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嘘吐きが得意なおはなし

よくよく考えてみれば、あれもこれも全部「好き」「私があなたと一緒にいたい」「私だけを見てほしい」ってことだったのかもしれない。

許してくれる?
今更こんな事を思ってしまうことを。

失って初めて気がつくとか、他の人を見つめる目と比べて初めて思い当たるとか、飽きるほどに世界にありふれていることが自分に起こるなんて、思ってもみなかった。

「好きなんじゃないの?」と言われて、なぜそう思われるのかもわからなかったし、恋愛と友情の境界はよく理解していたつもりだったし、自分がそこを超えたつもりも、あなたがそこを超えてきた気もしなかったのだけれど、「ああ、これがそうなのかもしれない」ってさっき思ってしまったの。


本当にどうしてかわからない。

わからないから今心の底から、私の全てが全力で戸惑っているのだけれど、失くしたくなかったものをひとつひとつ思い浮かべるごとに身体の真ん中がぎゅうっとして、痛くなって、鼓動が速くなるの。今は指先が痺れてる。

痺れるからたくさん打ち間違えてしまうのだけれど、どうしてもこの気持ちを外に出してしまいたくて、たくさん消しながら書いてる。
明らかに消してる文字の数の方が多いと思う。
ベッドで横になりながら、膝を丸めてお腹に引き付けて、できるだけ腕が震えないように固定して書いてる。


そう言えばさ、覚えてる?

昔うちに泊まりにきたときに枕がひとつしかないから譲り合いになってさ、お互い譲りすぎて決着つかないからもう枕使うのやめようって言って、結局翌朝2人とも首寝違えてたの。
首が痛くて起きたらあなたも起きててさ、「首痛くない?」って私が聞いたら私と壁の間にあった枕を目瞑ったまま取って、私の頭持ち上げて枕置いてくれたじゃん。あのとき本当に寝違えた首痛かったんだよね、まあまあな勢いで頭持ち上げてくるから。
しかもさ、あなたも首寝違えて痛かったから結局一緒に枕使って二度寝したじゃん?だったら最初から枕使ってればよかったよね。
何やってるんだろうね。

あとあれも頭おかしいなと思ったの。
翌日に枕を買いたいねってなって新宿に行ったのに、途中で入ったゲーセンにちっちゃい枕があったからって、全然使えなさそうなのにやり始めたじゃん。あれなんだったの?
300円で取れたけど一回も使わなかったよね。まだうちにあるけどいらないなら捨てちゃうよ?
捨てていい?もう使わないよね?
私も使わないしさ。


好き。ねえ、好き。好きだった。

今気がついたの。

こんな、こんなに、ここまでどうしょうもないことある?
ずっと「それって好きなんじゃないの?」って言われてきたのを無視して、そんな事ないって意固地になって、私たちにそんなのありえないってずっと信じてきたけど。

なんであんなの私は信じてたんだろうね。
それを信じて何を守りたかったんだろう。
もっと早く認めちゃったらよかったのに。

今更こんなこと言えないし、言ってももっと失くすだけだから言わないけどさ、私、あなたのことずっと好きだったみたい。

曖昧な言い方だけど怒らないでよ、今知ったんだもん。
ずっと気づいてなかったの、知らなかったの。
思いもよらなかったの。

このくらい他人事っぽい方が、むしろ私みたいでしょ。あなたの知ってる私でしょ?

そうなの、あなたの知ってる私、実はあなたのこと好きだったみたい。


知ってた?
知ってたの?
知ってたなら教えてくれたらよかったのに。

もう全部、全部ここで捨てていかなきゃいけなくなっちゃったじゃん。

あなたのせいでいい?


うそ、私のせい。

でも教えてくれなかったから、ふたりのせいってことにしよう。ね。




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