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可視化と共有

こんにちは、Backyardの武内です。
2022年春のリリースに向けて、開発の方が佳境に入ってきており、Backyardのコンセプトやユースケースなどもnote上で今後は積極的に発信していくつもりですので、何卒よろしくお願いいたします。

今回のnoteは「なぜBackyardは業務フロー構築からアプローチしているのか」というところを掘り下げてお伝えします。

1.テクノロジーは脅威ではない

年末年始に『ゼロ・トゥ・ワン』を読み返していました。この本では冒頭のこの一節が有名ですね。

ビジネスに同じ瞬間は二度とない。次のビル・ゲイツがオペレーティング・システムを開発することはない。次のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが検索エンジンを作ることもないはずだ。次のマーク・ザッカーバーグがソーシャル・ネットワークを築くこともないだろう。

『ゼロ・トゥ・ワン』はじめに より

Backyardを開発する前に考えていたのは「これからの時代に最適な業務管理ツールはなんだろう」ということでした。例えばTrelloは紙のポストイットをデジタル上で管理する、という観点が根底にあるツールですが、今から開発するツールにおいて「アナログからデジタル」という観点で作ってもうまくイメージは持てません。

デジタル後進国の日本でも、コロナが大きくデジタル化を後押ししました。私自身がアナログな処理よりもデジタルな処理の方が性に合っていることもあり、自然と「デジタル上で業務をすることを前提とした業務管理ツール」という方向で考え始めました。

人間とコンピュータはどちらが強いというものではない ── まったく別ものなのだ。
(中略)
コンピュータはツールであって、ライバルではない。
(中略)
コンピュータの能力がますます上がっても、コンピュータは人間の代用にはならない ── 人間を補完するのだ。

『ゼロ・トゥ・ワン』12|人間と機械 より

こちらも『ゼロ・トゥ・ワン』からの引用ですが、AIブームやDXブームが一服したところで、日本でも「テクノロジーは脅威ではなく、人間を補完するものだ」という現実的な見方が、受け入れられるようになるのではないかと私は思っています。

私が業務フロー構築や進捗管理に課題を感じていたのは、既存のタスク管理ツールやExcelが単なる記録用紙にしかなっておらず、そこからなんの振り返りも改善も導き出されていない、ということでした。

J-SOXなどもあり、あらゆる業務で処理のログが残され、業務のフローチャートやマニュアルも作られているのですが、それらをすべて人間が管理するというアナログな発想の上に作ってしまったため、テクノロジーの良さがうまく活かされていないのです。

AsanaやTrelloは素晴らしいタスク管理ツールですし、Excelも最高の表計算ソフトです。しかし、私が主戦場としているバックオフィスの業務管理領域においては、いずれもうまくハマっていないように感じていました。

開発するまえに数十社のバックオフィスの方にヒアリングもさせていただきましたが、全員が「頑張って管理しているが、人依存の運用であり、しんどい」と言っていたのが印象的でした。ここには大きなペインが放置されており、テクノロジーを活用してそれらを解決するプロダクトが作れるのではないか、と考えはじめました。

2.デジタル化や自動化は目的ではない

業務効率化というとすぐに「自動化」の方ばかりが注目され、「導入により業務時間○○時間削減!!」とかの宣伝文句が躍りがちですが、それは対処療法であっても、根本的な治療ではないんですよね。

業務設計士というカンバンを掲げて、ここ数年色んな企業の業務効率化の支援をしてきましたが、「やる意味のないことを高速で大量に処理しても生産性はゼロです。まずはゴールや全体像から逆算した際に、どういう風に処理をするべきかを整理して、それと現実とのギャップを分析しましょう。」ということをいつも最初にお話しをさせていただいています。

RPAもiPaaSもAPI連携も、すべて手段の話であって、目的ではありません。どのシステムを使うか、どういう連携をするかの前に現状がどうなっているのかを把握し、どこにボトルネックがあるのかを突き止めるのが先です。プロセスの1工程での効率化が、全体としての効率化には必ずしも寄与するわけではありません。この辺の話は『ザ・ゴール』などを読めば一発で理解できるはずです。

『ザ・ゴール』は製造業の話だと思っている方が時々いらっしゃいます。たしかにTOC(制約条件理論)はトヨタ生産方式を基にして構築されたものですが、その適用範囲は幅広くシリーズ3作目『チェンジ・ザ・ルール』ではERP導入における業務プロセスの最適化(全体最適)がメインのテーマです。20年以上前の作品ですが表面上の「DXブーム」ばかり取り上げられる現代においてこそ、一読の価値がある作品です。

テクノロジーというのは必要条件ではあるが、それだけでは十分ではないんだ。新しいテクノロジーをインストールして、そのメリットを享受するには、それまでの限界を前提にしたルールも変えなければいけない。

『チェンジ・ザ・ルール』より

DXでいうところのX(Transformation)、つまり変革の方の話です。単なるシステム導入の話に成り下がってしまった「残念なDX」では忘れ去られてしまったものです。デジタル化は手段であって目的にはなりえません。

現時点での業務プロセスがなぜか「絶対に正しい」という前提で、それらをテクノロジーを活用して効率化したり、自動化するか、という観点はそもそも間違っています。脱ハンコやペーパーレス化による効果は、手続きが楽になったことだけでなく、これまではアナログな処理にしばられてしまっていた業務プロセスが自由になったことの方が恩恵が大きいのです。

