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住友ゴム(ダンロップ)の除電特許 その1

転がり抵抗と導電性とのせめぎ合い

マジ軽ナット タイヤ用は、タイヤから路面に流切れていない静電気を除電する特許グッズ。
知名度は少しづつ上がっていて、使ったユーザーさんが気に入ってくれ、何度もSNSに投稿してくれています。
写真はブリヂストンのエコピアに設けられている「導電スリット」。路面への放電量が不足しているので、一部に導電性の高い部分を設けて少しでも静電気を路面に流そうという工夫です。
これはオートバイのタイヤにもあります。確認しているだけでも、ミシュランやブリヂストンが採用しています。

ゴムの色が違う部分が導電性の高い部分、通称「導電スリット」

私のSNSを見て疑いを持ったのでしょう。ネット検索したら、タイヤの原料にカーボンを入れているのは、ゴムの強度を上げる為だけと勘違いされている方がいて、「うそついたらあかんで」と投稿した素人さんがいました。
少し調べれば、路面に静電気を逃がす目的でも、カーボンを配合しているのが分かるのですが…。
自分で詳しく調べる事もなく、検索で上の方に出てきた事が全てだと思い込む。ネット社会の厄介な一面です。

私はプロとしてテストドライバーをやっていたので、車の基礎知識や構造に明るいです。そうでないと、起こった事象を分析して評価出来ないからです。報告書を書くので文章を書く能力も求められます。
昔はネットなどありませんから、本とか専門書を読んで勉強もしました。
ベストセラーとなった、故 徳大寺 有恒著「間違いだらけの車選び」も読みました。まさか、後に親戚になるとは知らずに…。
好きな分野ですから、砂に水が浸透するように頭に入っていきました。
本ではその時必要ではない情報も入ります。一見無駄なようですが、それが後に役に立つことは多い。何年も(何十年も)経ってから、頭のストレージから引っ張り出せる。
だから、初めて除電チューニングを体験した時も「何でこうなるの?」という疑問はありましたが、説明を聞いたらすぐに納得しました。理に適っていたからです。
車体の静電気をタイヤから路面に流して放電しているのを知ったのは、学生時代。ただ、タイヤのゴムの導電性が低く頼りないのと、路面の材質までは考えなかった。電気が流れるには流れる先の導電性は極めて重要なのです。
車のドアを閉める時に「パチッ」来るのが嫌で、降車の際にはAピラーの金属部分に触れながら降りていました。
そうすると、ピラー ⇒ タイヤ ⇒ 路面へとゆっくりと静電気が流れて除電され、パチッを防げるのです。今ではマジ軽ナットが常時除電してくれているので、その必要はなくなりました。

タイヤから路面の放電量が不足している。それを証明する特許文献ですが、基礎知識が無いと読み解きにくいようで、質問が何件かありましたので、ポイントを絞って分かりやすく解説します。
特許を申請する時には他に真似されないよう、防御的に範囲を出来るだけ広げます。例えば、使用素材をチタンに限定すると、特許を真似したい人が「チタンと限定しているから、周期表の隣のバナジウムなら特許権の侵害にはならない」と特許を真似する、という事が起こります。それを防ぐには、チタンと限定するのではなく、「チタンやその他の金属でもよい」というような書き方にします。これで金属全般に特許の適応範囲が広がり、自分の特許を防護する。
随所にこのような言い回しがあるのと、部品の構造を文章で書く必要があります。それで、回りくどい表現と言い回しで難解な文章になる。それを「特許庁文学」と名付けました。
ちなみに、特許文献を見て真似すれば同じものになると思って、特許権を侵害する輩がいます。実は私も被害を受けています。
私の兄も自動車の研究所の職員で、会社で3件の特許を取得しています。
それもあって普通の人よりは特許に明るいのですが、特許文献には特許を申請出来る(受理される)最低限の事しか書きません。
特許庁から「根拠が不足している」と弁理士に通達があれば、追加してなるべく情報を出さずに済むようにしています。前述のように、特許を真似する人がいるからです。
逆に言えば、発明の全てを書かなくても特許は取れます。マジ軽ナットもそうですし、これから解説していく特許文献も全てそうです。
浅はかな人はいるもので、除電の特許を真似したつもりでそれを投稿している人がいます。よくもまぁ、犯罪を自慢出来るものです。
それを基は特許とは知らず、真似してみた方が、マジ軽ナット タイヤ用を購入してインプレッションのメールを頂きました。
文頭に「正直申しまして、驚きの連続でした」、文末には「マジ軽ナットの取付で本物との違いを実感しました」と書かれており、6項目の変化を詳細に書いて下さったのです。
特許を盗む人よりは特許を取得している人の方が、長く研究しているから詳しいしデータの蓄積もある。そのような人や会社が、1から10まで文献に書くと思いますか?、という事です。素人考えがいかに浅はかであるか分かると思います。

