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ジャズとヒップホップ・アーティストが示してくれた思考法

相倉久人氏は、著書『ジャズの歴史』の中で、あらゆる文化現象でも当てはまる、的を得ている指摘をしています。ご紹介します。


仮にだれかひとりの人間がジャズを発明したとしましょう。
それを聴いて自分もやろうと思い立った人間のやり方は、つぎの4パターンに分かれます

1.そっくりそのまま真似る
2.そっくり真似るつもりが、こころざしと違って別のものになる
3.意図的に工夫をこらして変革をこころみる
4.惹かれるけれど真似るのを嫌い、背をむけて別方向(時には反対方向)をめざす。

・・・(中略)・・・
それをひきつぐ第二世代は、4パターンに枝分かれします。
その次世代ジャズが第三世代に引き継がれるときには、それぞれふたたび4パターンの選択肢が、
ということの繰り返しで、またたく間に亜種・変種の数は膨大なものにふくれあがってしまう。

(引用:相倉久人著書「ジャズの歴史」新潮社 P14~16)



そもそも【0→1】のアイデアが、簡単に思い浮かぶはずがありません。

ジャズの歴史は、最初は先人の真似から始まったとしても、意図的に工夫しながら変革を試み、主流とは全く違う方向性でいく天邪鬼がいて、進化していったことを証明してくれています。


新しいモノゴトを創造していくには、まずは、自分が得意とする分野や興味を持っている分野を見つけることが大切です。
その分野を深堀することによって、クリエイティブ発想を生み出す源泉となる、ヒントが見つける近道であると考えています。

自分が見つけ出したヒントを、今のビジネスに活用できないか?応用できないか?という観点で取組姿勢で臨むことが第一歩です。


誰かが新しいことを始めると、必ずと言っていいほど「今よりも悪くなる可能性がある」と現状維持にこだわって反対する『抵抗勢力』が現れます。

しかし、この新しい動きを別の人が真似して、さらに別の人が真似しながら自分流のアレンジを加えて一種のブームとなっていくことで、一大ムーブメントとなって人々の行動変容が起こります。

ジャズの『即興性』は、伝統を活性化させる原動力となることが多く、そこに「意図的な工夫」が加わることで、チームワークでの、イノベーション創出していきます。

自分たちが得意とする分野や興味を持っている分野を深く掘り下げていきながら、リスクを恐れずに、試行錯誤を繰り返し、積極的に行動していくことです。

ジャマイカ系移民の息子であるDJクール・ハークは、父親が持っていたサウンド・システム(野外用の音響設備)を住んでいたアパートの地下の娯楽室に持ち込んで、ジェームス・ブラウンなどのファンク・ミュージックなどのレコードを流しながらのブロックパーティー(非合法的に電気を引っ張り出してブロック(街区)で行うパーティー)を開催していました。

その際、曲のブレイク(間奏などで特にドラムが強調された部分)で盛り上がり、踊り出す連中が多いことに気が付きます。

「このブレイク部分が長く流せたら、もっと盛り上がるんじゃねぇ?」

と考えたハークは、同じレコードを2台のレコード・プレーヤーに乗せてブレイク部分だけを繋ぎあわせて交互に流す方法『メリーゴーランド』を思いつきます。

1973年8月11日に荒廃したニューヨーク・ブロンクス地区で開催された、DJクール・ハークが妹シンディーの学校の制服代を作るために開催したパーティー「Back to School Jam」で、『メリーゴーランド(後の「ブレイク・ビーツ」)』を初めて披露します。

見事にパーティーは大盛り上がり!このブレイクで踊り出す人々をハークは「Bボーイ」「Bガール」と名付け、『ブレイク・ダンス』と呼ばれるようになっていきます。

もともとは、アーティーを盛り上げるMCもハークはやっていたのですが、DJプレイに専念することもあり、友人にMCを任せことで【MC⇒ラップ】が始まっていきます。


✅ 「Bボーイ」「Bガール」が最も盛り上がるニーズを見つけるマーケティング能力
✅ レコード盤もレコード・プレーヤーもメーカーの想定外であった使用方法を見つけ出す発想力
✅ DJとMCの役割分担を行うアレンジ力

この行動力と思考方法は、【クリエイティブ業務】に携わる人にとっては、見本にもなるもの思います。

正に「知識」を「知恵」と「工夫」に瞬時に変換して、様々なものを組み合わせて、新しい価値を創造する彼の『融合力』は、見習うべきです。



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