そして、デジタル化においてもう1つ重要なのは、これまでのアナログな処理を前提としていたルールや慣習をゼロベースで再構築することです。それもやらずに「こっちのシステムはこの機能がないからダメ」「こっちのシステムはこの機能がイマイチ」という観点で選定するから誤った選択になるのです。システムも改修を重ねてどんどん複雑になり、オペレーションも複雑になり、まともに運用することができなくなります。

社内規定などを含めて現状のルールは、絶対に維持しなければいけないものではありません。時代に応じて変わっていくのが当然です。デジタル化によって効率化をしたいと思うのであれば、聖域なき改革が必要不可欠です。

『チェンジ・ザ・ルール』は昨今のDXブーム(の失敗事例)と重ねて読むと学びが多い1冊ですので、未読の方はこの機会にぜひ読んでみてください。

3.人UIとアナログからの脱却

さて、開発したいプロダクトについて、デジタル上で業務をすることを前提にした業務管理のためのシステム、という方向性で考え始めましたが、具体的にどのような機能が必要なのかという部分は、この時点ではぼんやりしたままでした。

そこから更にバックオフィスの方々にヒアリングを重ねていったのですが、多くの企業から引き継ぎの問題があがってきました。「引き継ぎのためにドキュメントを準備したり、ミーティングをしたりする負担が重い」、といった意見や、「マニュアルやフローチャートを準備しても、うまく引き継ぎができない」という話です。

また、マネジメント層の方からは「属人化はまずいと思っているが、それらを解消する方法は思いつかないし、目の前のタスクを処理することで精一杯のため、属人化したままいかざるをえない」という意見も多く聞かれました。属人化から脱却したいのにズルズルそのままにしてしまう、という状態です。

また日本においては安い給料で、真面目で優秀な人材をまだ雇えるため、曖昧なルールのもと人間の柔軟性や判断力を前提とした複雑怪奇な運用が山のように放置されています。業務を整理し、運用をシンプルにすれば、システムを活用して遙かに効率をあげることはできるのですが、人を雇えばとりあえず現状のまま運用することはできてしまうため、そのままズルズルといってしまいます。

最近、私の周辺ではこれを「ヒトUI問題」という風に言っているのですが、まだまだ人件費が安いうちは解決は難しいのかもしれません。コロナ禍で強制リモートワークが広がった際には、これを機にアナログとヒトUIの依存から脱却するのではないかと期待しましたが、多くの日本企業ではあっという間に元に戻ってしまいました。

一方でIT業界を中心にこのヒトUI問題からの脱却を念頭に、業務プロセスを再構築し、デジタル化による業務効率化の効果を高めようという動きを加速させており、完全に二極化している印象です。

4.バックオフィス業務の可視化と共有

それらを踏まえて、着目したのが「業務フローの可視化と共有」と「常にアップデートができる仕組みの構築」の部分でした。業務フローを描いて整理するケースはたくさんあるのですが、あくまでもその場限りのものに過ぎないことがほとんどです。

せっかくデジタル上で業務をすることを前提とするなら、業務フローの可視化と共有、そしてアップデートもデジタル上でサクッとできたら、仕事のやり方そのものが大きく変わるのではないか、そんなことを考えました。

この2年間、コロナ禍において世界中の企業がリモートワークを強いられ、遠隔地における継続的なコミュニケーションや業務管理が必要になっており、今後はこれがスタンダードになっていく可能性の方が高いと思っています。

海外の新しいツールを探すのも好きなので、同じような課題解決を目指しているツールがないか探したのですが、ほとんどがプロジェクト管理におけるコミュニケーションや進捗管理などがメインのツールで、バックオフィスのような「何度も繰り返す業務」かつ「型を作りつつ、常にアップデートが必要な業務」領域の課題を解決するようなアプローチのものは見つかりませんでした。

これはもしかして大きなホワイトスペースがあるかもしれない。そういう想いで掘り下げていったものが、Backyardのコアになるアイデアになっています。ヒアリングの中でもこのアイデアについての意見を聞きながら、どんどんとブラッシュアップしていった結果、「業務フローを簡単に作成できる」「業務フロー上で進捗管理が行える」「業務フローを運用しながら、いつでもアップデートができる」という3つの機能に収斂させました。

まだβ版ということで色々と足りない部分も多いのですが、この3つの機能については触っていただいた方々からの反応も良く、デザイン面や権限管理などをしっかりと作り込んだ上で2022年の春にはリリースできそうな目処がたってきました。

5.最後に宣伝

まだ当面はデジタルとヒトのハイブリッドでバックオフィスを運用する必要があるからこそ、運用設計図である業務フローを改めて再構築する必要があります。

2022年3月末まではお試しいただけるβ版ユーザーを募集しておりますので、気になった方はぜひぜひお申し込みください。

現時点でのβ版では「業務フローを簡単に作成して共有する」「業務フロー上で進捗管理をしていく」という部分が主にご体験いただけます。

(追記:β版の募集は終了しております)

ノートの内容が気に入った、ためになったと思ったらサポートいただけると大変嬉しいです。サポートいただいた分はインプット(主に書籍代やセミナー代)に使います。