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5-8.トリプルタンギング、ダブルタンギング2

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前回からトリプルタンギング、ダブルタンギングについて解説しておりまして、「K」の発音は日常の会話で使うものとは違う「ニセのK」を見つけることが必要である、とお話しました。

詳しくは前回の記事をご覧ください。

そして今回は具体的な練習方法について解説しますが、その前にシングルタンギングを含め、すべてのタンギングを考える上で最も基本的で重要なお話をします。

空気があるから発音ができる

実験してみましょう。空気の流れを一切使わずに、舌の動きだけで「タチツテト」と言ってみてください。舌がペタペタと動くだけで発音できませんよね。今度は無声音でも構いませんので、再び「タチツテト」と言ってみましょう。無意識に舌で空気を溜めている瞬間があることがおわかりいただけたと思います。
よって、トランペットのタンギングも日常の発音同様、「空気の流れがあるから成立する」ことを忘れないようにしてください。発音と空気の圧力は切っても切れない存在なのです。

こんなお話をしている私は、過去にこのシンプルな事実を理解せずにタンギングの練習に励んでいたことがあります。トリプルタンギングが連続するアーバンの変奏曲がどうしても速くできなくて、通学中に「トゥトゥクトゥトゥク…」とひたすら舌を動かしていました(しかも「ク」は口の奥で!)。しかしこの時、空気の流れをほとんど用意せずに舌の力だけで発音していたため、意味のない練習、いやそれ以上にこの行為によって、まるで舌の筋力を一生懸命使うことがタンギングに必要であると思い込んでしまい、いざトランペットで練習する際にも同じように舌を強く使うことばかりを考えてしまったのです。

このような方法で音を出すと、とてもキレイとは言えない、スイカのタネ飛ばしでもするようなペッペッペと浅い音しか出ません。
さらにそれを続けていると、舌の付け根(喉仏の上あたり)が疲れてくるのです。そしてこう考えました。

「疲れてくるのは筋力が不足しているからだ。筋力が不足しているからタンギングが速くできないのだ」

私は昔は超根性主義でした。トランペットを始めた中学生の時に、指導者から「バテは甘え」「バテてからが本番」「バテないために鍛えろ」と本気で言われてきたので、それが根強く残っていたためにこのような発想に陥ったわけです。当然舌は鍛えるものではありません。

では、クオリティの高いタンギングをするためには何が必要なのか。それは人間の舌が元から持っている機能、「柔軟性」を発揮させることです。


早口言葉

みなさん一度は早口言葉にチャレンジしたことがあると思います。早口言葉、得意ですか?
私は別段得意なわけではありませんが、それを棚に上げて言いますと、苦手な方の共通している点は「舌に力をかけている」こと。首や側頭、肩などがギュっと硬くなり、これが舌の柔軟性を阻害している大きな原因です。
一方で、アナウンサーや俳優さんなど喋る仕事をされている方を見ていると、方の力が抜けていて、自然体で、ストレスなく滑舌の良い発音をしていることがわかります。

舌は元々柔軟に動く機能を備えているので、「舌を一生懸命使うぞ!」と敢えて力を込める必要などありません。自然に、自分の体をニュートラルに機能させてあげれば実現するのです。

トランペットを演奏する上で陥りがちなひとつに、「トランペット用の体の使い方」を考えてしまうことが挙げられます。そうではなく「人間の持っている体の機能からトランペットの演奏に適するものを見つけ、バランス良く利用する」と考えるほうが正しいです。
タンギングに関しても同じで、タンギングのクオリティを上げるためには、「舌が最初から持っている機能を十分に発揮できる状態」を理解し、それを利用するべきです。
そして「(今回の場合は)発音、滑舌の機能を発揮するために空気の流れが必要」を忘れないようにします。


具体的な練習方法

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