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チェルノブイリ日記 9 ~ 耳が痛くなる静寂の中と哀しいものが生む美しさ

疲れを感じない

 建設途中で放棄されたチェルノブイリ原発5号炉の散策はもうちょっと続きます。
 日本で普段通りに朝から夕方まで働いて、一旦帰宅してすぐ関西国際空港に向かい22時過ぎの飛行機に搭乗し、満足に眠れないまま約13時間のフライトを終え、イスタンブールの空港に2時間弱ほど滞在し、キエフへ向かう機内で食事を済ませ1時間ほど眠り、キエフに到着して休むことなく移動し、食事は口に合わず、そんな状態で危なっかしい場所を歩き続け……とわりとハードなことをしていますが不思議と疲れは感じていません。旅の緊張感とチェルノブイリの興奮で身体がおかしくなっているのでしょう。

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 暗いなぁ。手前の方を見ますと巨大なパイプのようなものが這っている……? 運動神経に自信があればパイプの上を歩いて上層階へ移動するのですけどね。

※ この記事はトリップウォーカーに掲載していた「チェルノブイリ日記」を書き直したものです。有料の設定にしていますが、全て無料で読めます。読み終わって面白かったと思われましたら投げ銭として購入の手続きを行って下されば幸いです。

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 下の方は真っ暗……。ここは何階? どこをどう歩いたのか全く分かりません! こういうとき動画を撮影していれば記憶を掘り起こせるのでしょうね。

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 見慣れた光景です。この穴は物を上下に運ぶために塞いでいないだけで最終的には塞ぐ予定だったのですよね。よね?

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 穴のそばに棒状の物が散らばっています。マイク? そんなわけないか。しかし分かりやすい罠だなぁ。そしてこれ、ふざけて蹴落とす人が上層階にいたらこれが降って来ることになるわけで、いやぁそれも怖いなぁ。小さいとはいえ頭に当たったら無傷では済みませんよね。ヘルメットを持参すべきだったか……。

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 手前には電球の傘らしき物が落ちています。向こうを見ますと暗くて分かりにくいのですが巨大なパイプがうねうねと……あれは建設途中だったからうねうねしているわけ? これが完成形ではないですよね?

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 下の階に戻って来ました。下の階ですよね? 相変わらず自分がどこにいるのか分かりません。

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 おぉう、鉄骨が崩れています。さすがに近寄りたくないなぁ。

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 なので少し離れて……。建設途中だから? 四半世紀以上放置されたから? ヤケのヤンパチで破壊した? 謎が多過ぎるんよ。

そろそろ終わりです

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 何かを見付けたガイド。
 やっぱり人が写っていると絵になりますね。世が世なら若いお姉ちゃんのモデルを連れて来てインスタ映え~な撮影をする人もいらっしゃるんでしょうけどね。

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 ガイドの姿が見えますか。
 巨大な建物、巨大な空間、巨大な何か……巨大な物の前に人はただただ圧倒されてしまいます。

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 左上を見ますと丸い窓? 穴? 廃墟の女王と呼ばれる摩耶観光ホテルにもこういう丸い窓がありましたっけ? 向こうに見える木が時の流れる世界であることを教えてくれます。

 ところでガイドは何を見ているの?

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 ここが何になる予定だったのかは全く分かりませんが、なんというか真ん中あたりに見えますハシゴがね……。真っ直ぐじゃないハシゴなんてある? 楽しいアトラクションなの? いやもうここならハシゴが真っ直ぐじゃなくてもそういうもんかと受け入れられそうですけども。

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 ところで足元は線路なんですね。線路さえも人を落とすための罠みたいになっていますけど。この5号炉を散策している間に「ワッチ ユア ステップ」と何度言われたことでしょう。

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 足元を見ながらではなく見てから歩かないとこのような殺意が溢れ過ぎた穴に落ちることになりますからね。なんか飛び出てるやん……。というか穴の形状からして、崩落しましたか? するの?

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 このような壁も世が世ならオシャレ写真の背景なんでしょうけどねー。アパレル通販のカタログに載ってそうじゃないですか。

 さて、そろそろ外へ出るみたいです。

5号炉の周りには何がある

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 罠の線路を抜けて外へ出ました。

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 線路のそばにも小さな扉がありました。手前の板が足場みたいになっていますけど、乗っても平気なのかな……。

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 しかし線路は屋外もこのような罠状態になっているのですね。建設途中だったからか、少しでもコストを下げようということだったからか?

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 屋外でも落ちる場所はあちこちにあります。気を付けて!
 写真の真ん中より少し右上に人が立っているように見えるのですが心霊写真……ではなく人です。イケメンです。原寸大でお見せ出来ないのが残念なのですが微笑みを浮かべているように見えます。どういう意味の微笑みなのかは分かりませんが。

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 ところで5号炉の周りには何があるのでしょう。
 見回しますと……向こうに見えますクレーンは7話で見ましたアレですよね? アレがちょっと離れて見えるということは、随分歩いたんだなぁ。

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 そして折れたクレーン! よく見ますと根元に運転席らしき箱? がありますね。
 しかし先程から同じような疑問を抱き続けていますが、こんなの折れますかねぇ? 本当に不思議。

静寂と美

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 ちょっと近寄ってみます。何度見ても折れてるなぁ……。クレーンの色も本当はこのような錆色ではなかったのでしょうね。
 足元にはちょっと怖そうな水。水に浸かっていると傷むのも早いということなんですかね。

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 アクションゲームであれば折れたクレーンを足場にして5号炉へ侵入するってなところなのでしょうけど。

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 水面に写るクレーン。

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 何のために水が張られているのか、そもそも建設途中から水が張られていた場所なのか、まるで分かりません。

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 原発事故のため放棄され四半世紀以上が経過した場所。恐らくは危ない水。風の音も聞こえない、鳥の鳴き声も聞こえない、耳が痛くなる静寂。

 美しい。哀しい場所であるのに、ただただ美しい。

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