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斉藤さんのオーダーメイドケース

僕はハモンドオルガン、キーボードを演奏するので、ライブなどの楽器の運搬の為のケースが必要だったりする。

僕は割と几帳面なタイプで、楽器に傷がついたりするのを極力避けたいし、故障の原因にもなるので、衝撃からも守りたいと考えている。

ただ、市販のケースが存在しない物、あっても重かったり、価格が高かったりするので、10年ほど前から練馬にある、斉藤ファイバーさんでオーダメイドでケースを作ってもらっている。

数えたところ、10個の楽器のケースを作ってもらった。
どれも丈夫で長持ちで、軽い。

ひとつひとつ職人の斉藤さんが手作りで作ってくれた。
斉藤さんは大柄で、昔はミュージシャンの楽器運びもしていたと言う事で、
とても親身になって相談に乗ってくれた。
僕は楽器を買うたびに、斉藤さんの工房を訪れた。

斉藤さんの工房は環八の近くで、渋滞するエリアなので、
渋滞を避けるために、深夜に行っても作業をされていて、一緒に取っ手の位置や、
収納の仕方などを考えてくれて、息子くらいの歳の僕にも丁寧に接してくれた。

元々はドラムのケースを主に作っている方なので、ドラマーのお客さんが多かったように思うが、僕のような特殊な形状の機材にも、柔軟に対応してくれた。

帰りがけには、「私が生きている間は、無料で修理するから、いつでも来て下さい!」と言ってくれた。

一軍の機材とケース達

つい先日、一番最初に作ってもらったケースの内部が経年劣化で、ボロボロになって来たので、電話で問い合わせて、数年ぶりに工房に訪れた。

対応してくれたのは、斉藤さんの息子さんと思われる方。
顔や体型がそっくりで、喋り方も似ている。

また、かつての工房は無く、新しい住居兼工房になっていた。
修理をしてもらい、お代を支払った後、僕は斉藤さんは元気ですか?と尋ねた。

すると、息子さんは「実は二年前に亡くなったんですよ。突然の事で、コロナと同じ時期で、コロナじゃなかったんですが。」とのこと。

僕は言葉が出なかった。と、同時にもうそんなに長い間工房に来ていなかった事にも驚いた。

帰り際、息子さんに斉藤さんには大変お世話になった事、作ってもらったケースが10個ある事を伝えた。息子さんは跡を継いで、死ぬまでやるとの心強いお言葉をもらい、悲しいけどホッとした。

家に帰ってから、過去の手帳を引っ張り出して、最後に工房に行ったのはいつか調べたところ、七年も経っていた。時間が経つのはあっという間。

斉藤さんが作ってくれたケースは、どこに行っても評判が良いし、一点ものの貴重なケース。デザインも可愛い。

これからも、僕は斉藤さんのケースと共に、体が動かなくなるまで全国を回りたいと思っている。

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