「効率が大事」の落とし穴
今日のお話は、冒頭のカバーピクチャーに使っている写真からです。
何に見えますか？
堅あげポテト うすしお味。
正解。
で、これ、本物のポテチの袋ではなく、色鉛筆だけで描かれたものなんです。
なので、平面なのです。
信じられないという方は、こちらのインスタグラムをご参照ください。
https://www.instagram.com/shino__0215/
なぜか流れてきたこのインスタの画面に釘付けになってしまい、いくつも作品を見ていたら、
ちょうど1月13日〜2月3日で個展が開かれる、
しかもこの週末は作者が在廊、
しかも場所はカランダッシュ銀座ブティック（スイスの素敵な筆記具・画材屋さん）、
そして私はちょうど予定がなくなったところ、
……そんなわけで、これはもう行くしかないということで、曇天の中、行ってきました。
間近でみてもやっぱりすごかったです。
他にも可愛らしい猫の絵や、繊細なお花の絵もありました。
作者は、篠さんという20歳の男性の方でした。
1枚の制作時間は50時間ほどだとか。
もう感嘆の声しか上がりません。
他のお客さんも釘付けで、「ほんとにすごいですね〜」と一緒にそればっかり言っていました。
それで、今日の本題ですが、
何に私たちが驚嘆し魅了されるかといえば、
この絵から伝わってくる緻密さ、繊細さ、完成度、そして注ぎ込まれた膨大な時間とエネルギーなどではないかなと。
淡々と黙々と無心になって描いていたのかもしれないし、自分と向き合いながら描いていたのかもしれない。
今の世の中は、何でも簡単・便利になっていて、とても効率よく生きることができるようになっています。
そして、「コスパ」などの言葉にも代表されるように、何かと効率よく手際良く済ませることが良いという風潮もあるように感じます。
けれども、人が魅了されるのは、とてもよく考えられたものとか、人の叡智や労力などのエネルギーが結集したものではないでしょうか。
アップル製品がここまで売れるのも、スラムダンクの漫画や映画が大ヒットするのも、その後ろには膨大な工夫や思考や徹底した工程があるから。
古代〜現代の有名建築に人が惹かれるのも、そこには考え抜かれた美学と建造物の細部にまで貫かれた哲学や技巧や洗練さを感じるから。
インスタント食品も、開封のしやすさ、水や油でベトベトにならない構造、捨てやすさなど、そういう工夫がなければここまで国民に受け入れられないと思います。
「わあ、すごい！」「わあ、便利！」
この簡単な一言を言わせる背後には、創り手が手を動かしたり考え抜く作業があります。
シンプルなものほどそうかもしれない。
その全ては目には見えないけれども、膨大です。苦労の賜物です。
それを私たちは感じ取るから感動する。
そのプロセスは、効率とは真逆です。
ちなみに、イノベーションも、効率の対極にあります。
数々の試行錯誤や、美しさを追求するのは、言うは易し、実際やるとなれば、いろいろ大変。
肩も凝る。頭も痛くなる。寝不足にもなる。
でもそこに創る時の面白さがあるし、手を抜きたくない、やめたくないという気持ちにもなります。
結果的に、効率的にはならない。
効率を追求していると、私たちは、いつまでも「消費者」なのかもしれません。
「消費者」として生きるのか、「創り手」として生きるのか。
そこには、「充実感」という観点からは大きな違いがあるように感じます。
消費していても、物理的なモノや一時的な楽しい時間は得られる。
けれども、ヒトが心から満たされる感じは、何かを創り出している時に感じているのではないか。
これはほぼ確信に近い私の仮説です。
絵などの作品は目に見えてわかりやすいですが、
実は私たちの人生へのスタンスも同様に考えることができると思います。
今日という1日を、各所で生まれる人間関係を、勤務先で任命された仕事を、人生で起きるいろんな行事やイベントを、ただ消費するのか。
それとも、それらを自ら創るのか。
それによって、スケジュール的には同じでも、得られる充実感は違うのではないかと思います。
作者の篠さんとは、会場でもお話させていただくことができました。
徳島県のご出身。
これまで絵を学んだことはないのだそうです。
経済的なご事情もあって、高校卒業後に関西の化学薬品会社に就職され、今も工場で勤務されているとのこと。
そんな中で描き続けてきた絵の一部の個展です。
この3月で退職して、ご自分の資金で関西で美術の学校に通い始めるそうです。
これからがますます楽しみですね。
●篠さんのInstagram：https://www.instagram.com/shino__0215/
●篠さんのTwitter：https://twitter.com/Shino__0215
●カランダッシュ銀座での個展は2月3日まで。
気になった方はぜひ覗きに行ってみてくださいね。
では、また！
この記事は、2023年1月18日配信のここみち便りをリライトしたものです。
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