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第7回【私が見て来た”仕事ができる”人】 工場長編

今回は、ある会社の中国工場の工場長のお話しを通して、会社のシステム化を成功させた事例をご紹介させて頂きたいと思います。

『極論言えば、ERPに入力必要無い仕事は無駄な仕事や!』

という名言を語ってくださった人が、今回紹介したいこの人。
”仕事ができる人”です。

その前に、基礎知識として「ERP」と「MRP」という仕組みをお話ししておかないと話しが見えないと思うので、少しだけお話しします。

業務基幹システム「ERP」については、【第2回】【第5回】でもお話しさせて頂きましたので、ここでは割愛させて頂き、バックナンバーを参考にして頂ければと思います。

さて、世の中にはいろんな業務系ソフトがありますが、その中で最も導入の難易度が高いとされているのがERPです。

なぜなら、横の部門との連携がしっかりできていないと、ERPの最終目的「MRP」を活用できないからです。

簡単な例を挙げて、MRPを使うメリットをお話しします。

例えば、カレーを作るとしましょう!
カレーの具は、肉、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ...
市販のカレールーには、1パック4皿分とか書いてあって、だいたい

・ジャガイモ 1個
・ニンジン 1/2個
・玉ねぎ 1/2個
とか書いてますよね!?

でも、スーパーで買えるのは最低でも「1個単位」
ニンジン 1/2本、玉ねぎ 1/2個では売ってくれません。
これを業界では、「最小購買数(MOQ)」と言います。
(MOQ=Minimum Order Quantity)

あと、カレーのルーですが、だいたい1パック4分割になってますよね!
もし水を入れ過ぎて味が薄い時は、4分割の1欠片を足したりしますよね!
だから、最低限1パックの欠片ぐらいはストックしておきたいものです。
これを業界では、「安全在庫」と言います。

これらを踏まえて、料理屋さんになったつもりで考えみましょう。

今日はどのぐらい材料を仕入ておけばいいのか?
どのぐらいお客さんが入るか?在庫は足りてるか?
予約は入っているか?

これ、全部、経験と感で注文したりしてたら、買い過ぎちゃったり腐ったりしますよね!
これを業界では、「死蔵在庫」と言います。

これ、会社も工場も同じことです。
「死蔵在庫」は経理上「資産の部」に入りますから、決算上の資産が多いのに、売れない在庫を抱えたまま倒産!
なんてことがあります。

これを防ぐために作られた概念が「MRP」です。
(MRP=Materials Requirements Planning)

売上予測、受注状況、発注状況、在庫状況、更に上記で挙げた「最小購買数」や「安全在庫」などを加味して、コンピュータが必要注文数を自動計算してくれる。
まさに今でいう「AI」の魁です。

で、そのMRPを搭載しているのが、唯一「ERP」というシステムです。

さて、少し前置きが長くなりましたが、ざっくり概念をお解り頂けた方はピンと来たと思います。

つまり、営業も、購買も、製造も...
在庫に関わる全ての部門が、正確に且つリアルタイムで入力しないと、MRPが計算して出した数字は間違った数字になってしまうのです。

逆に言えば、MRPを使いこなす体制を作れれば、会社に無駄が無くなる!

そう解っていても、「部門間の縦割り社会」がある日本の企業では、ERPを導入する難易度は高く、誰かが「縦割り」をぶっ壊さない限りERP導入は成功しません。

それを成し遂げた人が居るんです!
ここから本題に入ります。

某中堅企業の中国工場に、新しい日本人の工場長が赴任して来ました。
着任早々彼は中国工場の現状を一通り把握した所で、私を呼びました。

「今のままでは無駄が多すぎる!ERPを入れたい!協力してくれるか?」と。。。

もちろん協力しましたよ!
私の本業ですから...

しかし、試用段階に入っても、ローカルスタッフは何かにつけて「これができないから使えない!」「システムが悪い!」「使えないシステムだ!」などと言って、なかなか運用まで持って行く事ができません。

いわゆる「反対勢力」の発生です。

するとその工場長、各部門の関係者を全員、大会議室に集めます。
そして、一人一人から、「なぜ使えないか?」を話させます。

【その①】
■営業部員「月次の売上台帳が印刷できないから使えないんです!」
□工場長「なんの為に印刷するんだ?」
■営業部員「経理部に提出しないといけないんです。」
□工場長「おい、経理部!なぜ印刷しなきゃいけないんだ?データでいいだろ?」
■経理部員「会計事務所から提出するよう言われているんです。」
□工場長「会計事務所に、今後はデータで渡します!って交渉しろ!」
■経理部員「はい。わかりました」

【その②】
■製造部員「日報が印刷ができないんです」
□工場長「誰に出す日報だ?」
■製造部員「本社です!」
□工場長「クラウドで本社でもシステム見れるように作っただろう!今後はシステムのデータを直接見ろ!と本社に言っておけ!」
■製造部員「はい。わかりました」

【その③】
■購買部員「業者が注文した数より多く納品してきた時、入荷処理画面でエラーが出て入荷できないんです」
□工場長「当たり前だろ!なぜ注文数より多く入荷しなければならないんだ?」
■購買部員「業者が多めに作っちゃったんです。よくある事なんです」
□工場長「そんなの受け入れてたら、在庫が溜まる一方だろう!?」
■購買部員「でも、次のロットで使えると思うんです」
□工場長「使える確証があるなら、追加オーダー作って受け入れる!それ以外は今後一切受け入れるな!」
■購買部員「はい。わかりました」

一例ですが、まぁこんな感じです。

今度、【第14章】でも紹介しますが、松下電器の「なぜなぜ分析」ってご存知ですか?
要は、あれですよ!

なぜできないのか?→なぜ必要なのか?→なぜこれではダメないのか?
「なぜ」を何度も繰り返して行くうちに、どこに原因があって、どうすれば良いのかが見えてくるんです。

この工場長は、こうして何度も問題が起こる度に社員を集め、「なぜ」を繰り返し、根本的な業務改善をしました。
そして、たった3か月で、ERP導入に成功したのです!

この様に、私はこれまで、こういう「仕事ができる人」を何人も見てきました。
一方で、「仕事ができない人」も何人も見てきました。

こういった観点から、今後も、成功事例や失敗事例をご紹介させて頂こうと思っています。

「仕事ができる人」=「偉い人」とは限りません!

そういう観点から、次回は、同じ【第2章】から、
【テキパキ動く、お客から見ても気持ちいアルバイト】
から、アルバイト学生さんを紹介させて頂こうと思います!

バックナンバーとこれから発信していきたいメニューは↓のページから。https://itshkc.com/blog/post-484/

2022年2月11日
【齋藤社長の情報発信室】より

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