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Paild:スタートアップの新しい財布

バックオフィスの効率化に大きく貢献するサービスとして前から注目していたPaildが正式ローンチされました。

弊社はモニターとして正式ローンチの少し前から使わせてもらっていますが、オンラインで決済できるというクレジットカードのメリットはそのままに、カード発行や管理画面などのUXを大幅に改善した非常に使い勝手のいいサービスだと感じています。

この領域はまだ新しく「法人向けプリペイド式ウォレットサービス」と言われてもその良さが分からない人も多いかと思いますので、業務効率化という観点からどのように使えるのか、将来的にどういう風に活用することが期待できるのか、という部分を解説してみます。

1.スタートアップはクレカの与信が低すぎる

「カードの限度額超過で広告配信が止まった!」

これはスタートアップのバックオフィスを経験した人なら誰もが一度は通る道ですが、クレジットカードの与信枠が低すぎるため、頻繁にカードが使えなくなります。

現代社会ではオンラインであらゆる手続きができます。Amazonでの備品購入、slackやGsuiteなどのWebサービスの利用、GoogleやFacebookでの広告配信など、すべてが画面上で完結します。クレジットカードの与信枠さえあれば・・・

クレジットカードの与信の仕組みは設立したばかりのスタートアップには非常に厳しく、枠が30〜50万円というのも普通です。少し大きな備品を買うとギリギリですし、広告配信をしようと思うと全く足りません。

多くの場合は、社長個人の信用で枠を付与してくれるAMEXやDINNERSと、前述の小さい枠のVISA/Master/JCBを併用しつつ、常に利用限度額に気を配りながら運用しています。

資金調達後のスタートアップにとって、広告費に数百万円を使うことは珍しくないのですが、クレカの与信枠は銀行残高に応じて増えるわけではないので、月に何度も事前入金などして乗り切っています。

クレジットカードが使えなければ広告も出せず、あらゆるWebサービスも使えなくなります。それだけ重要なインフラなのにもかかわらず、与信の仕組みが旧態依然としたままであるため、多くのスタートアップはここに余計な手間とストレスをかけてきました。

この問題はクレジットカード先進国のアメリカでも変わらないようですが、Brex(ブレックス)というスタートアップ向けのカードが、銀行の残高に応じて与信枠を付与するという仕組みでこれを解決しようとしています。

Paildも着眼点は同じですが、こちらは事前入金のプリペイド式を採用しています。法人向けプリペイドカードはこれまでもありましたし、デビットカードなら銀行残高から直接引き落とすことが可能です。では、Paildの「プリペイド式ウォレット」はなにが画期的なのか、それを説明していきます。

2.クレカは管理コストが高い

クレジットカードは現金のやり取りをせずに対価の支払いができるため、オンライン上の取引にはなくてはならない仕組みです。しかし、与信管理や不正利用を防止する観点から、かなり管理コストが高いサービスになっています。

まず、簡単にクレジットカードを発行することができません。(なぜか)紙の申込書を書かされて、銀行印まで押して、郵送して、約1ヶ月の審査を経て、ようやく発行されるのがクレジットカードです。紛失した際は、カードを止めたり、再発行手続きをしたりと、これまた大変です。

なので、スタートアップでは会社の代表者ぐらいしかクレジットカードを持っておらず、Webサービス系の決済は経理がそのクレジットカード番号を使って決済するという対応をするのが普通です。

クレジットカードの追加発行も結構手間ですし、手数料もかかり、枚数制限もあります。また、カード枚数が増えても総額での与信枠は変わりません。

また、Webサービスなどの決済に限ると欲しいのはカード番号であって、物理的なクレジットカードは金庫に入っていたりもします。1枚のカードで何でも決済すると利用内容の管理が煩雑になるが、目的別にクレジットカードを発行していくと今度はカード自体の管理が煩雑になるという問題が生じます。

また、バックオフィスで最も生産性が低い(頑張っても売上げは増えない)業務の代表格に「経費精算」という業務があります。スタディプラスさんが取り組まれた「経費精算撲滅プロジェクト」などが、その非生産的な業務を頑張るのではなく、いかになくすかという発想です。

この発想を突き詰めれば、「社員全員にクレジットカードを持たせる」というのもひとつの選択肢だと思いますが、前述の通り発行枚数の制限や管理面での煩雑さからこれまでは実現することができませんでした。

Paildの「プリペイド式ウォレット」というサービスの着眼点は、ここにものすごくピッタリはまるサービスだと思っています。

3.従業員のウォレットを管理する

プリペイドカードではなく、プリペイド式ウォレット。

この言葉にPaildのサービスの本質が詰まっています。これまでの多くのプリペイドカードはカード単位で入金管理することしかできませんでした。しかも、Web上でスマートに完結するUXもありませんでした。

それに対して、Paildは会社単位で入金したものを、Webの管理画面でいつでも簡単にカード単位に振り分けることができます。例えば、会社として100万円ウォレットにチャージして、それをカードA 20万円、B 30万円・・・という風に自由に付与できます。

ユースケースとしては、部署ごと、プロジェクトごとのカード発行して、その限度額の範囲内で必要な経費の支払いをしてもらうという使い方になります。物理的なカードが不要であれば、管理画面上でいつでもすぐにカード番号を発行することができます。

これを突き詰めればヤマオカさんが解説されている「取引分類ごとに決済手段(Paildのカード番号)を用意」ということも可能になります。

事前に入金された金額の範囲内でしか使うことができないので、前述の与信枠の問題は生じません。管理画面ですべてのカードの限度額を管理できるので、煩雑な管理をする必要もありません。

2020年10月から施行される改正電子帳簿保存法では、キャッシュレス決済の利用明細を取り込めばそれをそのまま証憑にすることができる、という改正がなされました。例えば、Paildで各スタッフにカードを発行し、その利用明細を経費精算システムに取り込んだ上で、利用者自身が利用内容等を補足するだけで処理を完了させることも可能です。

VISAのネットワークの上で使える電子的な財布。それがPaildの魅力です。上記はほんの一例で、今後API連携などが増えてくれば、まだまだいろんな使い方ができると思います。

ローンチまで相当大変だったようですが、このサービスには無限の可能性があると思っているので、これからも陰ながら応援させてもらおうと思います。

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