見出し画像

【浦和vs鹿島】目指すべき地点、そのステップ【J1リーグ 第7節 感想】

サッカーと赤菱を愛する皆様、こんにちは。

とうとう、浦和レッズに待望の勝利が訪れました。
前節の川崎フロンターレ戦ではナイーブさを見せて自壊してしまいましたが、リカルド・レッズのプロローグとして中断期間明けからの奮起に期待したいと書いていました。
そのプロローグ後の本編スタートとしてこれ以上の無い試合だったのではないかと思います。

ルヴァンカップの柏戦で西が復帰した事によってビルドアップ時におけるタスク振りの変化が訪れましたが、その変化が早速ピッチの上でも良い方向に変化してきた事を伺わせた事もそうですが、西のパスレンジやポジショニングによるチームの挙動だけでなく小泉にも良い変化があった事は見逃せません。
今シーズン初戦の感想で書いたかと思いますが、小泉のパスレンジの狭さが解消された後にいい影響が生まれた事は喜ばしく、その出口に西という存在が非常に大きかったのだと感じる事が出来たのは大きな収穫だったと思います。

目立った変化として武藤の「偽9番」的タスクと4-1-4-1的配置がありましたが、それ以上に各選手に与えた影響が非常に大きかったのではないかと。
今回は僕なりに浦和がどのようにして鹿島を相手に優位性を維持したのか、という部分を中心に書いてみようと思います。
そして、柴戸が素晴らしい働きをしてくれたことですし今まではDAZNの年パスの画像でしたが、今回は柴戸のユニフォームの写真です。
大歓喜!!!

スタメン

画像1

【浦和】
後半23分 武田(英)⇆伊藤(敦)
後半29分 武藤⇆興梠
      小泉⇆杉本
後半41分 関根⇆宇賀神

【鹿島】
後半17分 白崎⇆松村
後半32分 荒木⇆ファン・アラーノ
      レオ・シルバ⇆遠藤(康)
      三竿⇆船橋

試合雑感

これまでの布陣から大きく変更を加えて今節は最前線に武藤、中盤に武田(英)が先発に名を連ねた今節ですが、一部では4-1-4-1的な布陣なのではないかとざわつかれていました。
試合を見てみると静的には4-1-4-1の布陣を取る事はありませんでしたが機能としてそのように見て取れる場面があった事と試合後の記者会見でリカルド・ロドリゲス監督が「以前から構想はあった」と語っている事から、その見立ては正しかったのだろうと思います。

初見殺し的な部分もありますが、4-1-4-1的機能を持たせるという事はこれまで浦和レッズが取ってきた2-2+小泉で成立させてきたビルドアップの仕組みが根底から変わるという事を意味します。
これはビルドアップで5枚使う事で最前線で5レーンを埋めるポジショニングを取って最終ラインを攻略しようとした場合にどうしても動的な人数対応が足りなくなるというジレンマを抱えていた事に対する回答の一つとみて間違いないのではないか、と思っています。
ルヴァンカップの柏戦で西が見せた働きがそれまでビルドアップの出口と前線でのクリエイティビティの発揮という非常に負荷の高いタスクを担っていた部分を代替できるという事を示していましたが、西の存在が今節の4-1-4-1を成立させる事が出来た大きな理由なのだと。

もう少し詳しく見ていきますが、浦和のビルドアップ時に鹿島の2トップに対して数的優位を取るだけであれば柴戸が関与するだけで十分であり、その上でプレスの出足が鈍い様であれば2トップ脇に位置する西を出口としてビルドアップのその先の展開を狙う事が出来る訳です。

画像2

その際に小泉が関与する事も出来ますし、武田(英)や関根、武藤とのボールの循環を介して前線を攻略する事も出来ますし、先制点の様に明本へダイアゴナルな長いボールを供給する事も出来る訳です。
今節の鹿島はプレス強度も低く、特に序盤は西に良いようにやらせてしまっていた事もあり西が時間とスペースを大いに受け取るシーンが多かった事からそれなりに思い通りにプレーをする事が出来ました。
飲水タイム明けには白崎がポジションを上げる事によって西が享受していたスペースを殺しにかかりましたが、鹿島のチーム全体としての守備陣形はボールサイドに寄る傾向が強かった事から小泉のサイドチェンジによって西に大きなスペースを与える事になりました。

