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「仕事は我慢して行うべきもの」という間違った”勤勉の精神”が未だ根強く残っているのでは?

【第1話】ハーバード大学の学生に対しての調査:『卒業時、およびその10年後になされた目標設定とその成果』


ハーバード大学MBAは

卒業生が明確な目標と具体的な計画を紙に書き留めているかどうか?

についてアンケート調査した。

【卒業時】

① 84%の卒業生が「とくに明確な目標は設定していないし、紙に書き出していない」
(目標設定=No、紙に書き出している=No)

② 13%の卒業生・・・・「明確な目標は設定しているが、紙に書き残していない」
(目標設定=Yes、紙に書き出している=No)

③ 3%の卒業生・・・・「明確な目標と具体的な計画を設定し、紙に書き残している
(目標設定=Yes、紙に書き出している=Yes)

【10年後】

③の人は、①の10倍の収入を得ていた。

②の人は、①の2倍の収入を得ていた。


個人の目標を掲げることと、その目標を「見える化」することの重要性を訴えている。



【第2話】イソップの寓話『3人のレンガ職人の話』として伝えられている話


中世のヨーロッパで旅人が3人のレンガ職人に出会う。

旅人が『何をしているんですか?』って聞くと

① 1人目は 

『親方の命令でレンガを積んでいるんだよ』 

と面倒くさそうに答えた。

② 2人目は

『レンガを積んで壁をつくっているんだ。大変だが賃金がいいからやっているんだ』 

と答えた。

③ 3人目は

『多くの信者の拠り所となる教会の大聖堂をつくってるんだ。こんな仕事に就けて本当に光栄だよ

と答えた。


「何をしているか」の問いに対する答えから、次のようなことが分かる。

1人目のレンガ職人の目的=特に目的なし

2人目のレンガ職人の目的=生活費を稼ぐこと

3人目のレンガ職人の目的=後世に残る事業に加わり、世の中に貢献すること


この『3人のレンガ職人の話』には「10年の彼らはどうなっていたのか?」という続きがある。

1人目は

相変わらず文句を言いながらレンガを積んでいた。

2人目は

賃金は高いけど危険の伴う屋根の上で仕事をした。

3人目は

現場監督として多くの職人を育て、出来上がった大聖堂には彼の名前がつけられた。


この寓話は

社員が目的をもって仕事をすることで、モチベーションが高まり、良い仕事ができる

という例えとして用いられている。



【第3話】ピーター・ドラッガーの『3人の石工の話』 


3人の石工に何をしているかを聞いた。

① 1人目は

「暮らしを立てている」

と答えた。

② 2人目は

石切りの最高の仕事をしている

と答えた。

③ 3人目は

「教会を建てている」

と答えた。


ドラッガーは

「3人目の男こそマネジメントの人間である。」

と記載している。


1人目は

仕事で何を得ようとしているかを知っていて、事実それを得ている。
一日の報酬に対して一日の仕事をする。

しかし、マネジャーではないし、将来もマネジャーにはなれない。


2人目は

組織においても熟練した技能は不可欠。
高等教育を受けた専門家は、高度な技能によって組織へ貢献する。

しかし、この考え方が『自分は大きなことをしている』と錯覚して、『技能自体が目的になってしまう危険』があると指摘している。



【第1話】【第2話】【第3話】で気がついたこと


“①”に該当する大部分の人は

自分の目標も明確になく、学校卒業後就職して与えられた仕事に従事して、文句言いながらも“生活の糧”と考えているサラリーマンと呼ばれる人だろう。


“②”に該当する人は

専門分野の専門性を追求して、その技術を磨こうとすることは、正しいことではある。

しかし、企業の求めるビジョンや戦略を無視し、自分の都合が良いように会社を利用して技術だけを磨こうとすれば、業務遂行上、いずれ問題を引き起こしかねない。

なぜなれば?

『その人の担当分野は、その人しか分からない』という仕事の存在が生産性の向上を妨げ、無駄を生み出すことが多いからだ。


“③”に該当する人が、“最も働く幸福度が高い”のは明らかだ。

ただし、担当者としては有能なのだろうが、マネジャーとしての能力は未知数である。



この3話ともに、個人側、職人側、つまり社員側の“素養”を課題として書かれている。



“③”に該当する人は、仕事のミッションでありビジョンを理解していが、“①”&“②”に該当する人は理解していなかったわけだ。


社員に対する企業ビジョンの浸透が足りず

ミッションやビジョンを理解している従業員が『三人にひとりしかいない』

とも考えられる。


企業側の社員教育体制や、企業ビジョンに問題があったのかもしれないと、捉えるべき話だろう。



働くことのモチベーションを企業が従業員に対して示すことの重要性を軽視していないか?


ヒエラルキー型日本型経営企業においては、企業として、従業員に対し、企業戦略やビジョンを示すことが、仕事意識の向上や、働くことへのモチベーションに繋がることが、理解できていない経営層が多すぎる。


管理職が率先して職場の問題を解決しているということは“ほとんどない”と言いきっていいだろう。


担当者時代の実務の成果やスキルを評価されて昇格しているケースがほとんど。

リーダーシップがあるから管理職に抜擢されたのではない。

上司への忖度がうまいだけで昇格していることさえある。

管理職になったからといって、マネジメント業務の遂行に関する教育機会はほとんどない。


「テレワーク」の急速な広がりは、「社内調整が仕事」の管理職は“不要”ということを炙り出した。


VUCA時代において、本当に必要なのは 「管理職の育成」


管理者の仕事は、適切な業務を部下に割り当てることだけではない。

『Why』 なぜやるのか?
『How』 どうやるのか?
『What』   何をするのか?

このことで、単調な仕事であったとしても、「意味のある仕事」に捉えてもらうように社員の意識を変えなければならない。


チームとしても目標設定を行う際には

● チームの目標が会社・事業部の目標と連動していて可視化されていること

● 目標が明確に定量的に設定されていて、進捗の測定可能であること

● 目標の達成すべき期日がセットで設定されていて、実行者が明確であること


「巷で流行っているから、我が社の推進しよう」と本質を理解しないまま、最新のシステムなどのツールやメソッドを取り入れるだけで職場の問題は解決できるはずがない


なぜやるのか?

何のためにやるのか?



現場のリーダーである「管理職」が、部下に、仕事に内在する使命(Mission)を実感させ、

どんな成果、顧客や社会の価値創出につながるかを理解、納得してもらうことだが重要だ。



【余談】 『3人のレンガ職人の話』というイソップ寓話は見当たらない?


寓話とは

教訓や風刺を含んだ短い物語のことで、特定の人物や固有名詞などは登場せず、主に擬人化した動物などを主人公にしている。

イソップ寓話とは、イソップという人物が作ったとされる物語を集めた寓話集。

成立したのは紀元前6世紀頃と言われている。

『3人のレンガ職人の話』は

動物を主人公にしていないこと

時代背景を考えると大聖堂や教会は存在しないこと

から、イソップが作ったとは考えにくい。


一方、ドラッカーの『3人の石工の話』は

ロンドンの大火で失われたセントポール聖堂の再建を任された建築家クリストファー・レンが 1671年、実際に工事現場で経験した実話だそうだ。




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