
経営者の仕事は「自己内省」と言い切ってもよい
会社というのは、つくづく経営者の気付きによってしか変わらない。
そう思って私は、時々悲しくなります。
自分が経営していた頃にも痛感していましたが、ビジネスファシリテーターをやるようになって、その悲しみ(経営者が気付かない故に生じる問題)がよく見えるようになりました。
気づいたときには、もう手遅れかもしれない。
知らず知らず、誰かを傷つけたかもしれない。
もっと早く気づいていれば、手を打てたかもしれない。
その悲しみが、つらいのです。
未熟の至りだった30代前半、私は家業の建設会社で意気揚々と会社を改革していました。
2年ほど経った頃、良かれと思って行動したことすべてが、社員の不満しか生んでいないことを知りました。中堅社員数名から正面切って文句をぶちまけられ、自分のはなはだしい無知を思い知ったのです。
なにも知らなかった自分を知らされ、情けなく、役員室でひとり、泣きました。
その時から私は、「自分がなにに気づいていないか」を毎日確認するようになりました。特に社内会議の後は、必ずひとり振り返り。
社員は言いたいことを言えていただろうか。
私は社員の話を聞くことができていただろうか。
私の態度は、威圧的ではなかっただろうか。
信頼に値する経営者に、近づいているだろうか。
ざっくばらんに話してくれるおじさん社員と、定期的に喫茶店で話すようにしました。
耳の痛いことを言ってくれる年上の女性社員からは、現場の社員が会社のことを何と言っているかを、よく教えてもらいました。
そして、私が変わったことで、社員の表情も変化したのです。よく話をし、良い関係性が生まれてきた実感がありました。そうした実感は、売上や利益、事故の少なさという事実によって、確かめることができました。
周囲から気づきをもたらしてもらえるかどうかは、自分のオープンネスにかかっています。
ファシリテーターをやっていると、「第3者の視点で、気づいたことを言ってほしい」と、よく言われます。
その気持ちはよくわかります。言ってもらわないと分からないことも、世の中には存在しますから。
でも、言われて気づくのは背中についたクリーニングのタグくらいで、本質的な課題はどれだけ外野が言っても伝わらないのです。ましてや行動変容は、絶対に起こらない。
言われたことを反芻し、内省を繰り返し、何に気付けるか。
時間がかかっても、痛い思いをしても、自分で気づきを得なければならない。
自分で気づいたことしか、自分は変えられない。
それには、自己内省しかない。
経営者の仕事は、自己内省である。私は、そう言い切れます。
内省をしない経営者が、組織にとっては最大のボトルネックです。
リーダーは、自分がボトルネックであるという悲しみを抱えて、今日もまた自分に向き合わねばならないのです。
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