人不足よりもスキル不足の問題を解消したい〜Brownies Worksリリースへの想い〜
本日、識学×子育てのnoteで有名なLoveable・青木さん主宰の「Rihgt hand of CEO」という勉強会で登壇してきました。テーマは「ベンチャー企業のバックオフィス構築」。まさに弊社の得意領域ど真ん中です。
今回のnoteは、この登壇の中で発表した弊社の新サービス「Brownies Works」についての想いを書いてみようと思います。サービスのコンセプト自体は今年の夏ぐらいに思いついたものなのですが、ビジネスモデルとして精緻化して、ようやくリリースの目処がついたため、このタイミングで発表することにしました。
僕はベンチャー界隈が長いので、新しい事業というものはそのビジネスモデルだけでなく、推進者の原体験や想いがしっかり語れる必要があると感じています。こういうシステム作って、こういう顧客に売れば儲かる、という数式だけで構築したビジネスはだいたいうまくいきません。そのビジネスが社会をどのように良くして、更にはそれを自分がやる意味はどこにあるのか、が重要なのです。
ビジネスの本質は、課題解決です。お客様の課題を何らかの方法で解決することで、お金を支払っていただく、というシンプルな関係です。まずはこの「課題」を発見するところが非常に重要になります。そして、この課題は当事者であるほどより具体的で解像度の高いものになります。
僕自身がバックオフィス、特にベンチャーなどのスモールな規模の企業に感じている課題は「人不足」です。単に人不足といっても、そんなの当たり前じゃないか、と言われると思いますが、おそらく一般的な意味での人不足とは少し違った角度での課題感です。まずはそのあたりから話を始めていきましょう。
1.本当に足りないのはスキルがある人材
これからの日本は労働人口が減少し、本格的に人不足になると言われています。よく見るグラフ(こちらは中小企業庁の「中小企業の雇用環境と人手不足の現状 第3章」から拝借しました)ですが、これから先はいわゆる現役世代と呼ばれる労働人口が減少していくことは、誰でも予測ができるほど確実な状況です。
僕は専門家ではないので、このあたりの詳細をこれ以上掘り下げませんが、バックオフィスの採用マーケットでいくと、「いい人がなかなか採れない」という状況が本当にもうどうしようもないぐらいになっています。特に、これから成長していこうとしているベンチャー企業にとっては、ここがボトルネックになりつつあります。
問題はこの「いい人」の意味合いです。
かなり厳しい言い方にはなりますが、ベンチャー企業のような成長スピード速い組織にとって、欲しいのはマンパワー(頭数)ではありません。優秀な人材はそうでない人材に比べて、100倍、もしくは1000倍も生産性に差がつくことがあります。むしろ、優秀ではない人は教育やマネジメントの手間がかかる分だけ、組織全体の生産性を下げます。よって、「優秀な人材しか必要ない」ということになり、それが前述の「いい人がなかなか採れない」という発言につながっていきます。
すべての職種でそうであるかは分かりませんが、バックオフィスにおいては、人材の二極化が進んでいます。その差異がITツール(特にクラウド系の最新のもの)を使いこなせるかどうかです。freeeやSmartHRなど、バックオフィスの業務を根本から変革しようという想いで作られたサービスを前にしたときの反応が二極化しているとも言えます。
これらの新しいツールを否定する人たちは総じてこのような発言をします。
「◯◯という機能がないので使えない」
「なぜここが◯◯という風になっているのか理解できない」
「弊社のやり方は特殊なので、この処理方法には馴染まない」
早い話が、何も変えたくない、このままがいいと言っているのです。もちろん、この人たちは新しいツールについて勉強することも、自分たちのやり方を変えることもしません。自分たちが長年積み重ねてきたやり方こそが正義であり、それを変えようとしているものはすべて悪なのです。
一方で、新しいやり方やツールに対して、積極的に取り入れようとする人たちもいます。この人たちはこのような発言をします。
「この機能を使えば◯◯が一瞬で終わった!サイコー!」
「◯◯の機能はないけど、こうやって工夫すればできた」
「弊社の運用をこれに合わせて大幅に変えたらうまくいった」
目の前の仕事を終わらせるための創意工夫の1つとして、積極的に新しいやり方を取り入れ、ブラッシュアップし、その上で生産性を上げていくという考え方です。何でも変えればいいというわけではありませんが、日々仕事の中に課題を見つけ、それを解決するためになにができるかを考えているのです。
言うまでもなく、「いい人」というのは後者の人材です。現在のバックオフィスには非常に高いITリテラシーが求められていますが、前者の人たちは自分たちのやり方に固執するため、ITリテラシーは当然に高まりません。スマホが登場した際に、「ガラケーで十分だ」と言っているような層です。
前者の人たちが何百人いても生産性はあがりません。決められた作業をこなすだけなのであれば、わざわざ新しい人材を雇う必要はありません。そういう仕事はこれからAIやRPAにどんどん置き換えられていくでしょう。いくら人が足りないと言っても、こういう人材は必要ない、というのが経営者の本音です。新しいものをどんどん取り入れて、バックオフィスそのものを進化させていけるような人材が不足しているのです。
