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公共政策タイムマシーン3号

はじめに

まず断っておきたいのは、これは「タイムマシーン3号」の漫才の話をする文章ではありません。漫才の方が面白いので、お笑い好きの方は気晴らしにこちらでも見ていって下さい。

さて、みんなが動画を見始めたところで、ひそひそ話をしていこうと思います。今回はあえてSF話をするので、ホラ吹きの話など聞いてられるか、と思ったらすぐに閉じて下さい。公共政策の未来と、その実現に立ちはだかる壁について話そうと思います。

Googleの内部情報が描く(暴く)、近未来の世界

タイムマシーン3号の超絶おもしろ漫才を見て肩の力が抜けた所で、この動画を紹介しましょう。その名も「利己的な元帳/台本」。どうやら社員向け内部動画が漏洩したようですが、ここに未来を探るヒントが隠されているように見えます。(注:動画の音声は英語です)

ここで描かれているのは、データが、私たちの全てを記録し、私たちがなんたるかを暴露する近未来。人間が”遺伝子”と化して、データ機械という”生命”に支配される___ホラー風に言うと、そんな未来が描かれています。

動画冒頭で唐突に、それも延々と語られるのは、小難しい自然科学の歴史です。ラマルクからダーウィンに至る進化論、そしてハミルトンからドーキンスに至る「利己的な遺伝子」論。
ラマルクは進化論を世界で初めて提唱したと言われています。自分の知識では説明しきれないので宜しければこの辺を参照して下さい。
ダーウィンは有名な進化論の提唱者です。
「利己的な遺伝子」ーー これもまた難しい話になるので敢えて簡単にまとめると、遺伝子を個体に従属するパーツ達だとしていた従来の生物学議論に異を唱え、死へ向かう生命体を「遺伝子という不死の情報の乗り物」と見なしたことで、当時の生命観の転換に一役買った…らしいです。

ここで、人間の言動や行動を記録する"THE SELFISH LEDGER"を、生命における遺伝子だと捉えると、社会はどう映るのだろうか…?

この動画では、こうした「遺伝子」(大量のデータ元帳)をゲットしたGoogleが、何世代にもわたって「遺伝子」を「Selfishに(自己中心的に)」改造することで、人類を思うがままに変えてゆくさまが描かれます。

人類のアップデートは、既に始まっているのです…。(?)

データと人類の「共生」(きれいごと)

ここまでの話を読んで、「え、じゃあ我々って、 データ機械(≒タイムマシーン3号)の思うがままにされちゃう不自由の身なの…???」と思った方がいらっしゃるかもしれません。
それは困りますよね。

しかし私たちはまだ、デジタルテクノロジーを使って人類・社会を「よりよい方向に」進める可能性を失っていません。
実はこの「人類・社会をよりよくするためのデータ機械」、あなたのそばに沢山隠れているのをご存知ですか。 中には、幾つか挙げられる方もいるかもしれません。

ここは日本なので、日系企業の例を挙げてみましょう。LINEという会社は、数千万もの人間が、気になるあの子や絶交したいあの子やローソン公式アカウントなどと、どんなお喋りをしているか 全て記録しています(もちろん情報は匿名化されているので、恥ずかしいフレーズ・スタンプを送っているあなたも安心です)。そして彼らの局所的な意思決定の幾つかは、このデータによって「自動的に」行われていると言えます。

つまり、私たちが入浴していようが、ブログを書いていようが1限に絶起していようが、サービス提供のほとんどが機械化され、その改善もまた機械により行われるのです。似たような状況は、ZOZOなどのファッションECサイトや、メルカリのようなWebサービスにまで広く見られます。

海外に目を転じても、中国やインドといった10億人国家、またアメリカやインドネシアといった国で、様々なデータ機械が躍動しています。「データドリブン」なビジネスは、とどまることを知りません。

ついに、政策へ・・・!!(??)

そろそろ眠くなってきたので、タイトルにある「政策」のことも考えてあげましょう。

前段落で長々と語った技術は、「ある条件のもとで、どのような施策を取ることが最も適当か」を判別する技術だとも言えます。
その意味で、これをそのまま政策に応用すれば、「ある条件のもとでどのような公共政策が最適か」がわかるのかもしれません。そうなると世界はボタン1つでスラスラ回って最高にな……!  ったらいいのですが、先走りは禁物です。

まず、上で紹介した「データドリブン」は現状、実用範囲が非常に限られています。前段落で書いたWeb産業と、あえて挙げるなら(囲碁などの)ゲームAIくらいです。
全面的に「データドリブン意思決定機械」が導入されてるのはこの2つくらいなのです。

しかし今後新たに、公共領域/公共政策領域への応用がどんどん進むと考えられています。具体的には軍事・司法といった、米中などで実用が始まっている領域、そして教育・医療といった領域です。

簡単のため、人々の日常的な健康や医療行為というものに、このデータ機械が適用されたらどんな世界が待っているか、想像してみましょう。

私たちが日々、オフライン世界やオンライン世界で接触するあらゆる導線の中で、どんな行動をとるとBMIをコントロールできるか・どんな行動をとればインフルエンザ/コロナウィルスを予防できるか……
これらを示唆してくれるような推薦のシステムが、オフライン/オンライン世界のあらゆる所に埋め込まれ、私たちの行動を無意識に/意識的に、制御してくれる。そんな世界を想像することができます。

