見出し画像

多様な働き方を実現するために

今回のnoteは、厚生労働省が公表している「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージの話から。

資料PDFは非常に総花的で、文字も多くて相変わらず読みづらいのですが、「多様な働き方の選択を力強く支える」と言及されていることは大きな一歩だといえます。正社員だけに手厚かった各種政策が、時代に合わせて方向転換されていくことは良いことだと思います。


1.多様な働き方とは

多様な働き方とは「働く人すべてがそれぞれのワークライフバランスを追求しながら、自ら望むスタイルで労働すること」を意味します。画一的な環境や労働条件ではなく、一人ひとりの生活事情や価値観を踏まえた、可能な限り柔軟かつ多元的な労働スタイルです。

PASONA BIZ「多様な働き方とは?実践企業の取り組み例とメリットを解説」より

これまでの日本企業といえば、8時間労働、全員出社、残業の半強制などが標準であり、これは企業側の都合が労働者に一方的に押しつけられているものだといえるでしょう。

それに対して多様な働き方を実現するための代表的な制度としては、リモートワークフレックスタイム制があります。厚生労働省が公表する資料に多様な働き方を後押しするような記述もあり、時代はその方向に流れているといえます。

その変化を無視して、「うちは昔からこうだから」という企業は、労働者から段々と見限られていきます。「人手不足」の時代は、企業が労働者から選ばれるのです。

また、終身雇用が維持不可能になった時代にあって、労働者側も制度や文化などが合わない企業で我慢する必要はなくなりました。自分が働いている企業の変化を待つよりも、自分が望む環境を提供してくれる企業へ転職する方が遙かに簡単だからです。

「出社回帰」を打ち出す企業では、転職希望者が増えている、という報道もあります。多様な働き方を認めるかどうか、ではなく、多様な働き方の中でどうやって成果を出せるようにするか、を企業としては考なければいけなくなっているということです。

2.多様な働き方と非同期コミュニケーション

仕事のやり方やコミュニケーションスタイル、社内文化などをそのままに、リモートワークやフレックスタイム制を導入しても絶対にうまくいきません。従来の働き方は、社内制度や仕事の進め方などのあらゆるものが同じ空間・時間を共有すること前提にしてしまっているからです。

例えば「非同期コミュニケーション」を許容しない組織では、多様な働き方はほぼ不可能です。

非同期コミュニケーションとは、2 人が同時に連絡がつくようになっている必要はなく、それぞれが都合のよいタイミングで通信を行うコミュニケーション手段のことです。つまり、非同期メッセージを送るとき、すぐに返事が来ることは想定しません

Asana「非同期コミュニケーションに関する誤解」より

同じ空間・時間を共有しない前提の世界では、発信側は即レスを期待するべきではありません。いつ見るか、いつ返信するかのコントロール権は受信者側にあります。

また日本企業でよくある「偉い人」という考え方もこのコミュニケーションスタイルにはマッチしません。チャット上では役職など意味がないからです。なお、個人的には「役職が上=偉い」という考え方にも違和感があります。役職は単なる役割の話なので、「偉い」と表現することで大きなミスリードをしてしる気がします。

発信者側も「あれどうなった?」「この前の件・・・」とかではなく、非同期コミュニケーションを前提に、いつ・誰が見ても分かるように丁寧に具体的に情報を整理した上で発信することが求められます。

リモートワークやフレックスタイム制を導入する前に、非同期コミュニケーションやドキュメント文化(あらゆることをドキュメントに残す)への移行をしっかりと実施する必要があるのです。

制度を導入するだけでは多様な働き方は実現しません。

3.多様な働き方と生産性

一方で、マネジメント側として「多様な働き方を認めるか否か」を検討する際に重要なのが「それによって生産性への影響はないのか」ということです。

様々な企業が「出社回帰」へと舵を切っている理由は、前述の「非同期コミュニケーション」などの文化や考え方への適応ができていないことも要因の1つではありますが、多様な働き方を認めることによって生産性が落ちるのではないかという懸念をマネジメント側がもっているからでしょう。

生産性とは、労働力や機械設備、原材料などの投入量と、それにより得られる製品・サービスの生産量割合のことです。

RICOH「生産性とは?生産性の種類や生産性を向上させる8つの施策などわかりやすく解説」より
RICOH「生産性とは?生産性の種類や生産性を向上させる8つの施策などわかりやすく解説」より

逆に言えば、生産性が変わらない、もしくは生産性が上がった、という状態が実現できるのであれば、多様な働き方を認めやすくなります。

では、どうやって生産性の向上を実現していくのか。

多くの人が生産性と効率性を混同してしまい、作業時間を短くしたり、自動したりすることで生産性の向上を実現しようとしますが、それは分母である「投入量(Input)」を減らすことであり、アプローチの1つにすぎません。

仕事が早い人とは、作業スピードが速い人ではなく、必要のない作業を見極めて、やめてしまえる人です。 では、どうしたら「必要のない作業」を見極めることができるのでしょうか? ポイントは次の2つです。
ポイント1:「今やろうとしていることは、そもそも目的に対して役に立つのか?」を考える
ポイント2:「今やろうとしていることを、別の手段でラクにできないか?」を考える

