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水面を見つめて
スイミングスクールに通い始めたのは
たぶん5歳くらいで、泳ぐことは好きだった。
夏は田舎に海水浴に連れてもらい、河川敷や川の中洲にはたくさんの"秘密基地"を拵えて、家では毎晩のようにお風呂で潜水大会を開催するような小学生だった。
残念ながら競技人口は1人だった。
そんなことで自ら希望して入校したスイミングスクールも、ルーチンになると途端に嫌気がさした。やらされ感が出ると続かないのは今の今までも変わらないな。
(小学校6年間は引き摺られながらも通ったと思う)
多感な10代の半分を、京都の海辺の街で過ごした。
シーズンを過ぎた海水浴場で黄昏てみたことも、当時の彼女に振られて花火大会の夜に海浜公園までひとりでドライブしたこともあった。対岸から見る小さな花火がなんだかシュールで、これはこれで良くできた青春ドラマだったなと振り返る。
学校の長期休みで地元に戻れば、友人達と折りを合わせて集まるのは、かつてたくさんの"秘密基地"を拵えた河川敷の公園だった。川下から登る初日の出を待ったことも、上流を目指してバイクでダム湖までツーリングに行ったこともあった。
ここまで思い出話をつらつらと並べたが
水辺には何かしらずっと縁があったな、という話
自分以外の人間が自分と同じように一人称視点で"自分"として生きていることが、ずっと不思議だった。自分という意識が五感という境界を通して感じ取る世界が実在することが、ずっと不思議だった。目の前にあるものさえただ漠然と不思議に思うことが尽きない幼少期だった。口癖は"なんで?どうなってるの?"…そういうタイプだからだろうか、一人称視点の自分とは別に、画面の外からコントロールされているような、さもゲームのキャラクターとして操作されているようなもう1人の"自分を俯瞰する自分"が気がついたら存在していた。その場を楽しんでいるはずなのに"なんでこんなことしてるんだろ"とか浮かんでしまうような、それはもうずいぶんと捻くれていた。そんな時分の…たぶん14歳くらいの頃に1枚の絵を見た。
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アトラーニの地下通路(タイトルも作者も知るのはずっと後で)を初めて見た時は、その俯瞰した自分から一人称の自分が引き離されて引き摺り込まれていくような感覚を受けたことを覚えている。それはかつて親しんだプールに沈みながら水面へ浮上する気泡を見上げるような、意識が五感を離れ自分の核と向き合っていくような、朝に目が覚める感覚とも近しかった。
人はそれぞれ、影響を受けるものは異なる。
刺激に対する反応は年齢や背景、その日の気分や天気だって左右するだろう。また、影響を受けたことやそもそも出会ったことさえも、時間の中で忘れてしまうことだってあるだろう。
僕の場合は偶然にもこの作品と4年前の大阪の回顧展を機に再会することができた。(※展示はなかったので図録とかだったはず)
すぐに歌詞の大筋を書いた。
イントロはその時に固まった。
"Trench"はこの絵から着想を得た。
歌詞は文字に起こすにつれて漠然としていた感覚に整理がつき、感覚と言葉は自我を持ち、自ずと語り始めてくれた。自分と向き合うことはその身を大海原へ任せて沈み込んでいくことと似ている…のかもしれない。
"Salvage From A Seabed"
リリースパーティーとして我ながら良いタイトルをつけた…と自画自賛しておく。お呼びさせてもらった白航、Ruby Seaside、Koldwaltz、Neon Clubはどれもサポートアクトというより5マンライブイベントのような心持ち。本当に11月28日が楽しみです。
1stEPは海にまつわるワードが多い。先述したSurface Tensionとは歌詞の心境も、音楽的な展開も、リンクしたり対になるような楽曲になったと思う。
#Nooe #trench #ライブハウス pic.twitter.com/mYhimwdLvG
— Yu (@tspreverse_) October 11, 2022
【Trench】
Dropped into the dark
暗闇に落ちて
I wander as if blind
盲目の様に彷徨う僕には
I need a cane
杖が必要なんだ
It's divided into tracks
線路は別れている
Every option looks so wrong
それはどれも間違ってみえるんだ
Try me...?
試してみなよ
I'll sink too deep inside of me
自分の中の深いところまで沈み込んでいく
I'm not going anyway
'Cause I found a way to be the relay
伝えていく方法を見つけたから
もうどこにもいかないよ
What you can do it's nothing very special
それは特別なことじゃないんだ
I tell myself that I had a good dream
いい夢を見たと言い聞かせて
Still, I need time to receive it
それでも受け取るには時間が必要で
What you can do it's nothing very special
It's inside of me
それは特別なことじゃなくて
自分の中にあるものなんだ
水面を見つめて Yu
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