スタートアップのための効率的なバックオフィス入門講座_20200203

スタートアップのための効率的なバックオフィス入門講座

先日、Lifetime Ventures × Incubate Fund主催の勉強会で講師として登壇してきました。昨年末にリリースしたバックオフィスおまかせサービス「Brownies Works」がシード期〜シリーズAのスタートアップのバックオフィスの課題にぴったりはまりそうだ、ということでLifetime Ventures・木村さんにお声かけいただき、年始にミーティング、その1ヶ月後には勉強会開催というスタートアップ界隈らしいスピード感で開催された勉強会でした。

シード期のスタートアップの方を中心に20名弱お集まりいただき、Sli.doにもどんどん質問があがる熱量の高い勉強会になりました。

当日の様子は別途イベントレポートで公開予定ですが、このnoteはスタートアップがバックオフィスを軽視してはいけない理由について書いていきます。

1.コストセンターではないバックオフィス

バックオフィスは経営学の世界では「コストセンター」として扱われることがほとんどです。収益を生み出さない部門であるため、効率化や自動化、コスト削減が必要不可欠な部門であるというのが、その理由のようです。

あなたが伝統的な製造業のCEOであれば、その考え方も否定はしませんが、もしスタートアップと呼ばれる変化の早い世界でCEOをしているのであれば、バックオフィスを「コストセンター」と考える発想は今すぐに捨てた方がいいでしょう。スタートアップの定義については、BOXILさんの記事を引用します。

スタートアップ企業の特徴として、短期間で急激に成長を遂げるという点があります。また、企業の目的として、これまでに市場に存在しなかった新しいビジネスを掲げていることが多いです。

そしてビジネスは、新しいと言うだけでなく「世の中に新しい価値をプラスし、人びとの役に立つ」物がほとんどです。つまり、「イノベーション」の観点があるか、「社会貢献」を目的にしているかというのがスタートアップ企業と名乗るための条件なのです。
BOXILマガジン「スタートアップ企業とは?ベンチャー企業との違い・意味や定義を徹底解説」より引用)

イノベーションを起こして、社会的な課題を解決するのがスタートアップです。ただし、アイデアに価値はありません。アイデアを形にして、そこからお金や雇用を生み出してこそ価値があるのです。

大企業のように仕事の仕組みがカチッと固まっている場合はバックオフィスは「作業」だけをやっていればいいのかもしれないですが、日々変化するスタートアップにおいては、バックオフィスはこの「アイデアを形にする」ためのチームの大事なメンバーなのです。

業務の種類

ほとんど業務はこの3つに分類可能です。デザイナーは感覚系の割合が多いかもしれませんが、仕組系や作業系の業務もあります。エンジニアもそうですし、バックオフィスももちろんそうです。バックオフィスでは、目に付くのが作業系の仕事が多いだけで、作業だけをしているわけではありません。それが分かっていない経営者が「RPAによって大幅なコスト削減」という詐欺に騙されたり、「バックオフィスは誰にでもできる」などと豪語してバックオフィスの一斉離職をまねいたりするのです。

バックオフィスの人たちを「コストセンター」扱いすると、確実にバックオフィスの人たちから嫌われます。サッカーでディフェンダーやキーパーがいなくても、試合に勝てるでしょうか。イノベーションを起こして社会に影響を与えるためには、一定以上にスケールする必要がありますが、そこに到達するためには経営陣や営業、マーケター、エンジニアだけの力だけでなく、バックオフィスの力も必要不可欠です。

スタートアップはひとつのチームで戦っていることを忘れずに、職種は役割分担に過ぎないことを胸に刻み、会社の屋台骨を支えてくれているバックオフィスに対して、時にはねぎらいの言葉をかけていただきたいものです。

2.シリーズB以降の重み

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スタートアップには「投資ラウンド」(上記の表は起業.tv「シリーズAとは? シードから始まる5つの投資ラウンドを理解しよう【資金調達 基本編】」より)と呼ばれる資金調達のステージがあります。

シード〜シリーズAの調達までのステージでは、アイデアを形にしてこれから顧客を獲得し、ビジネスを作っていく段階です。当然に赤字ですし、組織も未成熟で少数精鋭のチームでとにかくPDCAを回し、ピボットを繰り返し、自分たちのヒットゾーンを見つけなければいけません。

ここまでは「社会にインパクトを与える」「このビジネスには社会的な意義がある」という大義名分があり、創業メンバーがそれなりに優秀なら、勢いだけである程度走り抜けられます。バックオフィスがぐちゃぐちゃでも、経理処理は税理士に丸投げでも、経営陣が経営数値をざっくりとしか把握してなかったとしても。

しかし、シリーズB以降は組織を作り、事業をグロースさせ、EXITに向けて進んでいかなければならないので、そのような大ざっぱな管理体制は許されません。特にIPO準備においては、監査法人や証券会社、東証から「管理体制」をかなりしっかり見られるようになってきており、勢いだけではどうにもなりません。

調達する金額も数億円単位になり、人を雇ったり、オフィスを構えたりする余裕は出てきますが、それにともなって投資家にリターンを返さなければいけない責任も当然に重くなってきます。アイデアや着眼点、プロダクトとしての優劣だけではなく、「ビジネスとして成立させる」「組織を作り、グロースさせる」というステージがシリーズB(ミドル)シリーズC(レイター)です。組織作りができないスタートアップはここで消えます。

このあたりから「IPO準備」という言葉が社内でも飛び交うようになり、急遽バックオフィスの体制を整える必要に迫られるのですが、頭数だけ揃えて、突貫工事のような体制で回そうとすると、バックオフィスが崩壊してしまいます。