お知り合いで「タイヤが帯電してるって、本当?」、「悪影響なんてあるの?」というような疑問をお持ちの方がいましたら、当ブログを教えてあげて下さい。きっと喜ばれますよ。

住友ゴム(ダンロップ)の特許文献全てでは読み切れないので、重要な部分をスクリーンショットしてアンダーラインを引き解説します。

まず、1ページ目の下の文章です。赤線の部分を分かりやすく太字に通訳した上で、解説します。

・省燃費対策でタイヤの性能に小さい転がり抵抗(少ない力で回転する)が要求されるようになった。
・その目的で転がり抵抗を減らすためにシリカを配合しているが、それにより相対的にカーボンの比率が減り電気抵抗が増えた。
・カーラジオ等の電気機器にノイズ(雑音、電波障害)の影響があった。

省燃費への要求が高まり、シリカを配合したら、ゴムの導電性(電気の導通)が低下して路面への静電気の放電量が減った結果、カーラジオ等の電気機器にノイズ(雑音、電波障害)が発生した。

転がり抵抗の低減で燃費が良くなる(横浜ゴムのホームページから引用)

これで気になったのが「等の電気機器」「電波障害」です。カーラジオだけの問題ではないという事ですね。さて、それは何だろう?コンピューターなのか、制御回路なのか、はたまた…。

「今の車はスマホにタイヤを付けているようなもの」(高橋洋一/数量政策学者・元内閣官房参与)だそうですから、あらゆる所に電子部品が使われています。その様な機器に影響が及ぶ事は十分考えられます。
では、人間は大丈夫なのか?脳神経はとても繊細な電気伝達で制御しています。

パソコン等の電子部品(ボードやメモリ等)を買うと、必ず静電気防止剤入りの袋に入っていますが、静電気による静電気破壊が起きないようにです。静電気が電気回路を破壊する、回転への悪影響、それらを防止する為に洗濯機やエアコンの室外機等には必ずアースが付いています。

アースが付けられない車の場合は、タイヤから路面に放電するしかありません。ところが、それが上手く流れていない、それに気づいて特許に繋がりました。
住友ゴムの特許をみれば、放電量不足のタイヤを補助的に除電する、マジ軽ナットは今の時代に合っているという事ですね。
タイヤメーカー自身が現代の省燃費タイヤの方が、静電気が路面に逃げ切れていないので、トラブルが発生したと書いています。

次は2ページ目です、上から順番に解説します。

・トレッド(タイヤの表面)の電気抵抗が大きい(導通性が悪い)と車に発生した静電気が路面に逃げにくくなり、車に蓄積される

これが私がいつも書いている「タイヤメーカーは、静電気が路面に流れ切っていないのを知っています」という根拠です。
「タイヤに静電気が~」と言うと「そんな事ある訳がない」という人もいますが、実際にタイヤメーカーがこう書いているんです。まぁ、説得する気にもなりませんが。

・車体に帯電した状態で走ると、橋などにある鉄製の継ぎ目など電気抵抗の小さな箇所(電気が流れ易い材質)にタイヤが接すると、路面では放電されずに車体に帯電していた静電気が一気に(大量に)流れ、ラジオにノイズが入る。

ラジオにノイズが入るという事は、他の電気的な回路にも影響があってもおかしくありません。ラジオにだけしか影響ないと言い切れますか?
乗り物が走る時点でタイヤには剥離帯電も起こっているので、常時放電し続けた方がいいのは間違いありません。
乗用車のタイヤ側面を見て下さい。ほぼ全てに線や模様がデザインされています。20年ほど前に「何でこんな事をするのだろう?」と不思議に思っていましたが、これはその模様から空気中に放電するためのものです。涙ぐましい工夫です。

・このような問題があるので、今まではトレッド部に帯電防止剤を配合したり、表面に導電性の塗装をしていた。
・帯電防止剤を配合する場合は、他に混合する材料に影響を与えない範囲でしか混合出来ないので、タイヤの導電性を大幅に高める事は出来なかった。

