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砂漠にすむサアラ(作品)

ある大陸の真ん中に砂漠が存在していた。
その砂漠の中心部に、オアシスが存在し、そこには人々が寄り添うように住んでいた。

砂漠を旅して、疲れた旅人たちは、このオアシスに立ち寄り沢山の水や食べ物を飲んだり食べたりして、清潔なベットで寝て、英気を養い、また旅立っていくのだった。

そのオアシスの一角に、宿屋を営む家がありそこには、1人の少女が宿屋の仕事を手伝っていた。

サアラは旅人たちが泊まりに来るのがとても楽しみで、手伝いをしながらも、隙を見ては話しかけてみても大丈夫そうな人に旅の話を聞かせてくれるようせがむのだった。

砂漠の向こうにある、美しい都の話、そこに住む王様の話、今まで一度も見たことのない遠い場所にある海の話など、旅人たちの話は千差万別でサアラは飽きなかった。そして、いつか自分もこのオアシスから旅に出たいと思っていた。

そのサアラが18歳になった時、祖父に
「私もこの年齢になったし、1人で旅に出ます。行く先々で手紙を書くので、心配しないでください。」
と伝えると、彼は前から分かっていた、というような顔をしてうなずき、最後に一つだけ言葉を伝えた。

「たくさんの人や風景や言葉に出逢うだろう、それを忘れずに記憶し手紙を書くように。きっと、サアラの財産になるだろう。」と。

まだ薄暗い中サアラは1人で旅立っていった。
荷物を背負い、胸をどきどきさせながら。

オアシスでは、見たことのない風景や、文化、人々、言葉に驚きと、五感が刺激されるのだった。そして、毎日が興奮冷めやらぬまま眠りにつく日々。

その感じたことを、日々ノートにメモをしていき、帰ってきてからまとめたらなんとも膨大な量になっていたのだ。

サアラが旅から帰ってきたことを知った、友人のリリーは
「そんな長い読み物は、旅日記として本にしてしまえばいいんじゃない?」
と軽く、笑いながら言ってくれた。
サアラは、自分では全く思いつかなかったから、
「そんなこと・・・・・」
と思ったけれど、でも時間はあるしと旅の日記をまとめ、オアシスから遠くにある、本を創っている会社に送ってみた。

そうしたら、なんと!!後日、便せんが届いた。
急いで開けてみると、
「サアラ様、是非一度お会いしてこの旅日記についてお話したいことがあります。」と。

胸を躍らせ、その出版社へ足を運ぶと、担当者のニースという人がサアラの目の前に現れた。
「ようこそ、遠くまでお越しくださいました。実は、あなたが書いた旅日記がとても面白くて、ぜひうちで出版させてもらえないでしょうか?」
というのだ。

サアラは驚くと同時に、
「こんなことはめったにない。売れるかはわからないけれど、世に出るというチャンスにのってみよう。」
と思い、ニースの申し出を受けることにした。

それから、1か月~2カ月の間、お互いに旅日記の修正などのやり取りをしながら、ようやく1冊の本にすることが出来た。そして、オアシスでいつもの宿屋で仕事をしながらも、サアラは本の出版日にハラハラしていた。

「読んでくれる人がいなかったら…・・・・」
「売り上げがゼロだったら・・・・・」
と様々なことを考えてしまった。

それから数週間後、またあの出版社から連絡が入った。
「おめでとうございます!初版にして、新人なのに1万部売れています。素晴らしいです!」

サアラは喜びと共にホッとした。
でも、売り上げがたくさん上がるといいなと思うより、興味を持って読んでくれた人がいることに喜びを覚えた。

その後2版まで行き、なかなかの売り上げと、読者からのお礼のお手紙が来てサアラは一息ついた。次も書きたいかどうかわからない。
が、好きな旅について綴りそのことで喜んでくれる人がいるならまた旅をしたときに旅日記を創ってもいいかもしれないと思った。

また、旅に出て五感を刺激されたことはこんなにも自分に様々なものを与えてくれたのだと改めて感じ入ったのだった。

サアラはまた、次への旅を夢見て日々を過ごすのだった。

おしまい




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