【果敢な戦いは】EURO2024 groupE 3rd Match ウクライナvsベルギー【未来への礎】
サッカーを愛する皆さん、こんにちは。
EURO2024アーカイブ化計画のウクライナ担当として参加させていただいています、くろだです。
大会はすでに終了し、スペインの優勝で幕を閉じた今大会ですが、ウクライナの足跡を残す責任を果たすべく、筆を取る次第です。(2回目)
第2戦では先制点を献上したものの後半に出力を上げて逆転勝利を掴んだウクライナですが、この時点で勝ち点3で4チームすべてが並び得失点差のみで差がついた格好となる大混戦という状況でした。
レギュレーションによりグループ3位でも他グループの結果次第で決勝トーナメントに勝ち上がれるという状況でしたが、この時点で得失点差がー2だったウクライナは勝利が大前提となる状況。
グループリーグでは前評判通りのパフォーマンスを見せる事が出来ていなかったベルギー相手にどれだけ踏ん張って戦えるかに注目の一戦となりました。
スタメン
試合雑感
ウクライナは前節まで採用していた4-1-2-3(4-3-3)の配置から5バックへの変更を行ってベルギー戦に臨みました。
ベルギーボールで開始された直後、11番ドフビクがファーストディフェンスを決めたのち、9番ヤレムチェクが中央へのパスルートを遮断しながらプレスを開始。前の2枚でビルドアップを規制しながらサイドバックをターゲットにボール奪取を狙う構えのように見えます。
中央へのルートを規制されたベルギーはウクライナの2-3ブロックの外側を経由する形で9番トロサールと22番ドクへの配球からウクライナの最終ラインを崩していきたい構えもウィングバックとインサイドハーフで挟まれる形では圧力が強くラインの裏への侵入は難しそうな雰囲気で最序盤は推移します。
7分を越えたあたりでベルギーは降りる9番トロサールからサイドを変えて7番デブライネがブロックの中で受けたところから10番ルカクへの配球を実現。それほど広いスペースを与えたわけではありませんがウクライナの中盤3枚のスライドが間に合わない場面を作る事が出来ればチャンスの種はたくさん作れそうだ、という状況を作り上げます。
とはいえ、ウクライナ側も22番ドクと9番トロサールに対しての対応はスライドが遅れつつも中盤が間に合わせることによって大外での対応をこなし、中央へ侵入される枚数が相対的に減る事でベルギーの中盤に決定的な仕事を許しません。時折10番ルカクが降りて起点になろうとしますが降りるタイミングが早いのか早く降りざるを得ないのか起点になった先の前線の枚数が足りないのでフィニッシュまで持ち込むことが出来ません。
ウクライナのミドルゾーンでのビルドアップを見る事が出来たのは19分ごろ。ルカクの1トップに対してバックライン3枚でスタートする事が出来るウクライナは18番ブラツコがルカクの裏でボールの出し入れを担う事で19番シャパレンコと14番スダコフにスペースを提供します。この時のウクライナはウィングバックが高い位置を取る事で3-1-2-4の配置となりシャパレンコとスダコフが享受したスペースを9番ヤレムチェクと11番ドフビクへ供給する事が出来ていました。
お互いに攻守における持ち札が見えてきた22分を過ぎたあたりでベルギーはウクライナの守備ブロックに対してプレス回避後のフェーズでブロックの外で受けた9番トロサールに対面したウクライナ14番スダコフへトップに位置する10番ルカクと中央に位置する7番デブライネの2択を意識させた状況でデブライネへのパスを選択。ここから大外の21番カスターニュへの配球を実らせるとルカクへのクロスへと結びつけます。ここから、いかにしてデブライネが中央で仕事が出来るかが焦点になるのかと思いましたが、中央に留まらずブロックの外に動いてみたり裏抜けを目指すなどまだまだ試行錯誤をしている雰囲気が続いていました。
そんなベルギーに対してある程度やる事がハッキリしている感のあるウクライナですが、ベルギーの緩い前線の規制を抜けながら中央でスペースを享受し続けシュートを重ねていきます。
対して守備面ではこの試合のベルギーが攻撃時に比較的ダイレクト志向の攻め筋を目指している雰囲気もあり、列移動も少ない事から初期配置からのアタックでウクライナは守備がしやすかったのではないかと思います。シュートチャンスも作れていた事からトランジションで重心を大きく崩した状態で守備に追われる事もないため、念願の先制点を得るタイミングは遠からず、という雰囲気で前半を終えます。
