました! 蜘蛛の巣の上にいる女性が鬼。魔性なんですよ、きっと。そういえば、人気漫画『鬼滅の刃』で主人公の炭治郎が苦戦する『那田蜘蛛山編』と似た不気味さも感じます! 人が蜘蛛の巣の上にいるってゾッとしますよね~。蜘蛛の巣を操る両性具有っぽい少年の鬼・累(るい)というのが出てきて、超強いんですよ。

つあお をを、『鬼滅の刃』と符合するとは! それにしても、なんて美しい鬼なんだろう。真っ赤なおべべを着てるし。こんな鬼に襲われてみたいなぁ。

まいこ つあおさん、それが罠なんですよ! ものすごい妖術に捕まって血だらけになっちゃいますよ〜!

つあお 本望です。

まいこ ご勝手にどうぞ! しかし、この絵でも蜘蛛の巣の上の女性は、傘をがしっとつかんでます。「逃がさないわよ」って感じ。笑 元の説話『羅生門』では、鬼退治にやってきた渡辺綱の兜を鬼が背後からつかむ場面があるようです。

つあお きっと本当は角が生えてるんでしょう、見えないけど。

まいこ そうですね、ランクが高い鬼は変身の術も巧みですから。(鬼滅情報)

つあお まぁこの絵は「見立」ということなので、江戸時代によくあった手法とも言えそうですけれど、むしろ現代に置き換えてみると面白いですね。本当の鬼は、人前では角を隠してるのかもしれない!

まいこ そうですね! この傘の男性は、女性に呼び止められて戻ってしまうのでしょうか?

つあお 戻ってしまったらもうそれはその人の運命と言うことで仕方がないでしょう。でも、江戸時代のこうした絵は風流ですね。恐ろしい話をこうしてけっこう洒脱な絵にしてしまうのですから。優雅という点では、喜多川歌麿が描いている《雪兎図(ゆきうさぎず)》もなかなか面白いですね。

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喜多川歌麿《雪兎図》(江戸時代、寛政年間[1789〜1801年]後期頃、絹本着色、個人蔵)前期展示風景

まいこ そうそう、これ、私も注目しました。しゃがんでいる女性が白いうさぎに手をかけてる。

つあお これは作品名から考えると、雪でうさぎを作ってるわけですよね。

まいこ 現代は雪だるま。江戸時代はうさぎを作るのが流行ってたのでしょうか? この展覧会に古山師政の《雪兎図》というのもあります! これは、禿が外で作った雪うさぎをお盆に乗せて遊女に見せていますね。

つあお 考えてみたら、月でうさぎさんがお餅をついていると考えていたりしたわけだから、日本人はきっとすごくうさぎ好きだったんじゃないでしょうか。

まいこ そうかも! それにしても、このうさぎは本物みたいに精巧に作られてますね。

つあお 耳なんかすごいですよ。リアリズムの極致だなぁ。

まいこ 本当! それに背中もふわふわしてるように見えます。小さな子どもだと、作るのはなかなか難しいですよね。

つあお 雪うさぎを作ったのは、多分、後ろに立っているお母さんが抱えているちっちゃい子のお姉さんなんですよね。

まいこ そうですね! 弟のために指が冷たいのに一生懸命作ったんだ。口で指を温めながら作ってて、優しいお姉さんですね。

つあお 当時の暮らしぶりがよくわかります。歌麿って類型的な美女ばかりを描いているような気がしていたけれど、意外とリアリズムの人だったのかもしれません。

まいこ そうですね。ある日常のひとこまって感じです。そういえば、三井記念美術館でこの間見た小村雪岱(注:大正から昭和初期にかけて活躍した画家)の女性も雪うさぎを作ってましたね。

つあお そうか、雪うさぎを作るのは日本の女性の間で伝統的に遊びとして行われてきたことだったのかもしれません。

まいこ 上手に作れるとモテたのかな? 私は字が下手で、和歌をつくるのも難しいけど、雪うさぎなら作れるかも🐇

つあお 見たい見たい! 作ったのを見たい! 早く雪降らないかなぁ。

まいこ でも、実際は指が冷たくなってひよっちゃうような! 笑

つあお 大丈夫です! 私の心で後で温めてあげます!

まいこ だったらやっぱり頑張ります😁

つあお やったー。もう1枚、歌麿のこの鏡を持って何かお化粧してる絵も素晴らしいですね。こっちは夏の絵だ。

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喜多川歌麿《夏姿美人図》(江戸時代、寛政年間[1789〜1801年]、絹本着色、遠山記念館蔵)前期展示風景

まいこ 本当! 色っぽい! 帯がちょっとゆるいところも結構セクシー。

つあお どうもこれは、お風呂上がりの絵らしいですよ。

まいこ へ〜! どうりで

つあお 色っぽいわけだ。

まいこ 鏡を見ながら眉毛を触っていますね。

つあお 足元にあるうちわの上に載っているものは何でしょう?

