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木曜日のヘルネケイト

「木曜日のスープ」

フィンランドには、「木曜日のスープ」といわれる料理がある。それがこの「ヘルネケイト」。正確にはヘルネケイットという。なぜ木曜日のスープなのか。ご当地フィンランドでは誰もが知るスープらしいが日本ではあまり耳にすることはないこの名前。そしてこのスープをなぜ作ろうと思ったのか、の前にそもそも自分がこのスープを知るきっかけになった事を少し。

「フィンランドと滋賀は似ている」と勝手に思っている

湖北 余呉湖の風景


自分はフィンランド行ったことはもちろんない。というか海外はおろか旅行という経験が人と比べてかなり少ないと思う。ところがここしばらくの北欧ブームは周知の事実。御多分に洩れずわが奥さんも北欧には目がなく、家族として過ごす中で自ずと自分もある程度の分別がつくようになった。北欧デザインの中に見られる自然をモチーフにした様式やシンプルかつどこか温かみのある造形や色使いなど、なるほど女子ウケ、日本人ウケも理解できる…
話がそれていくので少し戻すと、日本人が北欧に対して抱く親近感の理由がぼんやりと見えてきたのである。
それは、そもそも地理環境がとても似ていてそこから発展してきた文化や国民性も親和性があることに気づいた。その中でも特にフィンランドがそうだ。

私たちが住む滋賀県長浜市は琵琶湖の北東畔に位置し、湖と山、森などの自然と人の住むエリアがとても近く、自分が幼い頃は遊びといえば山や森へ入りどんぐりを拾い、夏にはすぐそばにある川や琵琶湖に泳ぎにいくのが日常であった。
ある時長浜の中でも山間にある余呉湖に紫陽花を見にドライブに出かけると、そこに広がる風景はまるでネットで見るフィンランドの景色ではないか。
それからというもの自分は滋賀、わが町とフィンランドに類似性を見いだし勝手に親近感を覚え、さらにフィンランドについて思いを馳せるようになった。

フィンランドの料理といえば

フィンランドでは土壌条件もあってじゃがいもがよく採れるらしい。そして海も湖もありサーモンやニシンもよく食されるとの事。ビワマス料理や小鮎などの郷土料理があることもなるほど共通する気がする。またトナカイも古くから食されている事についても、鹿や猪など野生鳥獣を食すことも似ている。ビワマスをミルクで煮込んだスープもメジャーであるもののさすがにこれと同じような食べ方は滋賀にはなかった。知れば知る程、なるほど面白い。

「ヘルネケイト」は豆のスープ

そしてフィンランドの読み物やスープについて調べていくうちにとても興味深い食文化を知った。ここでいよいよ今回の主題である「ヘルネケイト」の登場である。

ヘルネ=豆、ケイット=スープ という意味で、昔からこの豆のスープをよく食べるらしい。そして決まって毎週木曜日に食べるというのだ。なぜ木曜日なのだろうか。

フィンランドは12世紀頃スウェーデンの植民地だったことからカトリック教徒が多く、毎週金曜日は断食の習慣があったという。そしてその断食を乗り切れるよう、前日の木曜には栄養価の高い「豆」のスープが食べられたという。現代では金曜に断食を行う人はほとんどいないが、学校給食でもこの習わしは取り入れられていることもあるせいか、この「木曜日の豆のスープ」は習慣として現在でも多く食されているのだとか。

店主の妄想を経て新しいスープへ

繰り返すが自分はフィンランドへ行ったことはない。勝手に類似性を感じ親近感を覚えているだけである。ただフィンランドの事を調べ妄想する中でまるで旅するように当地への想いにふけるのである。そして職業柄、どうしてもご当地の料理を作りたくなるのである。そうして作る中でまた気づくのである。「長浜市(湖北地方)も豆の栽培が盛んで昔からよく食べられている!」

ヘルネと呼ばれる豆は日本でいうえんどう豆に似ているという。年がら年中あるわけではないので、収穫時期の異なるグリーンピースを代用に。バターで玉ねぎとベーコンなどの干し肉を炒め名古屋コーチンから丁寧に摂る鶏がらスープで豆を煮込みミキサーで潰す。牛乳、生クリームを足して、塩で味を整える。「バターが合う!」
一般的なレシピらしいが、自分は豆が好きなのでどうせならここへさらにタンパク質をということで鶏肉と枝豆を投入。

オリジナルの豆のスープ「木曜日のヘルネケイト」の完成である。

出来立てのスープを飲み妄想の中で旅するようにフィンランドへの想いをさらに強くする店主のである。

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