後半に入ると、前半は総じてウクライナの2トップに消され気味だったベルギーの24番オナナと8番ティーレマンスが外に流れたデブライネやサイドバックを経由してウクライナの3-2ブロックの内側でボールを受ける頻度が高まります。守備面でも両ウイングが絞りながら中央で大きなスペースを与えないようにすることでウクライナの攻め筋に少しばかりの窮屈さを与えていきます。
ウクライナの14番スダコフや19番シャパレンコがもう少しボールスキル面で特徴のある選手だったら突破するなりベルギーの守備陣を引き付ける事が出来たのかもしれませんが、その時に欲しかったであろう10番ムドリクは前節で足を痛めていたようでベンチメンバーにも入っていませんでした。
そうして後半開始早々から攻守両面でやりにくさを与えられたウクライナは前線からの規制も効果が薄くなり、22番ドクに起点を作られシュートまで持っていかれるなど徐々に流れを明け渡していきます。
ウクライナはそのシュートシーンで痛めた16番マイレンコに代わり17番ジンチェンコが投入されますが、ブロック内を蹂躙し始めたベルギーに対して押し返す圧力を出す事が出来ません。
後半17分にはベルギーが9番トロサールと8番ティーレマンスに代えて18番マンガラと11番カラスコを投入。やり方の大枠は変えずにウクライナへの圧力を高めていきます。
ベルギーに守備ブロックを蹂躙され、押し返す圧力も出せない状況に陥ったウクライナは後半25分に18番ブラツコ⇆6番ステパネンコ、19番シャパレンコ⇆25番ヴァナト、9番ヤレムチェク⇆8番マリノフスキーと中盤と前線の駒を変えて対抗します。25番ヴァナトが前線でプレスとトランジション時の裏抜けを目指して活動量を与えます。
ベルギーは後半32分にサイドでのドリブル突破、ウクライナのビルドアップ阻害に対して2トップの間でボールを受けて守備ブロックを崩しにかかるなど縦横無尽の働きで貢献した22番ドクに代えて18番バカヨコを投入。
1点がどうしても欲しいウクライナは後半36分に3番スヴァトク⇆7番ヤルモレンコの交代策でビルドアップ時のバックラインは2枚のセンターバック+6番ステパネンコ(or 8番マリノフスキー)となりウィングバックを高い位置に置きながら流動性を持たせて攻めの時間を作ろうと働きかけます。
直後のコーナーキックでは8番マリノフスキーが直接狙ったキックはベルギーのキーパー1番カステールスがすんでのところでセーブ、惜しくもゴールラインを割る事は出来ませんでした。
その後はお互いにゴールをこじ開けるべく前へのベクトルを強め、惜しいシーンを演出しますがゴールならずで0-0のドロー決着となりました。
まとめ
もう一方の試合の状況によっては引き分けでもグループリーグを突破できる状況だったウクライナですが、おそらく他会場の情報も取りながら試合に臨んでいたコーチ陣は状況に応じたシナリオを描きながら神経をすり減らしていたんじゃないかと思います。
とはいえ、勝利を収める事が出来ればグループリーグ突破が決定する以上、ある程度やれる事、やる事がハッキリしていたウクライナはリスクを見据えながら果敢に戦ったと言えるのではないでしょうか。
結果的に第1戦で喫した敗戦が大きく響いた格好となりましたが、第2戦で見せた前線の挙動の調整によりチームとしての戦術的強度の高まりはウクライナのナショナルチームの未来に一筋の光指したと言えるんじゃないかなと思います。
今節のベルギー戦では負傷で出場が叶わなかったムドリクですが、彼はまだ23歳。まだまだパフォーマンスが上がってくることが期待されますし、14番スダコフは21歳、ディフェンスラインで幅広く頑張った13番ザバルニーも21歳と将来が期待できる選手が数多くいるのも期待値を高めてくれます。特に2戦目のスロバキア戦以降、14番スダコフはパフォーマンスを上げていきましたし第1戦のルーマニアとの戦いで基準値が高まった予感もします。現在はシャフタール・ドネツク所属とのことですが、近い将来主要リーグへの移籍も期待したくなる選手です。
EURO2024でのウクライナ代表の道程はグループリーグで終える事になってしまいましたが、個人的にもバックラインからのビルドアップとポゼッションを大事にする姿勢を持つチームは好みですし今後の成長に期待できる選手も数多くいる今後のウクライナ代表の未来に少しでも明るいものが待っていてくれることを祈って。
強い気持ちで。
試合結果
EURO2024 GroupE 3rd Match(シュトゥットガルト・アレーナ)
ウクライナ 対 ベルギー 0-0
得点:
なし
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