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第2章-1

千晴:「えー、なんて言ったらいいか…」

夕日:「…」

千晴:「夕日ごめん。」

WC:だいぶ怒っている風に見える。

千晴:「うーん…」

玄:「向こうが嫌だっつーんだからしょうがないんじゃね?」

千晴:「でもさ、引き続き俺らにちょっと調べさせてくれよ。」

玄:「まじか。」

夕日:「…こっちが聞きたいわよ。策はあるんでしょうね?」

千晴:「はっはっは…あるの?玄。」

玄:「ないよ!」

夕日:「もう信じられない…アホだアホだとは思ってたけどほんとにアホだったとは…」

千晴:「そんなに言わないでくれよ…
でもさ、怪異の可能性は感じたぜ。」

玄:「まあ、そりゃ間違いないねえ。ただあそこまで接近してやっとだからな。」

千晴:「もう家に近づくのは難しいけど、その手の話をあたってみるよ。」

夕日:「はいはい期待してるわよ。それで駄目ならあたしもあの太陽プラーナ先生にお願いするわよ。」

千晴:「結局イケメンが好きなのね!」

玄:「プラークじゃなかった?」

千晴:「歯垢じゃん。」

玄:「ぴったり。」

2人:「はっはっは。」

夕日:「うるさい子供じみた切れ方するアホより怪しい大人のほうがマシだっつだけだぁ!」

千晴:「んだよ…」

WC:夕日は、どこからとも無く取り出した小さな石のようなものを弄びながらつぶやく。

夕日:「…この目に賭けて勝ち目があるのかしらねほんとうに…」

玄:「とりえず、憂さ晴らししにいこうぜ。」

千晴:「えー、どこだ?」

夕日:「どこで憂さ晴らしだって?」

玄:「お嬢様のお好みのところで?(笑)」

夕日:「おいしいナポリタンが食べられる喫茶店が良いわねえ。」

千晴:「辛辣。」

玄:「割りとマシなところは駅前にあるらしいよ!」

千晴:「じゃあ、頑張っている店主のいる、まあまあのナポリタンの店にいこうぜ。」

夕日:「今はそれで我慢しておくか…」

玄:「仕入れたばかりの新鮮な食材で頑張らせて頂く!」

千晴:「おれが金だすから ターンとおたべ。」

玄:「お?お前マジいいやつだよなあ。」

夕日:「良いわよ奢られてあげましょう。玄ちゃんも好きなもの頼むと良いわよ。」

玄:「それはどうも(笑)。」
では車を走らせ、お店に移動します。

千晴:うーむ、どのくらいもつんだろうな、まこちゃん…

WC:そういうことを調べるチャンスを失ったばっかりだ(笑)。

千晴:はっはっは!

WC:時間は午後3時過ぎ。夕日は今日は一緒に行動するつもりのようだ。

千晴:「じゃあ、夕日、さっきの話を聞きに行くところが有るんだけど、一緒にいく?」

夕日:「どこ?遠いの?」

玄:「いや、すぐすぐ。」

と、連れ立って向かったのは、JR珠間駅南口から歩いて7分。
ごちゃごちゃした雑居ビルの一階にある骨董薬種雑貨店「山海堂」である。
珠間市を舞台にした過去のM-0プレイにおいて、しばしば登場している、イサリ御用達の店が「山海堂」である。
特殊な道具を扱っており、店主の知識も豊富なため、買い物に情報収集にと、PCたちがしばしば訪れていた。

