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竜とそばかすの姫:ルカとすず

【はじめに】
ルカが物語に対して果たす役割をつらつら書いてみる
今回は軽めにするつもりが、結局二千文字近くになってしまった。

【ルカの立ち位置】
本格的に絡んでくるのは物語の後半だが、実は序盤で「ルカの立ち位置」を示すシーンがある。それは
「すずとしのぶの廊下でやりとりして振り返った時、すずがしのぶとルカが話すシーンに遭遇する」
場面だ。
あのシーンの各キャラクターの立ち位置を図にまとめてみた。

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[ルカの視点]で青紫色になっている箇所はこの時点では鑑賞者にはveil、覆い隠された情報になっている。

[立ち位置を意図的に誤認させる(視聴者を含めたルカ以外の人に)]
Veilされた情報って書いたけど、実際はルカの立ち位置が示唆されているってことは

でも書きましたが、最序盤の「ルカとしのぶの視線の意味」を理解でれば気が付くと思う。けど、普通の人は初見で気がつくのは無理だ(笑)。すずの親友の「ヒロ」が「陽キャラとしてのルカ」と「陰キャラとしてのすず」を比べたがるから、観賞している人はそっちに引きずられちゃう。実際、私も初見では「すずと同じ視点」でみてしまったよ、つまり「ルカはしのぶに好意を持っている?」、と。まぁ、すずも「しのぶとルカの関係」を誤解してしまうし、その誤解を解消する過程も本作品を見る一つのポイントになっている。ルカは作中では「究極の陽キャラ」として描かれているが、「陰キャラのすず」と比較して・・・、なんてありきたりな展開にしていないところがこの作品の面白い点。

[ルカのフラットな視線]
でも、ルカはしのぶを恋愛対象としてみていないから、「すずとしのぶ」の関係をものすごくフラットに見れている。上の図で薄緑にしている部分はルカ以外の他の女の子たちは「すずとしのぶが付き合っている」と思い込んだことを示しているのだが、誤解に基づく女の子たちの嫉妬はルカのフラットな視線と対照的になっていて本当に面白い。
後、ルカって「しのぶとすずの関係」を的確にみていたりしていて、本当に視野が広いと思う。この視野の広さが彼女の人望の厚さにつながっているだろう、と想像できる。

【陰キャラとしてのルカ】
 全般的にルカは「陽キャラ」と描写されることが多いけど、すずの前では「恋愛に対して奥手」っていう「陰キャラ」的な面を見せる、この人「人から好意を示されること」には慣れているけど、「人に好意を示す事」に慣れていないんだろうな。「人に好意を示す事」に慣れていないという意味では、すずとどうるい。
で、なぜ、すずの前ではルカは「陰キャラ的な面」を見せたのだろうか?まずかんがえられるのは、「好意を持っているカミシンに一番近い女の子」だからかな?

名称未設定-86-4

を再掲するけど、図を見ると、やっぱりカミシンに一番近い女の子は親友であるしのぶと一番、仲が良さそうな「すず」になり、ルカにとっての恋愛相談相手として適切そうに見える。ルカはしのぶを恋愛対象としてみないしていないので、嫉妬することもなくナチュラルにすずに白羽の矢を立てたのだろう。(カミシンは女の子に好きと言われたことないし、実際、持てなさそうな描写が序盤にある。女っ気がまったくない)
そして、次に考えられるのは、やはり「ルカ」自身の資質によるのだろう。彼女自身が持つ「視野の広さ」で、ずずが「人の話を真面目に聞くし共感してくれるし、周りの子に面白おかしくいう子でもない」、という性格を見抜いていたんだと思う。実際、すずはヒロの「恥ずかしい秘密」をちゃんと共感してあげる程、「優しい」女の子なんだよなー。

ルカにとって自分のある意味「恥ずかしい部分」を晒すことは<Uの世界>だとUnVeilされるような心境だったはずで、これは彼女にとって勇気が必要な決断だったと思う。で、その勇気は彼女にとってもすずにとってもよいけっかをもたらした。ルカはすずに自分の恋を後押ししてもらうし、すずはルカから「しのぶとの関係」を第三者的な目で言葉にしてもらったことで、しのぶの想いを自覚したのではないのかな?ここですずがしのぶの想いを自覚したことは<Uの世界>ですずが素顔で歌いきれたことと密接にかかわってくる。
話しを戻そう。
ここで大切なのはすずとルカがお互いの「恥ずかしい部分」を「共感」したことだと思う。お互いの恥を「承認」しあったといっていい。二人の間に「共感」、「信頼関係」があるってことがわかるから、お互いの恥を共有し合うシーンがとても尊く感じるのだと思う。
これはGレコ劇場版3でも同じ手法が使われている、それについては

のブログで詳しく言及されている。
補足するとGレコ劇場版3では
・ベルリの恥をノレドが承認してあげるシーン
・アイーダがベルリのこれまでのベルリの行動を承認をしてあげるシーン
(ビー玉渡して、「ありがとう、みんなを守ってくれて」アイーダいうシーン)
がある。これはノレドーベルリーアイーダの人間関係が強固になったことをしめすものだけど、まんま、すずとルカの「感情の承認、共感」するシーンと同じ作りになっている。

感情の承認、共感とそこから作られる信頼関係、
この作品、「人の恥ずかしい」を徹底的に暴くことの下品さ、が描写されるシーンが多々ある。そんな「下品なシーン」と「すずとルカの尊さを感じるシーン」の違いはそこに「共感」とか「信頼関係」があるかないかなんだろうなー、この辺りは「竜とそばかすの姫」の「時代性」に関わる部分なので、「細田監督×富野監督のインタビュー記事」に関連した投稿の中で言及したい

【最後に】
超絶完璧美少女としてのルカが作中に果たす役割について自分なりに書いてみた。
この手の美少女って主人公じゃない限り扱いが厄介なものなのですが、
「美少女ポジションを生かして、しのぶとすずの関係を説明する係」
になっている作りは本当に面白かったですね。

【追記】
・文章構成の見直しでGレコ劇場版3との比較を書いたら文字数が2300字になった、やったぜ(謎)
・2021年10月1日   文章を一部見直した
・2021年10月2日 ヘッダーに自作画像を追加した

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