羽田康祐「無駄な仕事が全部消える超効率ハック」より

作業を早くするアプローチは、すぐに着手できて、効果もでやすいので、まずはそこから手をつけるという発想は間違いではありません。ただ、それだけだと、すぐに効率化の限界がおとずれます。

キーボードショートカットを駆使したり、VBA、GASなどを用いた自動化などに意味がないとはいいませんが、これらの効率化が全体の生産性に与える影響は実は軽微なのです。

生産性を向上させるための王道は、生産量(Output)をどうやって増やすかであり、処理の高速化や自動化ではありません。具体的には、以下の2つが生産量を増やすために効果が高いです。

①無駄な業務をやめる
成果につながらない業務、やる意味がない業務をどんなに頑張っても、どんなに効率化しても生産性への貢献度はゼロです。無駄な業務をやめて、成果がでる業務に注力しましょう。

②手戻り(やり直し)をなくす
どんなに素早く処理をしても、やり直しになってしまうのであれば、ゆっくりでも確実に処理をしていった方が生産性は高くなります。

マニュアルやフロー図を整備したり、ダブルチェックをするなどのやり方を研ぎ澄ましていっても、この①②を実現することはできません。そこで私が前から重要視しているのが「業務設計」です。

業務設計とは、業務プロセスを細かく分け、業務の手順を最適化することにより、企業のパフォーマンスを向上させるための計画を立てることです。作業をただ効率化するだけではなく、エラーやイレギュラーを想定し、その影響を最小限に抑えられるよう設計をします。

PERSOL「業務設計はなぜ必要?見直しのポイント・フレームワークを紹介」より

家を建てる前に設計図を作るようなものです。業務を行う前にきちんと設計図を作り、検証することが重要です。アインシュタインの有名な言葉にも以下があります。

私は地球を救うために1時間の時間を与えられたとしたら、59分を問題の定義に使い、1分を解決策の策定に使うだろう。
“If I were given one hour to save the planet, I would spend 59 minutes defining the problem and one minute resolving it.”

アインシュタインの言葉

闇雲にやっていあるだけでは、生産性は向上しません。逆に言えば、きちんと業務設計を行った上で改善サイクルを回していくことができれば、多様な働き方の実現と生産性の向上は両立しうるのです。

多様な働き方を実現するために、業務設計スキルを身につける。その結果として生産性も向上し、賃金も上昇する。そういうサイクルを創り出すことができれば、働く側もマネジメント側もハッピーになれるでしょう。

4.業務設計ができるBYARD

BYARDというプロダクトは、タスク管理ツールやプロジェクト管理ツールを創ろうとしていたわけではなく、「業務設計を全員ができるようになるプラットフォームを創ろう」という観点で開発をはじめました。

私の考える業務設計は「設計して終わり」ではありません。設計はあくまでもPDCAの出発点に過ぎず、設計(P)→実行(D)→分析(C)→改善(A)を回すことができる仕組みを構築することそのものが「業務設計」だと考えています。

家や機械などの有体物とは違い、業務には目に見える形がないからこそ、何度でも見直し、修正することが可能であるというメリットがあります。一方で、形がないからこそ仕組みをきちんと作らなければ、いつの間にか当初意図していた通りに機能しない状態に陥ってしまうデメリットもあります。

ある程度の会社規模になると、マネジメント側から見て「属人化」はかなり大きな課題になりますが、当の現場の担当者は「私が把握しているからOK」と思っていたりして、かなりの意識の乖離が見られます。

この状態で「マニュアルをきちんと作れ」「チェックリストをちゃんと運用しろ」と指示を出したところで、その業務を別の担当者が代替できるようには絶対になりません。なぜなら「属人化に対する課題感」が現場にはないからです。

そこでBYARDは、現場の担当者自身にとっても使いやすく、作りやすい業務プラットフォームになることを意識して、機能を開発してきました。

多様な働き方を実現するためにも、属人化は放置することができません。「あの人がいないと分からない業務」があれば、担当者の人はフレックスタイム制で働きにくくなったりもしますし、マネジメント側からしても担当者に何かあったときに対応ができないというリスクを抱えることになります。

BYARDは業務を構造化して、可視化しやすいプラットフォームであると同時に、担当者以外の人が見ても理解しやすい、対応しやすい業務処理の基盤にもなりうるのです。

BYARDのミッションにある「より自由で快適な仕事環境」のためには、フレックスタイム制とリモートワークは欠かせないものであると考えています。多様な働き方を実現するために、個々人のスキルよりも属人化しない業務基盤や業務設計が浸透した職場などの方が大事であり、私たちはBYARDというプロダクトを通じて多様な働き方の実現に貢献していきたいと考えています。

BYARDのご紹介

BYARDはツールを提供するだけでなく、初期の業務設計コンサルティングをしっかり伴走させていただきますので、自社の業務プロセスが確実に可視化され、業務改善をするための土台を早期に整えることができます。
BYARDはマニュアルやフロー図を作るのではなく、「業務を可視化し、業務設計ができる状態を維持する」という価値を提供するツールです。この辺りに課題を抱える皆様、ぜひお気軽にご連絡ください。


ノートの内容が気に入った、ためになったと思ったらサポートいただけると大変嬉しいです。サポートいただいた分はインプット(主に書籍代やセミナー代)に使います。