玄:「こんちわー!」

店主:「あい、いらっしゃーい。」

WC:雑然と売り物が積み上げられた店内の、狭い通路の突き当たり。小さなカウンターに、安っぽいTシャツにどてらを羽織った豪奢な銀髪の美人がもたれかかっている。

店主:「お、若い子が彼女連れてきた。お盛んだねー。おじさんハッスルしちゃうぞ。うへへー。」

玄:「いやあ、お恥ずかしい。盛ってないっすよ(笑)。」

夕日:「あ、どうもこんにちは。盛られてないですご心配なく。」

玄:「えと、彼女は友人の夕日です。」

店主:「夕日ちゃん?どうもあたし雪さん。よろ~。」

雪さん
山海堂の店主。
年齢不詳の美人であるが、性格は残念。これまでに千晴と玄の会話の中で登場した「有識者」とは、彼女のこと。

玄:「雪さんです(笑)。」

夕日:「あ、はいよろしくお願いします。」

千晴:「あ、雪さんお邪魔します。」

玄:「あ、雪さん。良い豆が入ったんでおすそ分け。」

雪:「あらどうも。アフリカン?」

千晴:「はやりですか、それ?(笑)」

玄:「おしい、メキシカンです。」

雪:「くっくっく。黄金色のコーヒー豆か。おぬしもワルよのう。」

玄:「お代官様、そんなご無体な(笑)。」

千晴:「さ、本題に入ろうぜ。」

雪:「そうだな。人はなぜ生きるのか、だったか。」

玄:「死にたくないから。だったかな。」

千晴:「そんなだいそれた話じゃないっす。」

雪:「7日後に降臨する地球を食い尽くす化け物対策の話じゃな。」

玄:「そんなこと俺達に言われても…(笑)」

夕日:「…このひと大丈夫なんでしょうね?」

千晴:「ほら、置いてけぼりのひとがここに。」

玄:「でね雪さん、何か知ってたら教えて欲しいんですが…
(ことの経緯を話す)
…とまあ、そんな怪異の話って出てたりします?」

雪:「あはぁん…ぶっちゃっけぇ…その類の怪異ってよくあるから特定はできないわさ。」

玄:「あらら。他にも同じように寄生?してる、ってとこから別ルートで辿れないってことっすね。」

雪:「てか、こないだ久々里で超大規模の退魔が行われてねえ。」

玄:「ほう。」

千晴:「こないだって?どのくらい前ですか?」

雪:「2~3日前。感じなかった?なんかすっごい霊力の乱れ。」

千晴:「いや、2日前なら、うちら戦ってますよ。狐と犬。
その報告にも来たんですけどね。」

雪:「おおそうか。やっつけた?」

千晴:「一応、なんとかってやつです。雪さんに勧められた形代のお陰で助かりました。」

玄:「あれはきつかったね、色々と…」

雪:「そーかそーか。んじゃ、GRSって会社が八王子にあるから、そこに請求書回しておくと良いよ。」

<GRS>
Geonicray Research Service。
表向きは、都市環境の調査を行う会社。都市環境の改善事業として怪異の調査対策を行う部署がある。

玄:おお。

雪:「今回あいつらがヘマやって被害拡大してたみたいだから。」

玄:「ひどいな(笑)。」

千晴:「あれま。超大規模って、いろんなところで起きたんすか?」

雪:「久々里が中心だったんだけど、まあなんというか、封じる相手の怪異が、混沌の…あー、世界規模の災厄の発生点になりうるやつでね。」

玄:「下手打ったどころじゃないな(笑)。」

千晴:「げげ、そんな大事件が。」

雪:「まー色々あって結局民間の能力者の力まで借りて事態を収束させたみたいだけど…君らが出っくわしたみたいな怪異の余波があってね。
そういうわけで吹っかけとくと良いよ。」

玄:「心得た。」

千晴:「情報ありがとうございます。」

雪:「で本題なんだけど、その、根本となった怪異が少し前から活動してたせいで、この辺乱れに乱れてんのよ。色々。
特に、世界中から妙な確率で集まってくる魔術具がやばい。」

