モダン・ジャズがメジャーシーンから衰退した事実が教えてくれること
1960年代になると ジャズのアメリカ国内でのリスナー離れが急速に進みました
それは ボブ・ディラン ビートルズ ローリング・ストーンズ そしてモータウンが牽引役となったロックやポップスの台頭によって リスナーをジャズから奪っていったのが原因です
このジャズの衰退は「失われた30年」からの脱却できない日本の産業界に似ている気がしませんか?
ジャズの衰退にトドメを刺したのはジャズメン自身?
40年代から60年代初頭までの約20年間 ジャズ界の主流として 音楽シーンを牽引し続けたモダン・ジャズ(ビ・バップ以降のクール・ジャズ ハード・バップなどのジャズの形態の総称のアコースティック・ジャズ)
モダン・ジャズが急速に衰退していった”きっかけ”は ロックやポップスの来襲による外部環境の変化が大きな要因ではあることは間違いないのですが?
✅ ジャズメンが活動の拠点をヨーロッパに移す
ベン・ウェブスター パド・パウエル デクスター・ゴードン といった大御所は ヨーロッパに活動拠点を移しました
『Our Man In Paris(Recorded May 23, 1963)』
Dexter Gordon(ts) Bud Powell(p) Pierre Michelot(b) Kenny Clarke(ds)
アメリカ国内を本拠地にしていたジャズメンも ヨーロッパ各地をツアーで回ることが多かったです(フランス イタリア ドイツ オランダなどのヨーロッパ各国でのツアーを音源とするアルバムが多い)
日本では 1960年になると大物ジャズメンが多数来日して「ジャズ喫茶」を中心としたジャズ・ブームが到来しました
『The Tokyo Blues(Recorded July 13–14, 1962)』
Horace Silver (p) Blue Mitchell(tp) Junior Cook(ts) Gene Taylor(b)Joe Harris(ds)
ジャズメンが活動拠点を移していった背景は ヨーロッパでも人種差別は存在したものの ヨーロッパでジャズメンは「音楽家」「芸術家」として扱われていて 人種差別が ジャズの衰退要因のひとつでしょう
✅ フリージャズのような新しいスタイルを模索
バップ以降のモダン・ジャズのさらなる発展として 60年代に勢力を伸ばしてくる 『フリージャズ』
『フリージャズ』は オーネット・コールマンがドン・チェリーやチャーリー・ヘイデンらとニューヨークの5スポット・ジャズ・クラブでフリー・ジャズを演奏し始め ジャズ界に一大センセーションを巻き起こしました
既成の概念(形式、調性、メロディ、コード進行、リズム、4ビートなど)を否定して 革新的なジャズ『フリージャズ』は 世界中に広がっていきました
しかし『フリージャズ』は 古典的、伝統的ジャズを支持するファン ロックやポップスのファンには「理解できない」「音楽として認められない」とう受け入れられなかったのは事実です
私は『フリージャズ』に該当する難解なジャズは サッパリ理解できないというか?聴きたいと思いません
✅ アコースティック・ジャズでは稼げない
「古臭いもの」に早々に退屈してしまうマイルス・デイヴィス
「ビ・バップ」から「クール・ジャズ」を創造
「クール・ジャズ」がウエストコーストのジャズメンによってエッジ感が薄れてくると よりシンプルでファンキーなスタイルである「ハード・バップ」を創造
「ハード・バップ」というジャンルがマンネリ化してくると コード進行よりも音階(モード)を用いる『モード・ジャズ』を創造
”20世紀のジャズが到達した最高峰”アルバム『Kind of Blue』を制作
「フリー・ジャズ」に最初は否定的であったマイルスでしたが
黄金のクインテットと呼ばれながらも レコードが売れないカルテット
「古臭いもの」に早々に退屈してしまうマイルス・デイヴィスなのですから
モダン・ジャズ(アコースティック・ジャズ)の限界に苛立ちを募らせるのは当然の流れ