実は、このような世界は既に実現されつつあります。過去数年、AppleやBOSEといった企業が、私たちの目とか耳とか腕などの重要な身体器官をだんだん支配してきてることは、皆さんもお気付きのことと思います。
このようなデバイスを通じて、我々の体で何が起こっているかという情報が生成され、そのデータに基づいて、我々にどのような行動を促すべきかが機械的に(自動的に)決定されているのです。

上のような健康政策へのデータ機械の応用は、近い将来ほぼ全面的に実現するかもしれません。2030年には我々の生活が一変している可能性があります。

ただし、学校や病院といった所謂「お古いシステム」に、こうした政策機械が応用されるには、まだまだハードルが高いように見えます。

このブログの締め括りとして、以下では、こうしたハードルにまつわる現状の問題を提起しようと思います。
大きく2つの壁があると思います。

ひとつ目の壁は、「速度と規模の壁」。
というのも、公共政策は一言でいうと「遅くて小さい」のです。先ほどの米国や日本でのWebビジネスと違い、政策現場では、たかが数千万人の、月/年単位での粗いデータが手に入るのみです。「この政策をやるぞ」と意思決定した後も、実行までのタイムラグが大きいあまり、実行する頃には世界が一変しているかもしれないというリスクがあります。

この壁を乗り越える解決策はほぼ限られており、政策現場のデジタル化に尽きます。

例えば、「一人一台PC政策」といったものです。教育現場がデジタル化されると何が起きるでしょうか?
紙の印刷費が削減されるとか、生徒の近眼が進むかもとか、そういったものは”コトの本質”ではありません。むしろ、「生徒が教科書上の英単語をググった」「生徒が数学の例題の解説を20分も見続けている」「生徒が解説をほぼ読まずすっ飛ばしまくってる」………こうしたデータがリアルタイムで、それも個人単位で蓄積されることで、教科書自体がパーソナライズ(個人に最適化)される、それによって教育内容自体をパーソナライズしていく____こちらの方が”コトの本質”であるように見えるのです。政策現場の早急なデジタル化が待たれるところです。

さて、上のハードルを解決してもなお、またしても大きな壁が立ちはだかります。2つ目の壁は、「やる気・インセンチブの壁」です。

民間のWeb産業関係者は、まず短期的なKPIを回すことを願ってますから、アクセス数や取引総額といった「分かりやすい成果指標」が上がりさえすれば、会社の時価総額にサクッと反映され、皆ハッピーになるでしょう。

しかし公共セクターの事業である「政策」は、そうはいきません。問題の重要性が増せば増すほど、大事な成果指標が何なのか、判定しづらくなります。
更に、たとえ成果指標が存在しても、関係者(政治家/行政官)にとってそのパロメータが重要かどうかには疑問が残ります。なぜなら、成果指標が少し上がった程度で彼らが昇級昇進を重ねるってことは考えづらい(もし違ったらごめんなさい)ですし、メディア取材が幾多も駆けつけるということも恐らくないからです。

良質なデータは、栄養価の高い野菜ジュースのような存在ですが、政策立案の現場は、それ(野菜ジュース)に対して自然な食欲が湧く環境ではないのです。(だから官僚はブラックなのか!違います。)

このハードルを乗り越えることは非常に困難ですが、試しに解決策を3つ提示しようと思います。

1つ目。10年以上同じことを洗脳または教育することで、人々の価値観を変容させることは可能かもしれません。それこそ僕のこの文章なんて洗脳の1つと考えて差し支えな…洗脳はやめにしましょう。
2つ目は「力でねじ伏せる」…暴力反対!やめましょう。そして最後はお金です。

なんて単純なインセンティブ・・と思われるかもしれませんが、政策現場で促進が図られているいわゆる「EBPM」(エビデンスに基づく政策立案)を実現するためのひとつの策は、このEBPM及びそれに付随する研究(データセットやその分析など)を支援する『ヘッジファンド』作りかもしれません。行政やアカデミアと独立した組織を作り、そこに、Web産業のデータ科学者・行政官・あと前沢様のようなお年玉保有者・最後に政府の実行権限、、、これらを注ぎ込み、独立で政策を作らせ、効果を検証させる。

ひとたび効果が検証されれば、その効果の良し悪しにかかわらず、組織内の人々の昇給に繋げてあげる。簡単に言うとこのような組織が必要なのでは?という話です。ちょっと話が込み入ったのでこの辺でやめます。

寄り道だらけの文章に結論を与えるとすれば、デジタル化社会/データ駆動型社会は、すぐそばに来ている(上のGoogle動画)とも言えるし、まだ遥か彼方に佇んでいる(後半部分の公共政策関連の話)とも言えるのです。

これを読んで、少しでも何かしらの興味を持った方がいたら、この上ない喜びです。
ただ、ここまで読んで下さったというだけでもう、感謝というより申し訳ない気持ちしかありません。


最後に

「タイムマシーン3号」の名は、秋元康に似てる方(ボケ担当)の白米消費量が3合だったことに由来します。(画像はこちら

こんな未来の話をすることは時間の浪費です。日々の食生活を充実させましょう。











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