つまり、人不足といっても、現時点で足りないのは「スキルがある人材」であり、そのスキルには当然にITツールを使いこなせて、専門的な知識や経験がある、ということが含まれています。
2.仕事を作業や時間ベースで考える時代は終わった
日本の労働基準法にも大きな問題があると思いますが、仕事というと
・会社(という場所)でやるもの
・就業時間の中でやるもの
・会社から言われたことをやるもの
という意識がまだまだ根強いと思います。
ピカソが30秒で描いた絵に100万ドルの値をつけたという逸話が分かりやすい例ですが、仕事に対する対価とは目の前の仕事にどれだけ時間をかけたかではなく、アウトプットされたものに対して正当に支払われるべきです。ベルトコンベアが流れている工場での単純作業のように、作業時間とアウトプットの関係が正比例していれば話は別ですが、仕事の難易度があがるほどその関係は崩れていきます。
バックオフィスをやったことがない人(経営者に多い)は、バックオフィスは単純作業の寄せ集めで誰でもできると思っているかもしれませんが、それは大きな誤解です。営業やマーケティング、エンジニアリングと同様に高度に専門的な知識とノウハウが必要な非常に専門性の高い仕事です。ただ、一昔前までは紙の資料などが多く、膨大な事務処理をさばく必要があったため、そのような領域に単純作業が発生していました。単純作業はバックオフィスの一部ではありますが、全てではありません。その単純作業が各種システムの発達によって、少しずつ不要になっていき、ようやく本当の意味でのバックオフィスの仕事ができる環境が整ってきた、というのが正しい認識です。
SFAやMA、その他の営業支援ツールが営業やマーケティングを圧倒的に効率化し、オールド営業とは数百倍もの生産性の差を出したように、バックオフィス系の様々なツールを駆使して生産性を上げることができる人材は、オールドバックオフィスとは簡単に数百倍もの生産性の差を出すでしょう。
そのような人材を評価できない組織は、優秀なバックオフィス人材から見限られ、衰退の一途を辿っていきます。「バックオフィスは誰でもできる」と豪語している経営者のみなさん、会社が潰れそうになってから焦っても遅いのです。
3.企業がうまく仕事をアウトソースできていない
slackやzoomなどのコミュニケーションツールが発達し、クラウドソーシングなども当たり前になる中で、優秀なバックオフィス人材はどんどん外に飛び出していくようになりました。
この流れ自体は大賛成ですが、すべての人がそのようなスタイルでうまくいくわけではありません。僕は勝手に「リモート内職」と呼んでいますが、在宅でできる仕事の中でも最も簡単で最も単価の低い単純作業(Excelにひたすら転記など)に従事するしかない、という人も増えています。自分の時間を切り売りし、しかも何のスキルも身につかない仕事というのは、今は良くても将来性はゼロです。いずれはそのような仕事はなくなり、それで生計を立てていた人の仕事もなくなるでしょう。
また、本人が優秀であったとしても、企業にとってバックオフィスを外部に切り出すというのはまだ一般的ではなく、業務の再構築をするスキルも企業側にないため、アウトソーシングする=単純作業の切り出し、になってしまいがちです。これでは、作業を単純に人件費の安いところに付け替えただけで、何の生産性も向上していません。業務改善計画の大半が、実はこのような単なる経費削減施策に留まっており、本質的な意味での改善ができず、優秀な人材の本来の能力を発揮できるような仕事がアウトソーシングされないのも大きな問題です。
僕自身も副業期間も含めて、色んな会社の経理を中心にバックオフィス改善に従事してきましたが、外部から本質的な改善にまではなかなか踏み込めず、ひたすら自分の時間を切り売りするしかない、という経験をたくさんしてきました。
企業側も「どのように仕事を切り出せばいいか」が正直分からないのです。そして、外部人材側も「どのような単位で切り出してもらえばいいか」というのが分からないのです。このミスマッチは、企業内部に業務全体を俯瞰した上で、最適な業務フローを再設計するというスキルをもった人がいない限り解消しません。そこで僕は「リベロ・コンサルティング」という会社を作り、「業務設計」という切り口で、業務とシステムの再構築にフォーカスをあてて活動してきました。
4.結局は人の問題だった
しかし、この1年色々とやってきましたが、うまくいったケースとうまくいかなかったケースの両方がありました。そして、うまくいくケースには前述の社内の改善活動を推進する人がいて、うまくいかないケースはその人が不在だったという結論になりました。僕自身のスキル不足もあるとは思いますが、結局は企業内に改革そのものを強烈に推進してくれる人がいなければ、うまくいきませんでした。これでは「弊社で業務設計をすればうまくいきますよ!」とはとても言えません。
この問題を考えているうちに、うまくいかないケースで頻繁に登場するある場面が思い浮かびました。勝手に「freeeボイコット」と呼んでいるのですが、freeeを導入するということを弊社と経営陣で決めたにもかかわらず、経理を含めたバックオフィスの現場がそれを拒否して、切り替えそのものを遅らせたり、潰したりするというものです。この1年で何社もこのケースに遭遇したので、決して特殊な企業だけの事象ではないでしょう。