1960年代後半に電子楽器と融合による音楽に挑戦していき
エレクトリック・マイルス に生まれ変わっていきました
モダン・ジャズは電子楽器やロックを取り入れられて"フュージョン"として演奏されるようになり 結果的には この”フュージョン”が伝統的なアコースティック・ジャズを衰退させることになっていきました
時代の流れとともに変化するのが当たり前
「ジャズは一番格好良い音楽だったけど ビートルズが現れてから、ジャズは一番じゃなくなった」
これが多くの人の意見と私は思っています
仮に モダン・ジャズ株式会社という企業に下記4つの階層の従業員がいたとします
① 経営陣は 往年のモダン・ジャズメン
② 未取引地域での新規開拓するモダン・ジャズメン
③ 固定観念・既成概念を否定するフリー・ジャズメン
④ 機器もジャンルも”フュージョ”するエレクトリック・ジャズメン
⑤ 理論を学んできた若いジャズメン
①の経営陣ジャズメンは
モダンジャズに拘り続けるのならば
✅ 市場調査 顧客ニーズ調査を徹底的に行う
✅ モダン・ジャズの良さを広めていく活動を積極的に行う
✅ モダン・ジャズメンを育成する活動を積極的に行う
一番大切なのは 自社が置かれた立場を客観的に見て その事実を受け入れることで「誰が悪い」「何が悪い」と犯人捜しをするのではなく 今後の方向性を示す覚悟と決断です
②のジャズメン
未取引地域に合う”やり方”を模索していかなりませんし 異文化と交流することによって 新たな”気づき”が生まれるはずです
③のジャズメン
経営陣と折り合いが悪くなって 自分たちが”やりたいこと”をやるのなら 退職する選択肢しかないでしょう
④のジャズメン
イノベーションを起す従業員です。成功の可否は 経営陣が 経営資源を どこまで投入するか?という覚悟と決断にかかっています
⑤のジャズメン
④のグループに所属できれば 新しい考え方を導入でき活躍も期待できますが 経営陣がモダン・ジャズに拘り続けるのならば 早期に退職する可能性も高いでしょう
モダン・ジャズが衰退した歴史は『脱皮できない蛇は滅びる』
ということを教えてくれた実例なんです
VUCA時代に立ち向かう経営陣に捧ぐ
✅ 「オーバーアナリシス」「オーバープランニング」「オーバーコンプライアンス」は イノベーションの阻害要因
危機状態に陥った時には 直感・直観 に頼っての迅速な行動が必要です
PDCAなんてやってても 無駄に時間が過ぎていくだけです
「やってから考える」「直感を論理に結び付ける」くらいの勇気が必要です
✅ 過去の経験・前例はケーススタディに過ぎない 過去の成功事例に固執することは イノベーションの阻害要因
未来なんて誰も予測できなくて 常にアンテナを各方面に張り巡らせて 環境変化 市場変化 消費者ニーズの変化を迅速に正確にキャッチしながら 系判断を下していく覚悟が必要です
✅ 教えようとする姿勢は止めて 教わろう!一緒に勉強しよう!という考え方に変えること 腐ったプライドは イノベーションの阻害要因
役職というのは組織内での役割であって 偉いわけではありません
「知ったかぶり」ほど格好悪いことはありません
まとめ
モダン・ジャスが衰退していったのは事実です
ファンは明らかに減り ファンの年齢層は高くなっていますが 消滅したわけではありません
商業的に成功しやすい音楽ジャンルではないので アーティストを志す若者が モダン・ジャズというジャンルにこだわっていないので ジャズ人口は減少しています
昨今 モダン・ジャズは多くのシーンでBGMとして使われていますが ここで新しいジャズメンが「儲けられる」仕組みは無いに等しいでしょう
『モダン・ジャズがあったからこそ ヒップホップが創造されていった』
このことも事実です
自社のビジネス 自分のビジネス において閉塞感や先行き不透明感を感じた時にこそ
自社・自分の”当たり前”を疑って 逆説から考え直しことが大切なのでは?
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