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私の‘Keto bread’行脚

ケトジェニックダイエット、通称’keto’(日本語の「シーソー」のアクセントで「キートゥ」と英語では呼ぶようだ)と呼ばれる低炭水化物ダイエットをしている人たちにとって、毎食時のパンをどう調達するかというのは小さくない課題だ。コメ、小麦などの穀物類には炭水化物が多く含まれているため、市販のパンを普通に食べてしまうとたちまち基準摂取量を超えてしまうことになるからだ。ケトジェニックダイエットを厳格に守ろうとすると、甘いパンを一つ食べただけで1日の炭水化物摂取量を超えてしまうこともある。

言うまでもなく日本の主食はやはり穀物の白米だが、コメの場合、ただ炊くだけなので材料を変えてみるというような応用は効きにくい。それもあってか、ダイエットではコメの代替品を探すというより、ご飯を食べる量を減らすという選択になることが多いような気がする。白米断ちというような極端な選択をするより栄養バランスを維持しやすいという利点も考えて、ということもあるのかと思う。

さて、そう語った上で、それでもやはり低炭水化物ダイエットをしながらパンを食べたいという人は洋の東西を問わずいるわけで、ネットを覗くと、そういう人たちが’keto bread’と呼ばれる’keto’向けのパン(’パンのようなもの’なのか、あるいは’keto bread’という新しいパンのジャンルなのか)のレシピをネット上で公開、共有し合っているのを目にする。糖尿病になった以上(?)、炭水化物摂取には無関心でいられない私も、keto dietを標榜しているわけではないが、このようなサイトの情報を参考にするようになった。

‘keto bread’のレシピあれこれ

‘keto bread’に共通しているのは、パンの主材料である小麦を他の低炭水化物のものに置き換えるということだ。そして、かなりのバリエーションがあるものの、結局、下のような枠内に収まる「パン」になるようだ。

  1. 小麦粉の代わりにアーモンドパウダーまたはココナッツパウダーを使う。

  2. パンの食感を出すためにイースト、または卵を使う
    イーストを使う場合、1時間ほど発酵時間をとる本格的な作り方と、発酵は狙わず、膨らむことよりもパンらしい風味が加わることを重視して使うという作り方がある。
    卵を使う場合は、黄身、白身丸ごと使う作り方と黄身と白身を分けて使う作り方、また、白身だけしか使わない作り方がある。

  3. その他、ベーキングパウダーと少量の’keto’向け素材が必要
    サイリウムハスク、キサンダンガム、フラックスシードなどというもので、私などには見たことも聞いたこともないものばかりだったが、Amazonを覗くと、なんと全てお手頃な値段で買えることが判明して道がひらけた。しかも配達してくれる!全ての素材はAmazonに通ず!「不思議だが本当だ!」という大昔の少年雑誌の見出しを思い出す。

上のような素材群に水だったり油だったり溶かしバターだったりを加えてこねてまとめて、180℃に熱したオーブンで30分程度焼く、というのがおおよその流れになる。

イーストを使って発酵させるパターンは、膨らんでも市販の食パンのようなサイズにはならないのと時間がかかることから一、二度トライして止めてしまった。結局、卵の白身を泡立ててメレンゲにして生地に塗りこむことで、焼き上がりをふんわりさせる方法に落ち着いた。

レシピに従っていくつかパンを焼いて見た。ラカント、エリスリトールといった血糖値に優しい甘味料を使うオプションの示されているレシピもあったが、私の場合、パンに甘さは求めないので甘味料はあっさり捨てた。生地に加えなかった。ただ、バターはまろやかな風味が加わるような気がして使える場面では積極的に使った。

その結果、ほとんど全てのものに当てはまる感想だが、自分の貧しい(!)過去の経験から似たものとして連想されたのはミスタードーナツのマフィンだった。あれに見た目と食感が似ているものが次々と出現してきた。ただし甘さはない。甘くないミスドのマフィンと言えば想像してもらえるだろうか。あ、マフィンだな、という柔らかい食感があって、次に甘みが口の中に広がってくるのを待つのだが、待っていてもそれはやってこない。甘みを感ずる準備は報われない…当然の結果だが…。そんな感じのものが次々と焼き上がった。

レビューに"eggy”、卵臭いと書かれているものもあり、たしかに、味のついてない卵の匂いのするパンもあったが、概ね評価は高いものが多く、割り切って新しいジャンルのパンと思えば抵抗もなく食べられた。

「甘くないミスドのマフィン」一例

さて、そのように進行していった私のketo bread行脚だったが、’easy’などという謳い文句にも関わらず、私の場合、準備に小一時間はかかるし、さらに焼き上がるまでまた小一時間と、一回でできる4、5日分のパンという成果物と比べて、次第に作業の負担感が大きくなってきた。

もっと簡単にできるレシピはないかと探していくと、‘マグカップに材料を入れて電子レンジで90秒チンするだけ‘という‘90 Sec Keto Mug Bread‘というのを発見。こちらもバリエーションはあるが、いずれもお手軽でスグレモノ。ただし、どれを見ても何ワットで90秒なのか書いてない。当てずっぽうで、検索を続けて見つけた日本人の方の、マグカップで作るダイエットスイーツのレシピサイトにあった600W3分を参考にしてやってみるとうまく出来上がった、よかった。マグカップパンも、繰り返しだが、新しいジャンルのパンと思えば納得の味、確かに簡単だし。

一方、たまたま見つけたこの日本人の方のおからパウダーを使ったマグカップレシピを覗いていて、おからパウダーのもつ並々ならぬ実力を教えられる。糖質は低いし、たんぱく質豊富だし、腹持ちはいいし、三拍子揃っている。サイトにおからパウダーを使ったパンのレシピも載っている。アーモンドパウダーでもココナッツパウダーでもないんだ…。その手があったか!と自分の中の和風DNA(?)も刺激を受けながら早速試作。材料は、おからパウダー、卵、ベーキングパウダー、塩、サイリウムハスク、油、水(ここでも甘味料が紹介されていたが使わなかった)といったものを混ぜて焼くだけ。出来上がりはアンを除いた和風の饅頭の皮のようでもあり、アンを除いたあんぱんの皮のようでもあり、もちもちした食感でどこかしら懐かしい感じのするものだった。これは(!)私の中の和風回帰ベクトルも大いに刺激され、大満足の食感と風味だった。当分はおからパウダーパンで決まりかな…。

お気に入り!おからパウダーパン

かくして、おからパウダーパンを発見して一山越した感を抱いてしまった。長い道のりだったのか短かったのかは分からないが、おからパウダーパンに辿り着いて私のketo bread行脚も一行程終了である。

白米がなくても取り立ててストレスを感じない私は、このようにして得たパンレシピのローテーションを繰り返していくことになるのだろう、時々はまたちょっとレシピ開拓の旅に出ながら。

ちなみに、上で紹介した「パン」は、いずれも一食分当たり(1枚とか1片とか少量だが)糖質1g-3gほどとなっている。

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