見出し画像

信託登記の登記事項とは?


■信託登記の登記事項とは?

登記事項は不動産登記法に記載されています。
ーーーーーーーーーー
不動産登記法(信託の登記の登記事項)
第九十七条
信託の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
~以降の条項は次回解説します~
ーーーーーーーーーー
「第五十九条各号に掲げるもののほか〜」という点が今回のポイントです。
つまり、第五十九条に掲げられているものは共通して登記を行うが、
信託の場合はそこに加えて第九十七条に記載された条項を登記する必要がある、ということになります。

では、第五十九条各号に掲げるものとは一体どのようなものなのか見ていきましょう。
ーーーーーーーーーー
不動産登記法(権利に関する登記の登記事項)
第五十九条
権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
一 登記の目的
二 申請の受付の年月日及び受付番号
三 登記原因及びその日付
四 登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
五 ~略
ーーーーーーーーーー
◎ポイント
【登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分】

上記を家族信託に置き換えて考えてみます。
例えば家族構成がお母様、息子様、娘様の場合
 お母様「家族信託をどちらか片方にお願いするのは気が引ける・・・」
 息子様、娘様「どちらかが信託を受ける場合、受託者となる側に負担をかけてしまう」
 息子様、娘様「どちらかが信託を受ける場合、受託者となる側だけが財産を得られる」
等、立場やご家族の形によって様々なイメージが浮かんでしまう方もいらっしゃいます。

そのため、誰が受託者となるかを決められない・したくない場合に、
受託者を複数名に任命するケースがあります。
(基本は手続きやトラブル時の対応を考えると受託者はおひとりに信託を任せることを推奨しています)
これが家族信託において登記名義人が二人以上にあたります。

■受託者が複数名の場合の持分の設計

不動産登記法上持分の設計に関して規定があるわけではありません。
しかし、信託法では以下のように規定されています。
ーーーーーーーーーー
信託法(信託財産の合有)
第七十九条 受託者が二人以上ある信託においては、信託財産は、その合有とする。
ーーーーーーーーーー
※合有とは・・・共同所有形態の一つで、共有よりも個々人の権限が弱い状態

法令上合有という言葉を用いられることは非常に多いですが、
厳密にどのような意味を指すのかを定義されていることは少ないため、
解釈に苦労する場面が多いです。

少なくとも合有の共同財産の場合は「誰が●分の●保有している」というような概念は存在しません。
つまり、信託においては持分を登記することができないということになります。

不動産登記法第五十九条の四項に反しているのではないか?と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、その点に関しては、法務省民事局長によって以下の回答があります。

ーーーーーーーーーー
昭和38年5月17日付け法務省民事甲第1423号法務省民事局長回答
この信託財産の合有は、各受託者が持分を有する通常の共有とは違い不動産登記令3条9号の適用はないと解されているので、持分の記載は必要としない。
※参照:日本加除出版 信託登記の実務第三版 P176信託登記実務研究会著
ーーーーーーーーーー

以上のことから、信託不動産を登記する際は申請人(複数名となる受託者)のお名前のみを記載すれば問題ない、ということです。

今回の記事のベースとしているTRINITY LABO.セミナー
家族信託の登記実務 徹底解説セミナーでは、【信託登記】にテーマを絞り、基礎知識から実務知識までを徹底的にお届けしています。

▼会員サイトで視聴する

▼TRINITY LABO.とは?

▼家族信託とは?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?