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【1948年創業】私たちが「ダブル焙煎」をしている理由

こんにちは。珈琲焙煎問屋の3代目です。
当店の珈琲は「まろやかな味わい」が特徴なんですが、その味を作り出すために長年やっている、とある「焙煎手法」をご紹介します。

それは「ダブル焙煎」です。これ結構大事です。
きっと皆さんが思っている以上に、珈琲の味に大きな影響を与えます。

ということで今回は、
「ダブル焙煎とはなんぞや?」「なんでそんなことをしてるのか?」をお話したいと思います。

1.ダブル焙煎とは?

ダブル焙煎とは、1つの珈琲を焼き上げるために2回焙煎をすることです。

まず1回目の焙煎では超浅煎りにして一度冷まし、2回目の焙煎をして狙った焙煎度に仕上げます。通常の焙煎よりも火を通す時間が長くなるので、豆の芯まで火が入り、出来上がった珈琲はいわゆる”酸っぱい酸味”の少ない味になります。また味には関係ないのですが、加熱によって豆がしっかりと膨らむため、豆の見栄えが良くなるという特徴もあります。

通常は1回で終わる焙煎をわざわざ2回やるこの方法。時間も手間もかかりますが、当店に焙煎機が導入されて以降およそ60年以上にわたって続けてきた手法です。

2.「賛否両論」意見が分かれるダブル焙煎

一見丁寧な手法に見えるダブル焙煎ですが、実は業界でも賛否の分かれる焙煎手法です。おおまかに意見の分かれるところをご紹介します。

【ダブル焙煎賛成派の意見】
・珈琲の生豆に2度加熱するので、豆の中までしっかり火が通る(豆がきれい)
・酸味や苦味など、角がとれてまろやかな味わいになる(飲みやすい)
【ダブル焙煎反対派の意見】
・行程が増え、光熱費もかかる(コストパフォーマンスが悪い)
・酸味や苦味などの個性がなくなってしまう(没個性)
どちらの考え方も間違いではないと思っています。

3.当店がダブル焙煎を採用している理由

たしかにダブル焙煎は、1回の焙煎(便宜上シングル焙煎と呼ばせてもらいます)よりも、少しおとなしい味になることは私たちも自覚しています。それでも60年以上に渡りダブル焙煎を続けてきた理由が2つあります。

3-1.毎日でも飲みやすい優しい珈琲を作るため

当店は1948年に創業した珈琲焙煎問屋。創業から数年後に焙煎機を導入していますが、当店のベテラン焙煎士(焙煎歴40年)に聞いたところ、彼が入社する前からこのダブル焙煎を続けているようです。

なぜダブル焙煎を始めたのか。

それは当店が喫茶店様などへの卸売業をメインに営んでいることに関係があります。

喫茶店といえば日常の空間。そこで飲む珈琲は毎日の味。毎日飲むものだから、個性の強いものよりもまろやかで飲みやすい珈琲が良い。そんな考えの先に辿り着いた手法がダブル焙煎でした。

私自身も、家業に入って焙煎を覚えましたが、確かにダブル焙煎の珈琲はまろやかで飲みやすく、毎日飲んでも飽きのこない味だなと思います。

3-2.長年ご愛飲いただいているお客様の存在

なぜダブル焙煎を続けているのか。

それは当店の珈琲を長年ご愛飲いただいているお客様の存在があるから。
そして私たちが、自分達の珈琲を「美味しい」と思えるからです。

色んな考え方はあっても、これまで作ってきた珈琲が当店の味であり、お客様が愛してくださっている味です。そんな味に私たちも愛着と自信を持っています。だから私たちはその味を守るためにダブル焙煎を続けてきました。

4.ダブル焙煎をしている豆

 冒頭でも軽く触れましたが、当店でも全ての珈琲をダブル焙煎しているわけではありません。当店ではブラジルやモカなど一部の品種を除き、浅煎り~中煎りの珈琲をダブル焙煎で仕上げています。具体的にはグアテマラ・コロンビア(浅煎りと中煎り)・キリマンジャロ・マンデリン・ブルーマウンテンNo.1がダブル焙煎です。

深煎りの珈琲はダブル焙煎をしなくても、しっかり火が通ります。またブラジルやモカは精製方法が理由で、ダブル焙煎をせずとも飲みやすい味になるためこちらもシングル焙煎をしています。

「毎日飲みたくなる、優しい珈琲をご提供したい」
そのためにダブル焙煎という手法をとっているので、ダブル焙煎をすることが目的ではないということは一応触れておきます。

5.最後に

珈琲は嗜好品です。好みが分かれます。
なので当然当店の珈琲を美味しいと感じない方もいると思います。
それでも当店の珈琲を「美味しい」と言ってくださるお客様が確かにいます。
そして、この味を好きになってくれる方とまだまだ出会えると思っています。
だから私たちは変わらぬ手法をとり、私はそのことを知ってもらうためにこの記事を書きました。

私たちはダブル焙煎を採用しておりますが、決してダブル焙煎が素晴らしいとか、否定するなぞけしからんなどというつもりはありません。あくまで私たちが目指す味を作り出すためにこの手法をとっている、それだけです。私自身、コーヒースタンドやカフェ、コンビニなど、色んな珈琲を飲むことが好きですし、個性が最大限に引き出された珈琲の美味しさを楽しむことも好きで、自分達の珈琲が好きです。

珈琲はとかく情報量の多いアイテムです。だからこそ1つの「正しい」ではなく、色んな「楽しい」を見つけていただけたら嬉しいなと思っています。この記事が、そして私たちの珈琲が、珈琲をより楽しむ1つのきっかけになれれば幸いです。


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