まいこ これ、気になってましたが、朝顔柄のうちわの上に端正に置いてありますね。

つあお こうした小道具の描写が細かいところがすごくしゃれてる。

まいこ この3点セット自体がオブジェみたいです。

つあお 解説を読むと、どうも蛍を入れる籠らしいですよ。

まいこ 何て風流な。

つあお これから蛍狩りに出るんだ。

まいこ 素敵〜! でも先にお風呂に入ってから蛍狩りに行くんですね。

つあお 湯冷めしそう。だけど、きっとすごく暑い夏の夜だったんですよ。

まいこ なるほど〜! そういえば、川にじゃぶじゃぶ素足で入って蛍を捕まえようとしてる作品もほかにありましたね。

つあお 雪うさぎといい、蛍狩りといい、江戸時代の女性たちは、季節ごとにさまざまな遊びをしていたのですね。比べると、葛飾北斎のこの3枚組の絵は、何か対照的なイメージです。

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葛飾北斎《杣人春秋山水図》(江戸時代、文化年間[1804〜18年]中期、絹本着色三幅対、福井県立美術館蔵)前期展示風景

まいこ 真ん中に子供を背負ったおじさん、両側にダイナミックな風景が広がっている。すごく不思議な構図。そして迫力があります。

つあお 実に豪快! 北斎ならではのものだと思います。

まいこ 左側の屏風の奇妙な形の崖なんか、どこからこういう形が出てくるんでしょうね。

つあお いやもうこれは、日本とかそういう話ではなくて、とにかく北斎流のすごい世界を描いてるんでしょう。

まいこ リアルと空想のイメージがモンタージュされてるのかもしれない!

つあお そうなんですよね。そして、すごくダイナミックなんだけど、実はこの絵については、意外と描写が細かいみたいなんです。

まいこ 崖の下の方にいっぱい四角い白い何かがありますけど、何なんでしょうね?

つあお これね、単眼鏡で見てようやくわかったんですけど、すごく小っちゃく家が連なって描かれてるんですよ。

まいこ へぇ! 単眼鏡だと見えるんだ?

つあお 右の軸は、坂の途中を凄くたくさんの人間が登ってるんです。これも単眼鏡で見みないと分かりません。

まいこ 四角い家のようなのはたくさん見えますが、普通に見ているだけだと人までは見えません!! えーっと、キャプションを読むと、人の大きさが「6ミリ」と書いてありますね!

つあお すごい! やっぱり北斎ってある意味偏執狂だったんだと思いますよ。

まいこ この鳥たちの群れも、細かい描きぶり。草間彌生さんの無限細胞みたいですね。

つあお やっぱり肉筆画だから、ここまで細かく描こうと思うのかもしれませんね。

まいこ 素敵です! やはり北斎のような天才からは、そういったクレイジーに突き抜けた部分を一番見たいですね。何しろ「画狂老人卍」ですから。

つあお 画狂万歳、老人万歳!

まいこ まじ卍?!


【つあお思い入れの1枚】

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窪俊満《花魁図》(江戸時代、天明年間[1781〜89年]末期〜寛政年間[1789〜1801年]初期、絹本着色、個人蔵)前期展示風景
全体の基調がモノクロームで墨の魔力を感じさせる中で頭と足元がすっと浮かび上がる洒落た色遣いが素晴らしい。実はつあおは学生時代に日本美術史のゼミで窪俊満について発表したことがあって、名前の「くぼしゅんまん」を発表の間じゅうずっと「くぼのしゅんまん」と言っていたため、後で同級生に「の」が入るのが面白かったと言われたことがあり、印象的な絵師として脳裏に残り続けている。

【まいこの発見】

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岩佐又兵衛《弄玉仙図》(旧金谷屏風)(17世紀前半、紙本墨画淡彩 摘水軒記念文化振興財団蔵、千葉市美術館寄託、重要文化財)前期展示風景
鮮やかな赤を使った血みどろの惨殺シーンで知られる岩佐又兵衛のモノクロームの名画!

※掲載した写真は、プレス内覧会で主催者の許可を得て撮影したものです。

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【ラクガキストの部屋】

雪熊猫2021

Gyoemon作《雪熊猫2021》
あゝ風流😁 時節柄パンダの黒には、チョコレートをあしらってみるとよさそうです。Gyoemonはつあおの雅号です。
※この作品は「筆魂」展には出品されておりませんが、ご了承ください。

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筆魂 線の引力・色の魔力 ー又兵衛から北斎・国芳までー
2021年2月9日(火) 〜3月7日(日)、3月9日(火)〜4月4日(日)、前・後期で展示替えあり、すみだ北斎美術館
[同館ウェブサイトより引用]
浮世絵といえば版画が連想されますが、絵師が絵筆をふるった一点ものの肉筆画のほうが発生は古く、複雑で奥深い彩色技法や、描き手の筆づかいを直接感じることができます。本展では、浮世絵の先駆とされる岩佐又兵衛をはじめ、浮世絵の始祖である菱川師宣、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川国芳などの60人に及ぶ浮世絵師の肉筆画約125点を展観します。なかには重要文化財、重要美術品、新発見、再発見、初公開作品約40点を含む見どころ満載の展覧会です。浮世絵の源流である肉筆画を通して、300年に及ぶ浮世絵の歴史を体感いただくとともに、それぞれの絵師の巧みな線の引力、色の魔力、そして絵に宿る筆魂をご堪能ください。



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