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クリキャベを読むと、回鍋肉を作りたくなる。

発売日(4/5)に、せやま南天さんの『クリームイエローの海と春キャベツのある家』を書店へ買いに行き、先週、子供達の新学期バタバタ週間の隙を見ながらゆっくり読んだ。

オリジナル版のストーリー展開と雰囲気はそのままに、過去エピソードがふんだんに追加されたことで、主人公・津麦のキャラクターが、より人間味豊かになって、とっても満足な読み応えだった。

やって当たり前、地味で面倒、無償の労働――そうやって隅っこへ追いやられてきた家事。この作品では、そんな家事にスポットライトを当てているのが、面白さの1つ。

いったい家事って何だろう。どこまでやれば満足できるんだろう。
育児中の私も、何度も何度も問い続けてきたテーマだ。見返りはない。でもちゃんとやりたい。そこに正解はなくて、誰もが一度はもがく。

物語中では、挫折や喪失を経験した登場人物たちが、家事を介して関わり合い、やがて少しずつ変化していく。みんな年齢もライフステージも様々なのだが、同じように家事に悩んだり、行き詰まったり、試行錯誤している。

私のお気に入りのシーンは、津麦が安富さん(津麦の仕事関係の相談役)と家事について対話を重ねるシーンだ。

安富さんは、具体的な指示やアドバイスはしない。
でも上手に導いてくれて、その導き方がなんとも心地よい。

地味なんです、家事は。
でもその地味な家事がないと生活は立ちゆきません。
生活をどう営んでいくかによって、人は生きやすくも、生きにくくもなるんですよ。(安富さんのセリフ抜粋)

『クリームイエローの海と春キャベツのある家』より

実は読んでいるときに、せやまさんのエッセイで大好きな作品「愛され上司が、一年目の私に教えてくれたこと」がふと蘇った。あの時の上司の方がモデルになっているのかな?――そんな妄想をしながら読むのもまた楽しかった。

そして、この作品を読んでいると春キャベツを買いたくなって、回鍋肉やサンドイッチを作りたくなる。津麦の手掛ける季節感たっぷりなレシピで、自分も春の息吹を満喫したくなる。足元にある、普通の暮らしの幸せをもっともっと噛みしめたくなり、家事が前より楽しくなる。これがいいんだって現状を肯定できるようになる。

夏には夏野菜の手料理とともに、秋にはお手製の秋スイーツとともに、また津麦の物語に会いたい。津麦のお母さんや、安富さん夫婦、織野家のこれからの物語にも会ってみたい。そんな風に思わせてくれる素敵なお話だった。

発売日前後は、春のクリキャベ祭り

発売日前後は、noteをはじめとするSNSで様々な告知や情報が飛び交い、まさに春のクリキャベ祭りという感じで、私もワクワクしながらその様子を見ていた。

書籍の帯には、noterさん達のクリキャベ感想コメントが掲載されている。この斬新なアイデアは、クリキャベ編集日記によるとデザイナーの松昭教さんのアイデアが生かされてのことだという。

素敵なnoterの方々の魅力あふれるコメントの中、どさくさに紛れてなぜか私のコメントも末席に加えて頂けた。
編集者Kさんから、そのご依頼メールを頂いたときは、とても驚いた。と同時に、とても嬉しかった。日本語を意識的に遠ざけていたアメリカで引き込まれるようにして読んで癒されたクリキャベに、そしてnoterのせやま南天さんの作家デビュー作品に、サポーターとしてコメントを載せて頂けるのだから。

編集者Kさんとは何度かやりとりをさせて頂いたが、クリキャベ愛に溢れる、とても丁寧で素敵な方だった。発売時に御本を送ってくださるというので、(書店でも購入する予定だったけれど、せっかくの貴重な機会だったので)お言葉に甘えて一部お送りして頂いた。

noterのぷんさんのイラストがまた素敵で、クリキャベの世界観をとてもうまく表現されている。書店でも目を引いたけれど、郵送して頂いた袋から取り出すとき、まるで春がやってきたと言わんばかりの爽やかさだった。

せやまさんを中心に、編集者Kさん、イラストレーターのぷんさん、デザイナーの松さん、校閲者さん、note運営の方々、様々な素晴らしいチームワークで完成にいたった奇跡のクリキャベが、一人でも多くの方に読んでもらえますように。

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