猫とサバイバル記

10年ぶりに猫と暮らし始めた。
わが家に突如やってきた猫は
孤高で気高い1匹の雄猫だ。

まだ生後1〜2ヵ月だが、
首の下の毛のホサホサが、ライオンの雄のそれと同じだ。
宙を見上げるその横顔は、サバンナの帝王のように高貴で
彼の目は容赦なく獲物(主にわたしの手)を狙う。
間違いなく、彼はネコ科の雄だ。

10年ぶりの猫は、思った以上に獣だった。
来て1週間もしないうちに、慣れと成長から
本気で噛むようになってきて、わたしは両手とも傷だらけだ。
おもちゃであやしても、おもちゃを持つ手を狙ってくる。
目は見開かれ、「仕留めるぞ」という気概が伝わってくる。

それでいい。
立派な雄猫になれ。
誇らしく、頼もしい気持ちになる。

猫と暮らし始めて、
いや、正確に言うと猫と暮らすことを検討し始めてから
気づいたことがある。

魚が生きていくには水が必要だということと
同じレベルで、わたしには猫が必要なのだ。

前の猫とは、8歳のときから約18年一緒だった。
家族間のもめごとや、失恋、仕事の疲れ、
すべて猫に癒やしてもらっていた。

悲しいことがあっても、猫を抱きしめれば息ができた。(猫は息苦しかったはずだ)
眠れない夜は、猫が寝ているのを見ていたら寝れた。(猫からは睡眠薬が拡散されていると思う)
息苦しいときは、猫のお腹に顔をうずめて息をした。(猫アレルギーの人は、もっと苦しくなるから真似しないこと)
つらいことがあっても、猫が鼻をガブリと噛んだら、大笑いできた。(痛すぎて涙も一緒に出る)

この、生きにくい世の中で
わたしはずっと猫とサバイブしてきたんだ。

この世界から、つらいことがなくなることは絶対にない。
だから、わたしたちは、サバイブする方法をそれぞれに見つけていかなければいけない。
きっとそれは、多ければ多いほどいい。
日常に取り込めるなら、なお良い。

猫。
それは、ふわふわであたたかく、自由で気高く
獣のにおいがして、のどがゴロゴロなって
液体のように柔らかくて、実際に液体のように変幻自在で
勉強を始めればノートの上に乗り
スマホを触れば、友達へのラインを誤送信させ
歩けば一歩ごとにからまり
一緒に寝ようと連れてくれば逃げるのに
気づけば枕元で寝ている、
最高のサバイバル仲間。
猫と、ともにあるかぎり、わたしはこれからも生きていける。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?