メーカーは導電性を高める為に原料に帯電防止剤を混ぜても解決しないので、導電性(電気を通す)の塗装までしていた。
私の説明で「タイヤに帯電防止剤をスプレーする訳にはいかないので、マジ軽ナットを付けるんです」と説明する事がありますが、塗装していました。実際にサーキットに行くと、タイヤに除電スプレーを吹きかけているのを見る事があるはずです。
友人があるレースでTRDのメカニックがそれをやっていたのを目撃しています。ただ問題があって、走行すると熱と風で揮発してしまうのです。
逆に言えば、タイヤメーカーは静電気の帯電にそこまで苦慮している、という事ですね。

・これらの解決策としてゴムにカーボンが混合されているが、更に導電性が高いカーボンを混合してカーラジオのノイズ等を改善出来るのを見い出した。

原料のゴムにカーボンに加えて更に導電性が高いカーボンも添加して”電気抵抗を下げる”つまり、導電性を増してラジオのノイズ等を”改善”です。解決ではありません。
ここで気になるのは、最初にカーラジオ等の電気機器にノイズ(雑音、電波障害)が発生した。と書いているのに、ここでは”カーラジオのノイズ等”となっています。
カーラジオの「等」と「電気機器、電波障害」が削られていますが、これは、偶然書き忘れたのではないはずです。
私の兄はトラック・バスメーカーの開発研究職で確か3つほど会社で特許を取っていますが、特許申請に間違いはあり得ません。何度も厳しいチェックが入って、弁理士という特許申請のプロが関わり、初めて特許申請となります。
深読みすれば、”ラジオのノイズ等だけ”改善出来たと読みます。つまり、他の問題は残ったままなのでしょう。

そして、電気機器と電波障害は別段落【0005】に分けて、「提供する事を目的とする」と書いてあります。これも解決する、ではなく「目的とする」となっています。あくまで、目的ですからね。

ここまで読んだだけでも、タイヤの転がり抵抗を減らそうとすると導電性が下がり、カーラジオ等の電気機器に電波障害が起こっていた事実が分かります。
タイヤのゴムの原料だけでは解決出来なかったものを、マジ軽ナットを取り付けるだけで、かなり解消出来ます。
「マジ軽ナットを付けてから、冬に車を降りた際にパチッと来なくなった」という報告も多数受けています。電源不要で24時間放電し続けるので、停車中でも放電しています。
取り付け時間はオートバイなら50秒位、車なら3分もかかりません。そして耐久性も抜群、半永久的と言っていいでしょう。
乗り換えの際は取り外して次の車両に付け替えて、また使える。オートバイも車も同じ米式バルブです。

タイヤメーカーの設計思想に近づける除電チューニングをお試し下さい。
付けて乗れば「これがタイヤメーカーが目指しているタイヤの性能なんだ」と分かります。
一週間程度乗ったら、マジ軽ナットを外して乗ってみて下さい。今までどのような状態で乗っていたかが分かります。これ、大切です。

毎月出店しているエクスチェンジマートに出店の申し込みをしました。
今月は8月18日(日)早朝5時から開催の予定です。昔風に言うなら部品交換会です。天候による延期の可能性がありますので、開催場所も含めてホームページでチェックをお願いします。
毎回、このような感じで、特許証を掲示して出店しています。

エクスチェンジマートでは今や有名店になりました

エクスチェンジマートでは、様々なマジ軽ナットシリーズのサンプルやエンジンのベンチテスターで測定した、除電でエンジンの出力が上がり、燃料消費率が改善したグラフもお見せしています。
当ブログを盗用して、その辺の市販部品を「除電する」と偽り、販売している輩がいますので、グラフはネット公開していません。イベントやフリマ限定で、写真撮影はご遠慮頂いてお見せしています。
その他、トヨタやホンダ、解説している住友ゴムの特許文献もお見せしながら説明しています。
購入する、しないは別として、どのような物なのかを見るだけでも面白いはず。とにかく、今までなかった物ですので。
マジ軽ナットヘビーユーザーも次々来店されます。先月、BMW R100GSのフロントフォークにマジ軽バンドを取り付けたMさんは、「マンホールを走った際の突き上げが減った」と大喜び。「今度はベベルギアボックスを除電したい」と特注のマジ軽バンドを受け取りにいらっしゃいます。
マジ軽ナットシリーズを授業に取り入れている工業高校の先生、お二方も来店されるそうです。先生だけに説明は私より上手いと思います。
この高校では、ホンダのエコランに除電チューニングを施して参戦しています。

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