「MFクラウドとfreee」のスライドでも書きましたが、freeeはこれまでの日本の会計ソフトとはまったく異なる思想で構築されているため、業務フローを根本から再構築しないとうまくいきません。既存の会計ソフトの延長で見るのではなく、業務そのものを見て経理が処理する以前の業務フローを大幅に変える必要があるのですが、これまで「きたものをひたすら処理する」ことが経理だと思っていた人たちにはそれができません。結果として「freeeボイコット」ということになるのです。
もちろん、これは経営陣の問題でもあります。バックオフィスを大幅に改革すると決めて、freee導入も決めたのですから、それをやらせなければいけません。しかし、今は人不足の時代。バックオフィスに一斉に退職されたら、代わりの人材をすぐに雇える保証はどこにもありません。結果として、現場のストライキが成立し、改革は頓挫してしまうのです。
そこで思いついたが、Brownies Worksでした。まず最初に頭に浮かんだのは三角帽子をかぶった妖精達が、バックオフィスの仕事を夜中に片付けてくれる姿です。現在のバックオフィスの人たちがやってくれなければ、妖精にでも頼もう、というわけです。そういう妖精っていないかな、という風に調べた際に出てきたのが、スコットランド地方の「Brownie(ブラウニー)」という妖精だったので、サービスを「Brownies Works(ブラウニーズ・ワークス)」と名付けました。
中の人たちが抵抗勢力になるのであれば、バックオフィスの機能そのものをまるっと受託できるようなサービスがあればいいんじゃないか、というわけです。中の人たちの状況やスキルに左右されない、ましてや企業の導入ツールにも左右されないサービスを作ろうと考えた結果、「利用ツールの選定、運用フローの構築、運用リソース」すべてのコントロール権をお任せいただくことが最適だと考えました。
5.業務設計が必要不可欠だからBrownies Worksがある
Brownies Worksでは、企業側にはどのようなツールを使うかの選択権がありません。ヒアリングは行いますが、業務フローの設計もすべて弊社主導で行います。また、それらの運用を回すのは弊社自身なので、企業内部の人材に新しいツールや運用に習熟していただく必要はありません。
この仕様で最も重要なのは「業務設計」の部分です。弊社で蓄積してきた業務設計のノウハウをパッケージ化することで、その形でバックオフィス業務をまるっとお任せいただくことができれば、企業内の人材のスキルに依存せずに、バックオフィスが効率化できると考えています。
また、このサービスはバックオフィスをこれから構築しようという企業や、業績拡大に応じてバックオフィスを拡大しなければいけない企業にも非常に有効です。内部人材のスキルやノウハウに左右されないため、早期に効率的なバックオフィスを構築して生産性をあげることができます。
人数が増えてくると色々な社内政治も生じてきますし、色んなパターンを網羅したパッケージが必要になってくるので、まずは50名以下の小さな規模の企業に絞ってサービスを提供することにしました。もちろん、将来的にはIPO準備企業や上場企業などの大きな組織においても、バックオフィス機能ごとまるっとお任せいただけるようなサービスにしたいと思っております。
6.最後にお知らせ
Brownies Worksはまだ準備中のサービスのため、Webサイトも出来上がっておりません。とはいえ、サービスの骨子は固まっており、バックオフィス業務を数社であればお任せいただける体制にはなっております。まずはお話しをお聞きして、弊社側でどのような対応が可能か検討させていただく、というやり取りにはなってしまいますが、現時点でBrownies Worksを導入してみたい、もしくは詳しく話を聞きたい、という企業様がいらっしゃいましたら、代表・武内のTwitterDMもしくはこちらのお問合せフォームからご連絡ください。(スパム対策としてメールアドレスの公開はしたくないため)
また、2020年1月17日(金)17:00〜SmartHR社(六本木グランドタワー)のセミナールームをお借りして、Brownies Works主催で「SaaSによるバックオフィス改革」をテーマにイベントをやります。ゲストはBdashCampのピッチコンテスト優勝のAnyflowさん、受電業務をそのものをなくしてしまうfondeskさん、チーム内で業務を可視化して共有するBizer teamさんの3社の予定です。セミナー終了後、懇親会もあります。こちらの申込みサイトは以下です。前述の通り、Brownies Worksはしばらくは小さな規模の企業さんに特化して提供していくため、バックオフィスに困っているベンチャー企業の中の人にたくさん来ていただけると嬉しいです。
長くなりましたが、Brownies Worksと業務設計のコンサルティングを通じて、この国のバックオフィスをもっともっと良くしていこうと考えておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
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