また、今節の浦和の4-1-4-1的配置からこれまで最前線でレーンを埋める意識が強かったところから5~10m程度低い位置でレーンを埋める様な挙動に変化が見られたことも大きなトピックではないかと思います。
次に挙げる守備時の基本陣形とも関連しますが真っ先に攻略すべきを鹿島の第2プレッシャーラインと定めていた様にも思えます。
序盤で見せた柴戸と中盤の4人でボールの出し入れをしつつ前進したシーンがあったように、ボールを繋いで前進する際のステップが細分化されつつもクリティカルに配球が出来るシーンがあった時は積極的に距離のあるパスを狙っていく、という意図からトランジション時にも中盤を制圧しやすい配置を取る事によって静的・動的のどちらにおいてもボールの回収・展開がしやすい構造となっていた様に思います。

画像3

序盤の守備時の基本配置はこの通りだったかと思いますが、前線でのプレスによる相手の侵入経路の方向付けは従来通りトップと中盤から武田(英)が担う事が多かった様に思います。
これまでトップの相方としてプレスのスイッチを担っていた小泉はより中央のコアな部分に位置する事によってチェックとプレスバック両面で大いに仕事をしていた様に思います。
上記の図ではレオシルバと三竿を正面に捉える様な配置になっていますが、実際にはレオシルバや三竿の背後を取った場面でネガティブトランジションを迎える事が少なくなく、柴戸のプレッシャーと小泉のプレスバックでボールを回収する場面もよく見られたように思います。

これは、大槻組長の時から頻繁に言われていた「相手の背後を取る」というフレーズのひとつの結実なのではないかと思っていますが、つまるところ「相手の背後を取るという事は自分の背後を取られない」という事ではないという事なんじゃないかな、と。
特に小泉の振る舞いに顕著ですが、トランジション時に小泉の背後の選手にボールが入る事も少なくありませんが、今節では相手の背後からボールを突くような場面も多く見られました。
これまではボールホルダーへのプレッシャーは横まで、方向付けした上で周囲との連携でボールを奪取する事が主で、そこから抜かれてはいけない場面ではスライディングで身体を投げ出しても阻止するようなプレーが多かったのに対し、今節では良い距離感だった事も要因となってボールホルダーへのアタックがしやすい状況が生まれたと言えるのかもしれません。
中盤の1-4の構成が各局面でプレスバックと合わせてダイヤモンド状に配置されていた事がその状況を示している様にも思えますが、背後を取られたとしても相手に自由を与えなければ、それはすなわち自分が相手の背後を取っているのと同じ、という事にもなるのだろうと。

今節で、攻守にアグレッシブなプレーが良く見られるようになったのはまだまだいくつかあるであろうステップの一つだと思いますし、今後は前線でどの様に押し込み続けるのか、という部分も含めてよりタスクや戦術が洗練されていくのだろうと思いますが、現時点でビルドアップと中盤でのネガティブトランジションの部分で相応の向上が見られる事は喜ばしい事です。
選手個人の視野が広がっている事もメンタル的な部分だけでなくボールの質なども含めて影響を及ぼしている様に思いますし、現段階では西の登場によって小泉が大きな影響を受けている様にも思いますが、柴戸や金子、伊藤(敦)も向上し続けている印象が強く残っていますので、今シーズン後半では盤石の中盤の構成を見ることが出来るのではないかと楽しみにしています。

最後に

今現在では徳島線を終えているのですが、今節を踏まえてこの布陣が継続する事になりました。
徳島戦後に武田(英)の交代によって4-1-4-1の布陣が上手く機能しなくなったので変更を加えざるを得なかった、という言葉がリカルド・ロドリゲス監督から語られましたが、次の清水戦と徳島戦の感想を経てどの様な見え方になるのか、ちょっと楽しみにしてみようと思います。

それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?