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キューバ旅行記④ オールドハバナ 2020.01.21

軽い散歩のつもりが、いつの間にか旧市街を横断していた。
やや雲が多いものの、通りには暖かい日差しが差し込む。観光客向けのバー、土産屋から地元民のためのマーケット、木材加工場やミシンの作業場など、あらゆる建物が雑多に並ぶ。
潮風がどこからともなく音楽を運び、ひとりながらとても愉快な心地になれた。

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昼前に旧市街に見つけたCasaに荷物を移動し、近くのカフェに入る。しばらく通りをぼんやりと眺めたのち、暇そうな店員をつかまえて簡単なスペイン語など教えてもらう、、が。僕の覚えの悪さがどうにもバツが悪く、少し話題を変えてみた。


「ここは寒いね、常夏のイメージがあったけど風があって上着が離せないよ。」
「そうだな。いまは寒い日と暑い日が2,3日ごとに交互にくるよ」
そういう彼も、冬物のレザージャケットのファスナーを上まで上げ切っていた。


日差しこそ暖かいものの、日が陰ったとたんに凍えるほどに寒い。
薄手のダウンに、上からパーカーを羽織ってもまだ寒い。


「キューバは常夏だなんて言って来る奴いるけど、そんなん嘘だからね」
その助言はせめて三日前に聞きたかったよ。


とはいえ、寒さを言い訳に暖かいコーヒーやアルコールを補給しながら歩いていると、時間はあっという間に過ぎていく。気候のこともそうだが、今回の旅は総じて、事前のイメージと異なることや、考えを改めるような場面に遭遇することが多かった。

大きな視点では、経済体制の違いや観光黎明期を迎える国と、人の在り方、それらに紐づく価値観など。都度気が付く部分があり、いずれも長くなるのでまたの機会に譲ることにして、まずもって驚いたことを一つだけ紹介したい。

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「キューバはアメ車が現役自家用車として駆け回ってる、そんなん嘘だからね」
もちろん、まったくいないわけではないのだが、特にハバナだけで言うと体感で3割程度。市内を走るシボレーやキャデラックのオープンカーはほとんどが、ピカピカに磨かれた観光タクシーである。(それはそれですごいんだけど)

多くは、中国車や韓国のKIAの、それも恐らく中古車であろう。
数年前の事情こそわからないが、少なくとも2020年においては、そうしたいわゆるフツーの乗用車が半数を占める。

これには少なからずがっかりしたし、一人で高いお金を払ってピカピカのアメ車に乗るには男らしさが足りず断念した。

今回の旅行にあたっては、事前に様々な旅行記やガイドに目を通したが、どれを見ても、”クラシックカーだらけの国”と言う紹介がなされていた。これは何も嘘ではなく、本当にそうだったのだろう。
オバマ政権(国交正常化前後)のキューバの売り文句は、”これから変わっていく国”だった。ほんの数年で、ハバナの景色も少しずつ変わってきているのかもしれない。


しかし、“現代的な“車だらけなのかと言えばそうではなく、安心と信頼のソ連製、LADAが大健闘である。車種で言えば圧倒的多数派として、カリブの島国を縦横無尽に走り回っている。

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くるくるとハンドルを回して窓を開けると、何よりオイル臭い。
ガタゴトと石畳を走っては、そこかしこで故障している。
そのシンプルな構造から、プラモデル感覚で、路肩で修理される姿も日常茶飯事だ。

のちに、現地で自家用車のLADAに乗せてもらう機会に恵まれた。


「キミより古い車がこの国では現役なんだ」

そう笑うセリフこそ自嘲気味だが、そこにはどこか誇りを感じられた。

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