IPO準備に耐えるために必要な「月次決算を5営業日で締める」という要求水準は、マンパワーを投下するだけで解決するにはあまりにも高いハードルです。多くのスタートアップではこの段階でゼロからバックオフィスの体制を作り直す必要に迫られます。そして、バックオフィスの再構築は、これまで踏み続けてきたアクセルから足を離し、ブレーキを踏まなければいけないことを意味します。

営業やマーケティングが顧客をどんどん取ってきて、エンジニアがプロダクトを改善し続けても、バックオフィスの体制が整っていなければグロースできないのが現実なのです。バックオフィスの整備を後回しにしていると、ここでツケが回ってきます。

3.SaaSを使いこなせないという現実

「バックオフィス」でも「コストセンター」でも、呼び方はなんでもいいのですが、スタートアップを支える屋台骨として認識した上で、できるだけ初期の段階からこれらを効率的で筋肉質な体制にしておくべき、というのが弊社の考えです。

一昔前なら数千万、数億円をかけて構築しなければいけなかった様々なシステムが、SaaSとして月数千円〜数万円で提供され、創業初期から使えるようになってきました。「エンタープライズの民主化」「ERPのSMBへの解放」などと言われますが、ちょっとした初期費用と安価な月額費用で使い始められるサブスクリプションモデルの恩恵はスタートアップにも及んでいます。

しかし、この恩恵をすべてのスタートアップが有効活用できているわけではありません。システムはツールにすぎないので、それを使いこなすためには、機能の理解は当然ながら、自社のビジネスモデルの理解やシステムの特性に合わせた業務設計が必要不可欠になるからです。

多くのバックオフィスSaaSの広告では「簡単」「自動」などの宣伝文句が躍っていますが、それらは「正しく設定し、正しく使えば」という枕詞が省略されていることを忘れてはいけません。

SmartHRを導入にしたのに、ほとんどの従業員の住所や扶養の情報が入っていないままだったり、freeeを導入したのに、請求書発行時と入金時で二重に売上を計上している、というケースはスタートアップ界隈でもよく見ます。スモールビジネス向けのプランでは最小限のサポートしかありませんので、担当者が自分で理解し、自分で設定し、自分で使いこなさなければ、当然に効果はでないのです。

採用

とはいえ、経営陣がバックオフィス業務に時間を取られているようでは、ビジネスが伸びるはずもないので、バックオフィスをしっかり回してくれる人を採用する必要があります。

スタートアップで働く人たちはだいたいITリテラシーが高いので、一定以上のITリテラシーを求めつつ、バックオフィスの知識や経験、カルチャーマッチ、しかも給料は抑え目だと嬉しいなんて考えてしまいがちですが、そんな求人は出したところ応募はきません。

ITリテラシーやSaaS活用の経験、という部分はある程度諦めて採用しつつ、ゼロから時間をかけて自社のバックオフィス体制を構築していかなければなりません。問題は、そのスピード感で間に合うか、ということです。

4.最初からきちんとバックオフィスを構築しておく

総合力

長々と書いてきましたが、結局言いたいことは、「ビジネスをグロースしたいタイミングでブレーキを踏まなくても済むように、最初からきちんとバックオフィスを構築しておきましょう」に尽きます。しかし、言うは易く行うは難しで、僕も管理部門の中の人をやっていたときにそれができていたかと問われると、反省することしかありません。

バックオフィス人材の採用はますますむずかしくなってきていますし、SaaSを使った効率的なバックオフィス構築が可能になった裏返しとして、バックオフィス人材に求められる要件も高度化しています。

個人的な予測としては、これから数年でバックオフィス人材もエンジニアのように、スキルと経験がある人は市場価値がどんどんあがって高給取りになり、目の前の作業をこなすだけの人はどんどん自動化の波にのまれて仕事がなくなっていく、という二極化が起こるでしょう。

運用力×設計力×ITというスキルを総合的に兼ね備えた人材は本当に貴重です。しかし、こういう人がいなければバックオフィスの効率化ができないのであれば、多くのスタートアップにとってグロースするためのハードルは更にあがってしまうでしょう。僕自身がスタートアップの中にいたという経験から、バックオフィスのところで足踏みをして欲しくないという思いで、昨年末にBrownies Worksというサービスをリリースしました。

当面はシード〜シリーズAのステージで、バックオフィス構築に課題を抱えている企業をターゲットに展開をしていきます。事業がきちんとグロースできた結果、将来的にBrownies Worksから卒業してバックオフィスを内製化していくという判断も、弊社としてはウェルカムに考えています。内製化していくにあたっても、Brownies Worksで構築した業務プロセスやツールの設定はそのまま活用いただけますので、その段階でゼロから再構築するよりも遙かにスムーズにバックオフィスの体制を構築できるようになるはずです。

スタートアップの創業者の方々は、バックオフィスをやるために起業されたわけではないでしょう。ただし、投資家からのお金を預かり、組織を作り、ビジネスをグロースさせるためには、バックオフィスをきちんと構築することは避けて通れない道なのです。

適切なバックオフィス人材を雇うことが難しくなってきたからこそ、Brownies Worksはソリューションとしてバックオフィス構築と運用を一手に引き受け、スタートアップの皆さんがビジネスに注力できる環境を作りたいと考えています。

バックオフィス構築や運用の課題を抱えるスタートアップの皆様。採用や派遣に並ぶ新しい選択肢として、Brownies Worksも検討の土台に載せていただければ幸いです。お気軽にこちらからお問い合わせください。


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