副業を容認している企業が増えてきた
副業によるキャリア形成
2018年の厚生労働省のモデル就業規則の改定を皮切りに、副業を積極的に解禁する企業が増え続けている。2022年6月には厚生労働省は企業に対し、従業員に副業を認める条件などの公表を求める方針と表明した。副業を制限する場合はその理由を含めて開示するよう促している。副業を容認している企業の数は各々の調査会社・アンケートによっても異なるが、大まかに25%の企業が副業を認めている。また、「認めていないが、認めることを検討している」企業もあるため、副業を推進・容認している企業は着実に増加している。
副業を推進・容認している理由として多いのは「社員の収入増につながるため」、ほかにも「個人のスキルアップや人材育成向上につながるため」、「優秀な人材の流出防止」などが見受けられる。つまり、副業が社員の収入増以外にもスキル向上やキャリア形成に役立つとともに、副業希望者が多いことを踏まえ、離職防止や人材の定着に効果があると考える企業が増えているといえる。
副業を認めない企業の理由
しかし、いまだに「認めておらず、検討もしていない」企業もある。なぜ認めようとしないのか。考えられる理由を以下に3つあげる。
①(兼業・副業先との)労働時間通算が困難となるため
②社員の長時間労働の助長につながるため
③(兼業・副業先等での)労働災害への懸念があるため
社員の健康面・管理面を心配しての理由があがるのは当然と思う。副業することで長時間労働による健康被害はありうる話だ。①については、労働基準法では2社で雇用される場合、労働時間が通算される。仮に副業先との労働時間の合計が法律の上限(月80時間、年間720時間等)を超えると、本業の企業責任が問われる。
また、法定労働時間の1日8時間、週40時間を超えると、割増賃金を支払う必要がある。本業の終業後に副業する場合、法的には副業先の負担が大きくなるという問題も抱えている。
これらの課題には本業の所定労働時間(残業抜きの会社の勤務時間)を前提に、通算して法定労働時間または上限規制の範囲内になるように副業先の労働時間を設定する。そして、本業で残業させる必要がある場合は、あらかじめ労働者に連絡して、規制の範囲内におさまるように副業先の労働時間を短縮させる、といった2つの処置をとることで本業の会社は従来通りの労働時間管理をすればよく、もし社員の申告漏れや虚偽申告を行った場合は、副業先での超過労働で上限時間を超えても本業の企業の責任は問われないことにすることができる。企業側に都合のよい考え方ではあるが、労働時間通算の負担は減ることになると考えられる。
②と③については社員にとっても深刻な問題だ。たとえば過重労働で過労死した場合、労災保険の補償が受けられる過労死認定基準は時間外労働が1カ月100時間を超えて働いていた事実が要件になる。だが、この問題については2020年3月に国会で成立した労災保険法の改正で、複数の会社で働き、長時間労働による脳・心臓疾患や精神的疾患や過労死に至った場合、本業と副業先の負荷を総合して労災認定を行い、保険給付を行うことになった。徐々にではあるが制度の改定が進んでいる。
副業容認が増加する
コロナ禍のリモートワークによって働く人の意識も変わり、副業ニーズはこれまで以上に高まっている。従来の時間や場所に縛られた働き方ではなく、リモートワーク中心の自由度の高い働き方を志向し、その中で能力やスキルアップを目指す。その有力な選択肢としてスキルアップと同時に本業だけに頼らない収入を得る副業に挑戦する人が増えていくのだと感じる。
また、企業側もリモートワーク中心の働き方に転換する大手企業も増えている。リモートワークという自由度の高い働き方を認めるということは、結果的に「リモート+副業」という働き方も今後普及していくと予想できる。リモートワーク中心の自由度の高い働き方を認めるということは、結果的に「目に見える成果」に応じて給与を支払うことであり、年功序列の賃金体系が廃れていくことが予想される。日本型雇用システムを象徴する40~50代の「働かないおじさん」や「妖精さん」のように日本の労働者は守られ過ぎてきた。会社に食べさせてもらっている人は生き残れず、成果を出せない人は退社を迫られるということも進行すると考えられる。
多くの企業が副業人材を採用するようになると、中には成果の出せない社員を副業人材に置き換えるという動きが出てきてもおかしくはない。
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