単なるサイトリニューアルではなく、社内の対話のきっかけにしたかった。 | 株式会社葵建設工業 吉川毅部長・岡本寛美さま × TRUNK
TRUNKのブランディングは、すべてお客さまとの共創によってできあがったものです。課題を解決するための進行過程で得られた気付きや、制作の裏側にあるストーリーをお伝えしていきます。
水戸市を拠点に茨城県内の幅広い建設工事を手がける葵建設工業。2020年のWebサイトリニューアルの際は、コンセプトメイキングのための社内ワークショップの開催など、社員を巻き込んだインナーブランディングに取り組まれました。当時の社内の反応やその後の変化について、広報・採用担当の岡本さんと営業部長の吉川さんにお話を伺いました。
経営デザインという視点から、自社サイトを見直してみたら…。
笹目: Webサイトのリニューアルは随分前から検討されていたそうですが、動きだしたきっかけは何だったのでしょうか?
岡本:情報が古くなっていたので、新しくしないと…と思っていたのですが、ただ見た目を変えるのは違う気がしていました。でも具体的にどうすればいいのかわからず、悶々としながら何年も過ぎていたんです。そんな中、自分の仕事に関する資格取得とともに、外部の方々と交流が広がり、 、私自身が経営デザインについて学ぶ機会があって、 企業がWebサイトにしっかりと理念を掲げ、それを社内に浸透させる大切さを知りました。改めて自社サイトを見直すと、理念は掲載されていましたが、これがどれだけ社員に伝わっているだろうか…と、考えさせられました。 そんな折、笹目さんと経営や企業デザインについてお話する機会があり、そうした意図をわかってくださるなら話が早い!と、ブランディングを含めたご相談をさせていただきました。
笹目:採用上で何らかの必要性があったからかと思っていましたが、そういうきっかけだったんですね。
岡本:はい、もちろんWebサイトはお客様やリクルート向けでもありますが、ここから社内で対話するきっかけがほしかったというのも大きいです。過去にTRUNKさんのお客様で、TRUNKさんとの会社案内制作を通して、社内の対話がとても活性化したというお話を聞き、当社でもそういう取り組みがしたいと思いました。「社内広報」という言葉もありますが、社員の意識改革・モチベーションの向上は、どんな企業においても本来はもっとも時間をかけなければいけないこと。それが目の前の業務に追われ、なかなか、そういう機会をもてていないなと感じました。 スタートする際、社長からは「闇雲に進めても失敗するぞ」と釘を刺されましたが(笑)、やってみなければ改善点も見えてきませんから、まずは動きだすことにしました。
自分の会社について話し合う機会って、意外に少ない。
笹目:社内の対話といえば、まずコンセプトメイキングのために我々がファシリテーターとなり、社内ワークショップを実施しました。さまざまな部署・世代の社員の方に集まっていただき、会社についてお話を伺いましたが、いかがでしたか?
岡本:こうした取り組みは初めてのことで、最初は現場の社員が話してくれるだろうかという不安もありました。でも蓋を開けてみたら、みんなすごく楽しそうで。営業部長の吉川も、若い世代とコミュニケーションができて良かったと言っていました。
吉川:ベテランと若手など、普段なかなか交わらない社員同士の組み合わせだったので新鮮でした。現場ではもちろん業務に関する会話はしますが、改まって「うちの会社ってこうだよね」「会社で掲げている『30年のお付き合い』とは、どういうことなのか」といった話をする機会はなかなかありません。若い世代もここまで考えて仕事をしていたのかと、気づかされることも多かったですね。
笹目:我々としても発見が多かったです。建設というと現場で身体を動かす仕事のイメージがあったのですが、御社の施工管理者の皆さんは、建物の構造がどうなっているかなど「建築」に興味があって入社したという方が多いですよね。業務でも緻密に戦略を立て、先手先手で工事を進めていく。そんな施工管理の本質的な醍醐味に触れることができました。社長にもヒアリングをさせていただき、論理的でとてもスマートな印象があったのですが、そうしたトップの想いが社員の方々にも受け継がれているんだなと実感しました。
「うちの社員、本当にすごい!」と、より自信を持って語れるように。
岡本:広報・採用担当の立場からいうと、会社や社員それぞれの強みを実体験として聴くことができたことが一番の収穫かもしれません。当社は30人規模の中小企業で、私が広報と採用を兼務で10年近く担ってきました。そのなかでずっと不安だったのが、普段、施工に直接携わることがない私がどれくらい現場の仕事を理解し、その魅力を伝えられているのかということ。会社説明会で伝える際も、自分が事実とかけ離れた情報を伝えているのではないか、嘘になってしまっていないか、と感じていました。
でも今回のワークショップを通して、現場の社員が一つひとつの建物にいかに熱い想いを持っているかを自分の耳で聞くことができました。会社の強みの裏付けができたからこそ、「うちの社員、本当にすごいんだよ!」と、これまで以上に実感を持って伝えられるようになったと思います。また、寡黙なメンバーが多いと思っていたのですが、ワークショップでみんないきいきと話していたので、会社説明会などで登壇を依頼することも増えました。
笹目:これまで自分が、しっかり学生に会社のことを伝えなければ、 と思っていたのが、任せて大丈夫だと思えるようになったんですね。
岡本:以前は頼り方がわからなかったのですが、コミュニケーションがより深まったことで、ここは頼っていいんだと判断できるようになったんだと思います。
共創できるパートナーいると仕事がはかどるし、何より楽しい。
笹目:リニューアル後、企業ブログもマメに更新されていますね。
岡本:はい。今回の取り組みを通じて、自社にとって当たり前のことも、じつは外から見たら魅力的なんだということに気づかされて、気負わず自然体でもっと発信していこうと思えるようになりました。お客さまや関連会社さんに配布している紙媒体のニュースレターとの連動企画など、新しい試みも始めるようになりました。
笹目:今後、デザインをどのように活用していきたいですか。
吉川:Webサイトは公開となりましたが、すぐに問い合わせが増えるというより、じわりじわりと浸透してくるものなのかなと思っています。とくにお客様に向けて当社の価値をどう伝えていくか、デザインが担う部分も大きいです。TRUNKさんは我々とは違う視点を持っていて、当社とはまた違う様々な方達とのお付き合いもあるので、その経験からのアドバイスを今後、お願いしたいです。
岡本:社内だけではどうしても見えないものがあるので、そこを手伝ってくれる人がいることは心強いですね。Webサイトもつくって終わりではなく、さらに社内で落とし込み、見直してより良いものにしていく、繰り返しの作業が欠かせません。だからこそ伴走してくれるデザインのパートナーを見つけることはとても大切だと思います。客観的な意見をくれる方がいると、どんどんアイデアも展開しますし、結果的に良い方向に進むと思っています。
笹目:仕事が進めやすくなることは重要ですね。ぜひ御社を見つめる外の視点として、これからも末長くお付き合いさせていただければと思います。今日はありがとうございました。
ライティング|平嶋さやか