千晴:「魔術具?」

雪:「ここ3ヶ月で神話級の術具が4つも回収されてんの、この一帯で。運命干渉とか、気候制御とかできるようなやつがね。」

千晴:「えー!!」

玄:「可怪しいでしょ…」

千晴:「そういうのって、普通の人がもてるんですか?」

雪:「まあ神話の英雄級の霊力がないと、使った人間即あの世行きだから大事にはなってないけどさ。まだ。」

玄:「ろくでもないことになるなあ…」

雪:「ただ、普通の人間が手に入れられるもんかって言うとすごい確率になるよね。バスチアンが<赤がね色の円環の書>を手に入れるくらいの確率。」

千晴:「神話級で無いやつは、もしかしてもっといっぱい出まわってます?」

雪:「そうね。弱いのは、起こす問題も弱いから回収に至ってないものが多いと思うけど。」

千晴:「うーん…なんで出まわるようになったんだろうな…」

雪:「それがわかってたら対処してるわさ。」

千晴:「武器商人?…でも、武器とは限らないよな…」

雪:「術具? そりゃそうよ。<ディアンケヒトの手袋>とか、老君の<金剛琢>とか、強力でも武器じゃないものはたくさんあるし。」

千晴:「それ回収したら、どこかに持っていったほうがいいですかね?」

雪:「GRSか、あたしんとこか…ものによったらあたしんとこでも手に余るけど。まあとりあえず海に捨てるってのが早いと思うわよ。火山の火口までは捨てにいけないでしょ?いとしいしと。」

千晴:「了解(笑)。」

夕日:「…本当に、こういう世界があるんだね…あ、ごめん変な口挟んで。ちょっと、話聞いてたら妙に現実感がわいてきちゃって。」

千晴:「うぇるかむ・あんだー・ぐらうんど(2ch)」

玄:「違うだろ(笑)。まあ、普通そういうもんだよ。」

雪:「んでまあ、君らの言ったような怪異レベルの…なんつーか、『ありふれた』怪異は、ちょっと特定できるような状況じゃないわけだわさ。
…とりあえずそんな感じ? なんか買ってく?」

千晴:「買ってきますよ。これと、これと…
そうだ!こういう道具で、外からの怪異が干渉してるなら、それを妨害できたりしないかと…」

雪:「干渉妨害は…
たとえば寝付いてる原因が怪異の術ならできるかもしれないけど、あくまで精気の流出だろー?精気の流出を止めるのは無理だなー。」

千晴:「根底を断つしか無いか…どこに流れてるかわかればな…」

雪:「そうなるねえ。」

夕日:「というと、どこにその精気とやら流れているかを突き止める必要があって…で、2人がやろうとしてた身辺および素行調査なわけか。1歩目はだいなしだったけども。」

千晴:「ほんとごめん。」

夕日:「いいよ。2歩目で挽回に期待。」

玄:「あ、そうだ。イサリにこんな人いたりしません?」

千晴:「あー…」

玄:髪を染め分けたイケメンプラーナの説明します。

千晴:「イケメンプランナー。」

玄:「女優と結婚してすぐ離婚しそうだな。」

雪:「やーしらんなー。つってもあたしそんなに顔広いわけじゃないしなー。ごらんのとおりひっきーだし、基本受け身だし?」

玄:「いやあ、それでも雪さんより広い人もそうそう…」

WC:雪の人脈は、基本「ミギワに入ってヲトナイと関わる能力者」または「GRSのような公共能力者」に限られるので、少なくともそういう類ではないということになる。

玄:なるほど。

WC:能力者ではなく、一般のペテン師だった場合はかすりもしない可能性もあるし。

千晴:そっちのほうが高そう。雰囲気。

玄:そこはそうだね。そこの切り分けができるかもなってとこだった。

WC:その意味では、イサリや公共能力者ではない、ってことはわかった感じだね。

千晴:「雪さん、たとえばなんだけど、普通の人が神具でないにしろ、術具をみにつけたとして…マコちゃんみたいに、精気を減らされるってことはある?」

雪:「やー、ものによってだよー。そういうものもあるし、そうでないものもある。精気や生命力とは干渉しないけど、運命とか精神に干渉するものもあるし。
<クレリアの剣>とか結構な術具だけど、あれは運命に干渉するタイプで、持ち主の命を削るなんてことなかったしー。」

千晴:「じゃあ、意図的に精気を奪う術具とかもあるのかな?」

雪:「呪いのアイテム的な? 死者の指輪的な? それはそういう目的のアイテムならできるでしょう。」

千晴:「考えてもきりはないか。」

玄:「まあ、あるんだろうなー。」

雪:「いくらでもあるわさ。」

玄:「想像を絶する物がいっぱいって感じだからなあ…」

千晴:「じゃあ…こんなところかな。帰って作戦会議するか。」


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