真夜中スーパマーケット

夜の世界が好きだ。

警備員ですら仮眠する真夜中の、スーパーマーケットや植物園に想いを馳せる。生きながら化石になっているような夜中の世界の住人を、こっそりと、みてみたい。

動物園は夜行性の生き物が、仮初めの住まいに囚われているようで気がひけるし(昼の動物もそれは同じだが)夜の美術館はそれはそれで視線が怖いように思う。

だから、植物園の夜。だから、スーパーマーケット。無粋な監視カメラのようなものがない、地方のそれならば尚良い。

透明人間になれるなら、それらの場所を見て回りたい。車に乗っての移動は怪談になってしまうし、終電なんてとおに終わった時間だから徒歩での移動くらいしか手段はなかろうが。

眠っている間も世界は続いている。意識を飛ばしたその間の夜の世界。誰かの営みや愛憎。それぞれの物語を覗くには罪悪感もあるし、そもそもそこまで他人に興味はないから、陳列された商品が静かに横たわる闇であるとか、樹木の眠る場所を見て回りたいのだ。

昼間のスーパーマーケットが日常の象徴であり、陽を表すものであるのならば、私はその裏側である陰に触れてみたい。太陽をつかむより、月にふれたい。

夜の散歩が好きなのは、透明人間にならずとも、夜を感じていられるから。叶うなら、真夜中スーパーマーケットに横たわりたい。

ふわふわした月が眠るかのような夜に。

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