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#8 苦難を乗り越えて。

 父の会社が倒産した。会社だけでなく、同時に土地も家も失うことになった。しかし幸いだったのは、クリスチャンの祖父母が亡くなるまで住んでいた家が、近くにそのままあったことだ。

 母ら三姉妹の一番下の妹としてここで共に育った叔母は、結婚し遥か遠く離れた他県の牧師夫人となっている。しかし、幼少期を過ごしたこの土地を愛し、長年維持管理してくれていた。事情を知らせた時には、家族そろっての引越しを快く承諾してくれたのだ。
『みんなが住んでくれたら天国のおじいちゃん・おばあちゃんが喜ぶよ。』
叔母のこの言葉には、本当に救われた。

 会社の土地や建物、そして家までも手放すことになってしまったが、ハンドベルとピアノだけはどうしても諦めることができなかった。めまぐるしく過ぎる日々の中で、これらを何とか持ち出し、母ら三姉妹が育った古い実家へ運んだという。
『おかえり。』
そこでは最も古い住人である『アトランティック』が、母とその家族を静か迎え入れてくれた。

 長年閉ざされていた古い家の扉が開かれた。父と母、後継の姉夫婦と子供たちの新たな生活のはじまりを、祖父母が天国から見守っている。微笑む2人の写真の隣には、少々居ごこち悪そうな(⁈)嫁ぎ先の姑の仏壇を据えさせてもらった。(ハンドベル、ピアノと共に仏壇も引っ越したのだった。置き去りにするわけにも行くまい・・・。)
この見事にミスマッチな光景についても、またいつか皆でにこやかに話せる時が来るであろう。

 『感謝』の心をずっと忘れずにいよう・・・そう心に誓った。

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