見出し画像

激安トランペットはなぜ安いのか

YouTubeで「激安トランペットを吹いてみた」などのタイトルを目にします結論としてみなさん「安くてもそれなりに吹けますね」とおっしゃっるので、多分視聴者は「じゃあ安いやつでいいんじゃね?」と思ってしまう流れになっている気がしてしなりません。

確かに安くてもそれなりに吹ける楽器は結構あります。教室の備品として購入する際にそうした類の楽器を選定したことも何度かあります。有名な楽器屋さんが手掛けている格安楽器も、ちゃんとピストンもスライドもしっかりできています。

では安い楽器とそれなりの楽器では具体的に何が違うのか。

僕の主観ではありますが、共鳴度合いだと思います。

「共鳴」というのは僕の言葉の使い方なので元々の意味とは違うのですが、例えるならトンネルの中で声を出したらワンワン響くあれです。トランペットも、あの管の形の中でそれが発生して、いわゆるトランペットらしいサウンドや響きの深さが生まれています。

音域などが変わっても同じ共鳴をし続けられる安定した楽器は当然音色も安定して聴こえますが、共鳴にムラがある楽器だと、演奏コントロールができるレベルの人(YouTubeでレビューしているような方)の場合、ピッチや音程を(無意識に)補正できてしまうために共鳴にムラが起きて音によって、また音の並びによって鳴ったり鳴らなかったりと不安定に聴こえてしまいます。
多くの人が動画で「(狙えるポイントが)狭い」とか「(いつも使っている楽器に比べて)吹きにくい」と言っているのは、例えるなら不安定な足場を気を遣って歩いているような感覚に陥るからだと思います。

少し話が変わりますが、楽器選定をする際にも、その共鳴、響きについて集中して確認すると、楽器の特性や違いが見えてきます。「吹奏感」のような主観的で表面的な部分だけに着目していても全て同じように感じてしまい、楽器の違いはあまりわかりません。

共鳴にムラがあり、響きが浅い楽器は、狭く響かない部屋で演奏したり、マイクを通したサウンドで確認しても気付きにくいです。しかしホールのステージでは違います。ホールという空間は、ある意味楽器の共鳴をステージから客席へ反射させて届かせるわけですから、響きムラがある楽器の場合、音によって客席への届く割合がかなり変わってしまい、安定した均一な音で演奏を提供するのがかなり難しいのではないか、と想定します。


楽器の価格はここ数年で信じられないスピードで値上がりし、気軽に買えるものではなくなってしまいました。
もしこれからトランペットを始めたい、楽器を購入したい、新しい楽器がほしいと思われた際は、今回お話した共鳴についても意識してほしいですし、それがわかる方に同行してもらって管楽器の専門店で複数台の中から選定されるのが最も安心だと思います。


荻原明(おぎわらあきら)

荻原明(おぎわらあきら)です。記事をご覧いただきありがとうございます。 いただいたサポートは、音楽活動の資金に充てさせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。